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税理士の先生が知っておきたい雇用をめぐる最近の法律問題 #25 フリーランス法と下請法(1)

 今回からは税理士の先生方にもぜひ知っておいていただきたいフリーランス保護法・下請法について解説します。
 初回の今回は、フリーランス保護法・下請法が制定されている目的・背景について解説します。


1 フリーランス保護法とは?

 2024年11月から、フリーランス保護法(正式名称「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)が施行されました。会社を離れてフリーランスとして働く人も増えてきている中で、契約を切られてしまうことをおそれて、発注元の言いなりになって劣悪な条件で受注することを余儀なくされるなど、フリーランスは不安定な立場にあることが問題視されました。

 このような状況をふまえ、フリーランスの業務において、発注者による搾取等を防ぐために規制を設けたのがフリーランス保護法の目的となっています。

2 下請法とは?

 フリーランス保護法が、フリーランスの保護を目的として制定されたわけですが、同じように取引先との力関係が弱く、不利な立場にある事業者を保護する法律として、下請法(正式名称「下請代金支払遅延等防止法」)という法律も設けられています。

 下請法は、下請取引の公正化と下請事業者の利益保護を目的として制定されていますので、フリーランス法と目的としては共通する部分があります。ただ、下請法はもともと独占禁止法の特則として設けられたという特徴があります。

 どういうことかというと、もともと、弱い立場にある取引先に対して、強い立場にある事業者が不当な取引を強要するような行為は、独占禁止法で禁止されていました。ただ、独占禁止法での規制では、取引事業者が強い立場と弱い立場の関係性にあるのか、といった点や、取引の内容が不公正なのか、といった点を個別的に判断する必要があるため、迅速性に欠け、公正な取引の実現が困難という問題がありました。

 そこで、独占禁止法の特則として下請法を設け、一定の類型の取引を自動的に規制対象とすることで、取引の公正さを担保することが図られました。例えば、強い立場と弱い立場に当たるか、という点は、資本金を基準に明確に定められています。物品の製造を委託する場合、資本金が1000万円を超えた事業者が、資本金1000万円以下の事業者に委託をする場合には自動的に下請法の適用を受ける、といった形です。

 このように、下請法は、独占禁止法の特則として設けられた法律であるという点に特徴があります。

3 下請法とフリーランス保護法の関係は?

 2つの法律はどちらも取引の公正さを担保することを目的としている点では共通しますが、その成り立ちは異なります。そして、条件を満たした場合には、フリーランスが両方の法律の保護対象となることもあり得ます。

 次回からは、法規制の具体的内容を見ていきたいと思います。

【執筆者プロフィール】
弁護士 高井 重憲(たかい しげのり)
ホライズンパートナーズ法律事務所
平成16年 弁護士登録。
『税理士のための会社法務マニュアル』『裁判員制度と企業対応』『知らなかったでは済まされない!税理士事務所の集客・営業活動をめぐる法的トラブルQ&A』(すべて第一法規) 等、数々の執筆・講演を行い精力的に活躍中。

第一法規「税理士のためのメールマガジン」2025年1月号より

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