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税理士の先生が知っておきたい雇用をめぐる最近の法律問題 #24 個人情報保護法(6)
社会全体で「プライバシー」という意識が高まる中で、個人情報の取扱いに対する社会の関心は高まっています。
この連載では税理士の先生方にもぜひ知っておいていただきたい、個人情報保護法を取り上げていきます。
今回は、情報の削除を求められた場合の対応について解説します。
事例
顧客に対してダイレクトメールを送付したところ、送ってこないでもらいたい、名簿から削除してもらいたい、という連絡がありました。
削除しなければならないでしょうか?
解説
個人情報について削除を求められた場合、どのように対応する必要があるでしょうか。まずは、削除する法的な義務があるのか否か、という観点から見てみたいと思います。
1 削除義務が生じる場合
以下の場合には、原則として削除の要求に応じる法律的な義務があります。
1)利用目的に合致しなくなった場合
個人情報が本来の利用目的に照らして不要となった場合、削除の要求に応じる必要があります。
2)法令違反があった場合
個人情報を不適切に収集・利用している場合や、法令違反が認められる場合には、削除する義務が生じます。
3)本人の権利として正当な理由がある場合
個人情報が不正確である場合など、本人が「削除を求める権利」を行使し、かつそれが合理的である場合にも削除の要求に応じる必要があります。
2 削除義務が生じない場合に削除して
他方で、法令によって個人情報を保存することが法令で義務づけられているような場合には削除の要求があっても応じることはできません。
例えば、税法に基づく記録の保存義務などがある場合には勝手に削除することはできません。
また、利用目的の達成に必要である場合(現時点で、当該情報が利用目的の達成に必要であり、正当な理由がある場合)や、本人以外の利益を害する可能性がある場合(他の人の権利や利益を侵害する恐れがある場合)には、削除要求に応じる義務はありません。
3 削除要求への対応手順
実際に削除の求めがあった場合の対応としては次のような流れが想定されます。
・ 本人確認を行う
削除要求を提出した人物が本人であることを確認します(運転免許証やマイナンバーカードの提示など)。
・削除の必要性を判断する
利用目的や保存義務を確認し、削除要求が妥当であるかを検討します。
・回答期限内に対応する
削除要求に対する回答は概ね2週間以内に行うことが望ましいとされています。
・削除・拒否の理由を説明する
削除を行う場合も、拒否する場合も、その理由を丁寧に説明することがトラブル回避の観点からも重要です。
【執筆者プロフィール】
弁護士 高井 重憲(たかい しげのり)
ホライズンパートナーズ法律事務所
平成16年 弁護士登録。
『税理士のための会社法務マニュアル』『裁判員制度と企業対応』『知らなかったでは済まされない!税理士事務所の集客・営業活動をめぐる法的トラブルQ&A』(すべて第一法規) 等、数々の執筆・講演を行い精力的に活躍中。