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『ディアルガVSパルキアVSダークライ』

『ディアルガVSパルキアVSダークライ』の感想。

2007年ぶりに、この映画を劇場で観られて、ラッキーだった。
自分が脚本を書いた映画が、こうして劇場で上映されているのって、本当に幸せだなと感じます。

あらためてこの作品を観て思ったのは、よくこんな脚本を書いたなということです。
時間と空間をつかさどるポケモンたちの設定だけでも大変なのに、そこにダークライという設定が複雑なポケモンもくわえてさらに大変なことになってます。

われながらよくまとめたもんだと、ちょっと感心してしまいます。

自分で脚本を書いたとはいえ、時間が経っているので、一人の観客として客観的な視線で、この作品を観ることができました。

もう15年も前の作品だからこそ、もっとこうしておけば良かったというようなところはありますが、おもしろかったです。
お腹一杯になりました。
本当に盛りだくさんな一本でしたね。
伝説のポケモンが三体も出てきて、大暴れするんですもの、そりゃぁお腹一杯になりますわ。(笑)

この作品を観て、取材にいったスペインの風景が甦りました。
そして美術の素晴らしさに目が喜びました。
ポケモン映画は、スタッフワークが本当にすごいです。
今回の作品は、音楽も重要な要素でした。
素晴らしい楽曲にも、感動させられました。

ロケーションハンティングの旅行は、5作目の『水の都』からでしたので、この作品では五回目のロケハンを行っていたことになります。
このロケハンの効果は、映画のさまざまなところに出ていると思います。
実際の場所を歩いて、そこで感性をオープンにして、さまざまなものを吸収したことが作品に反映されるのです。

町のモデルになった場所は、ロンダというところです。
塔のモデルは、バロセロナのサクラダファミリア。
実際に行ったことで、その体験がシナリオに活かされています。
僕自身がサクラダファミリアの塔に自分の足で登って、ヒィヒィ言ったことが、サトシが塔を登る時に出てます。
天才ゴーディのモデルは、もちろんサクラダファミリアを設計した、天才ガウディです。

モデルと書いていますが、それらが僕の感性を刺激したということです。
外からの刺激により、そのリアクションでアイディアは生まれるのです。
だから体験するということは、本当に大事です。
映画も、一つの体験です。
映画を観て、みなさんの中から、あらたなものが生まれたりするのでしょうから。

手元に残っていたデータを見直したら、この作品を作るにあたって、自分がものすごく苦労していた痕跡が残っていました。

アイディア出しから、ストーリー作り、さらにプロット作り、その修正、そして実際の脚本作り、そしてまたその修正。
何段階にもわたって、頭を振り絞っていたことの証が記されていました。

その数、膨大。
世の中にこんなに書き直した脚本家はいるのかと思いたくなるような改訂の多さでした。
今回、ポケモン祭で、三本の映画を見直したのですが、この作品がもっとも改訂数が多かったのではないでしょうか。

苦労したんだなぁ、十五年前の自分。(笑)
そう労ってあげたくなりましたよ。

まぁ、そういう改訂作業に全部つきあってくれた監督やプロデューサーたちの尽力には頭が下がります。
逆の立場からすると、何回も直さずに、一発ですごいものを出してくれれば、それにこしたことはないわけです。
僕のいたらなさで、たくさんの方たちにご迷惑をおかけしたのかもしれませんね。

こういう苦労話というか、裏話はあまり表には出さないほうがいいのかもしれませんが、かつての『プロジェクトX』的なドキュメンタリーのネタにはなりそうですね。
ポケモンマニアの人たちには、楽しめるものかもしれません。

本当に残念なことですが、当時のスタッフの方たちですでに亡くなられた方などもいます。しかたのないことだとはいえ、一緒に仕事をしていた方が亡くなるのは、本当に辛いです。
自分もいつまでも生きていられるわけではないので、記録は残しておいたほうがいいでしょう。(なんか寂しくなりました)

自分はストーリーが出来上がっていく過程の記録しか残せませんが、映画全体がどうやって出来上がっていったかなどの記録や想い出などを、どなたかが記録してくださるといいなと思います。
いずれきっとそういう研究家の人などが出てきてくれるのではないでしょうか。

最初のアイディア出しの段階では、『ダーク(仮)』というポケモンを出すということだけが決まっていたようで、アイディアにはこのダークというポケモンをどうサトシに絡めるかというものになっていました。
すぐ次のアイディアで、『ダークライ』に変わっていたので、ダークライというポケモンの設定は、早めにもらっていたようです。
(アイディア出しの段階は、どんな伝説のポケモンを出すのかというところから、毎回始まっていました)

このあと、前述したように膨大な量の、ストーリーの改訂稿が存在します。

それをここで紹介していたら、時間がどれだけあっても足りません。
(ストーリー作りに興味がある人向けに、クローズドな場所で、一つ一つ検証していくのは面白いかもしませんが、これはかなりマニアックですね)

時空の狭間が出てくるというアイディアは初期からありました。
そこにいるポケモンが絡んでくるという流れも、しかし当初はあくまでもダークライをメインにすえた物語を作ろうとしていたようです。

結果的に出来上がった映画も、主役はダークライでしたので、最初のアイディアは最後まで生き残っていたということですね。

サトシの中にダークライが入ってしまい、そこでサトシとダークライが短い会話をするというようなシーンもありました。
これは実現していたら、面白いシーンになったかもしれませんね。
これは一つの例ですが、本当にいろんなアイディアを出しては、消し、出しては、消しというのを繰り返しています。

よく心が折れなかったなぁと思います。

脚本家や作家志望の方にアドバイスができるとすれば、『心が折れたら負け』です。
どんな困難な迷路に入っても、必ず出口は見つかります。
折れない心を持って進んでください。

なんて、過去の自分が、今の自分に言ってくれているような気さえします。

僕も過去の想い出ばかりにひたっているわけにはいきませんので、そろそろ今の仕事に戻ります。
また機会があったら、ポケモンの想い出も書きますね。

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