出張シーズンであった話1

春は、出張シーズンだ。

業界的には春と秋が多い感じ。夏はクッソ暑いし夏休みなんかもあって試飲会とかしても飲食店側が忙しいやらなんやらで集客がちょっと悪くなるし、冬は冬でクリスマス、年末年始やらで飲食店の繁忙期に重なることが多く試飲会に行ってる暇ないってことでこちらも集客悪くなる、的な感じで大きめの試飲会は時期的に春と秋にするのが業界の慣例となってる。わたしみたいな弱小インポーターとしては大きめの試飲会に出展して集客効果を高めてなんとか売り上げを作るってのがほぼ仕事の9割といっても過言ではない(過言)。
ってなわけで今年は東京、大阪、福岡の試飲会にエントリー。
わたし自身は神戸に住んでるので大阪は日帰りで行けるけれど東京、福岡はどうしても泊りの出張となる。その場の状況を楽しむタイプなので宿泊だとその街の酒場事情をみながら色々飲みに行くのが通例。
なのだけれど、今回は違う、色々なことが重なりバタバタとしてしまいそのままゴールデンウィークに突入、なかなかに忘れられない期間となったので書き起こしておこうと思った。

東京出張に行くまで

誰かが言っていた、
最初からクライマックスだぜッ!(CV:関 俊彦)
今回の出張シーズン最大のイベントと言っても過言ではない、いやマジで過言じゃあない。
もちろん日本最大の都市、東京での試飲会なので来場者数も多いしその分売り上げも見込めるかもしれない、事実結果としてはまあまあの売上に繋がった。
けどそんなことよりも今回は試飲会の後にもっと大きなアポイントが控えていた、それは
堀元先生と飲む」。

ワタクシ、弱小ではありますが一応ゆる言語学ラジオの乾杯スポンサーなどをさせていただいたことがございまして(ドヤ顔)。
そのあたりの経緯からことある毎に堀元先生とメールのやり取りをする機会がある(無理やりコンタクトをとっている)のだけれど、酒を飲みながらのメールだと、若干だけれどメタモン発動しないメールを送ることができる。んで、そんなときは思い切って飲みのお誘いをしてみる。以前もわたしのタイミングが悪くなかなか実現しなかったし、今回も動画見てるとゆる学徒カフェとかぐんぐんライブとかnoteの執筆とか超絶忙しそうな感じなのでまぁ難しいだろうなぁ、と思っていたら
良いですね!!行きましょう!!!よっぽど何か事故らなければ多分飲みにいけるはず!空けておきますね!!
ぼちぼち酒も入っていたので(?)嫁さん子供が寝ているにも関わらず「ふぉおぉおぉぉ!?!?!?」と変な声出しながら変な踊りのような動きをして感動したのを覚えている。多分傍から見たらめっちゃキモかったと思う、部屋に防犯カメラとかつけておけばよかった(よくない)。

てな感じで飲みの約束ができたものだから当日が待ち遠しくて仕方がない、しかし同時に一抹の不安も感じざるを得ない。
「あっ、コイツ面白くないやつだ」と思われるのではないか、という懸念が日に日に増していく。ふつうに、初めての人と飲みに行く、ただそれだけのことなのに相手が”堀元 見”であるだけでこんなにもプレッシャー感じるものなのだなぁと。仕事で県知事だとか市長だとか業界のえらいさんだとか有名なプロスポーツ選手とかにワインを案内することとか今まであったけどこんなプレッシャー感じることはなかった。むしろコイツを笑わせてやろうくらいで話できていたのに、今回に関してはもう会う前からなにを話していいのかわからなくなるくらい緊張している、しかし前述のとおり楽しみな気持ちは日程が迫るごとに増していく、こんな両極端の感情が交互に、そして同時にわたしのなかで膨らんでいく、そうかわたしの中にはジキルとハイドが住み着いているのだ(住んでない)。

約束はしたものの忙しい先生のこと、直前になにかトラブルがあって行けなくなるとかはあるかもしれない、年末には予定していた本が出版できなくなるとかもあったりしたのでその関連でなにかあるとかも考えられる、一応連絡してみると大丈夫とのこと!よかった!店も先生のよく行く店を予約していてくれるとのこと。その時のやりとりがこちら。

改めて見ると「堀元っぽく入る」ってなんだよ

よく水野さんが意味論とか語用論とかをちょいちょい口にしているけれど、そろそろわたしもそのへんを勉強したほうが良いのかもしれない、この時わたしは「あ、ネタを振ってくれている!これはなにかしなければいけないッ!」と余計なプレッシャーを入手していた。

なにができるかしら、ちょうど映画のコナンがもうすぐ公開という話を耳にしていたこともあり、(堀元先生なら黒の組織の名前に「MECEじゃない!」ってキレてそうだよなぁ…、このへん弄れるかなぁ?)と考えていた

イメージかなり近い、ネタで投稿したのに即座に作成してくれたChar半4bitさんに感謝。

その時、1本の電話。社長からだ。あぁ、明日は試飲会ガンバレ的な電話かな?と思い電話にでると、
手配ミスの電話だった。

東京での試飲会の2日後に大阪での試飲会がある、展示するワインは在庫数や季節的に案内したいものとかそういったことを考えて決めていてそこに細かい話だけど会場の規模とか処理上の手間とかそのあたりも鑑みて東京と大阪の展示内容を一緒にしていた、それをどう見間違えたのか同じ内容のメールを2回送信してきたと勘違いしたらしく大阪にしか荷物を送っていない、とのこと。要するに、明日東京の試飲会に行ってもワインがない、ということだ。
ちょっと待て東京、おれになんか恨みある?前回に東京行ったときもワインが指定時間に届かなかったよ?(参照:大忘年会の話 https://note.com/daigororz/n/nf5fbebd86f80)
ってかおれのミスじゃあないしなんとかしてよ!という内容をできるだけオブラートに包んで交渉したところ、「大井ふ頭の倉庫まで直接取りに行ってください」ということになった。

そもそも東京の土地勘が全くないので大井ふ頭がどこなのかが分からない、すぐさまググって場所確認、結構遠いやん…、半ばキレ気味に品川以降すべてタクシー使いますからね!と了承をとり時間調整。そもそも神戸からあさイチの新幹線で行き11時くらいに着けばいいやとか思っていたので元々の予定より1時間半くらいは早く出ないと間に合わなさそう、んで元々朝7時に家を出る予定だったので逆算すると朝の5時過ぎに家出ないといけない。自分の準備と合わせてこどもの保育所の準備とかもしなくちゃいけなくってじゃあ何時に起きればいいんだ?ってやってる時はすでに23時過ぎ。アワアワしているうちにネタを考える余裕はなくなっていた。

東京出張当日

結局1時間半ほどの睡眠で家を出て新大阪7時過ぎの新幹線に飛び乗る。朝も早い新幹線は座席に座っている人もまばらだ、いつもこれくらい空いていれば良いのになぁと思いながら座席に向かう、後ろの座席に誰もいないことを確認してシートをガバッと倒す。結局あんまり寝れなかったし新幹線で少しでも睡眠時間稼いでおこう、とすぐに寝る準備に入る。少しウトウトとしかけたその時、そういえば昨晩、明日のゆる言語学ラジオの更新時間は変則で朝10時公開とか言っていたな、と思い出す。朝の更新だと夜に堀元先生と飲みに行く直前に更新スワイプする必要ないなぁ。あッ!今日飲みに行くんだった!ネタ考えずに出てきちゃった!なにかできること考えなきゃ!と新幹線で考えた結果が、「堀元っぽく入る」をこなすにはお面でも作ればできるのではないかということで堀元面を作成することにした。時系列はズレるけど作成したのはこちら。↓

作成時間:コンビニで印刷1分、裏を止めるホッチキスを借りるためにホテルのフロントで待たされる15分、適当なサイズ感にしてホッチキス止め1分で完成。そういえば最近気付いたのだけれど、できる限り手作りのかなりチープ感が出るクオリティの小物をわざと作るのが自分の手癖のようだ。錯乱坊先生ゴメンね(テヘペロ)

品川に到着し電車に乗り換え数駅、降りてタクシーに乗り込む、運転手さんに場所を説明し即座にスワイプ連打。あぁ、ギリギリ間に合った、無事コメントし終わりホッとしていると運転手さんに「大丈夫でしたか?」と声をかけられた。かなり訝しげな表情でルームミラー越しにこちらを見ている、仕事のトラブルかなにかと思っているのだろう。まさか運転手もこんな険しい表情して携帯触ってる客が「楽しみに待ってました」ってコメントしてるとは思うまい。大丈夫です、と軽く返事をして再びスマホに目を落とす。駅から10分ほどタクシーを走らせ倉庫に到着、20本ほどのワインを受け取りそのまま同じタクシーで銀座に向かう。運転手さんは(仕事のトラブルかなにかかな?)なニュアンスに思ってくれているみたいだ、余計な声はかけず急いでくれている。わたしはと言えば、先ほど険しい表情をしていたものだから意味の無い整合性をとって険しい表情を作る。ちょうどahamoの広告案件の回だった、ひとりで笑ってはいけないゆる言語学ラジオを楽しむ、ちょっと道路が混んでいたのもあり会場に着くと同時に視聴し終わった。

試飲会での仕事はおもしろい話はないので割愛、強いて言うなら夜のイベントが気になりすぎてずっとうわの空だったけどいつもよりよく売れた、わたしは『力むとダメなタイプの典型』なのだ。余計なこと(しか)考えなかったことが功を奏した、来場者が多かったのでかなり喋りすぎて声が枯れてしまったけど。

いざ本番

試飲会も終わり、そそくさと片づける。本来なら反省会と銘打った打ち上げに参加するところなのだがこちとらそれ以上に重要なアポがある。
まわりからの「参加しないのお前⁉」的な声も軽めに受け流し急いで池袋に向かう。東京の地下鉄迷路に苦しみながらもなんとか池袋に到着。ホテルにチェックインし前述のマスクを作成。ソワソワしながら約束の時間を待つ。
ちょっと、いやかなり緊張してきた。しかし楽しみな気持ちも強く湧き上がっている。不安と緊張が入り乱れて変なテンションになってくる。この時19時、約束は20時だからあと1時間。タクシーで行く予定だったけどゆっくり歩いて行って少し気持ちを落ち着かせよう。ホテルからは歩いて20分ほどのようだ、ちょうど良さそうな距離。のんびり歩きながらなんの話をしようか考えr…おっと、小さな段差につまづいて危うくこけるところだった。危ない、こんなところで怪我なんぞしたら目も当てられない。またゆっくり歩いt…痛っ、ガードレールが見えてなかった。なんだ、この違和感…
もしや、これは初めから自身が負ける場所にすら到達することができないということなのか…?

まさかオレは合気の極意を手に入れたのか…?

なにか、なにか無いのか、勝つため(勝たなくていい)に必要な方法(パーツ)は無いものなのか…!
そう思ったとき、まさに天啓が降りたといっても過言ではないアイデアが舞い降りてきた。ヒントは今日、そして相手の中にあったのだよッ!
今日、タクシーの中で聞いていたのはゆる言語学ラジオ♯220、その中に答えはあった、 
7:10に堀元先生が自分で言っている、「手がもう一本生えるとしたらどこがいい?って聞きたいんですよ」と!これだ!

堀元先生が予約してくれた店に着き、席に通される。
期待と、不安が、再び交互に高まりあう、
10分ほどだろうか。外にそれらしき人影が見える、わたしはもう準備はできている。

準備万端

ここでひとつ、致命的なミスが発覚する、
「これ、前が見えない
ホテルでサイズ感確かめるためにちゃんと着けて確認したんだけど、

地道な確認

写真見て「うん!イケる(イケてない)!」くらいだったもので前が見えていたほうが良いとかそんなことも考えてなかった。

足音が近づき
堀「あー、堀元っぽくってそんな感じだったんすね!ははっ!」と声が聞こえ、面を外す。目の前に、堀元先生。一気に、いかなければッ!
私「手がもう一本なら、ぼくは腰あたりがいいですかね!」
堀「えっ?えっ?どういうこと?」
瞬間的に、わたしは気付き、青ざめる。
たくさんの回を撮りためていることでおなじみのチャンネル、それがゆる言語学ラジオ。今日放送された回がそんな直近に収録した話なわけがない。ホテルに戻った後調べると2/25収録の回だ、1月半前の雑談で話した内容のディティールを覚えているはずがない、それなのにあろうことか直近UPされた回というだけでわざわざそれを引用してしまった、完全にミスった。
なんとか取り返さなければ、と思うが忘れてはいけないわたしは上述のとおり、

なのだ。用意してきた、話したい内容は飛び飛びになり、聞きたいことの1/10も聞けなかった。爪痕を残そうと頑張ったつもりが爪の間に詰まったウンコだけ擦り付けたような、最悪の出来となってしまった。2時間ほど食事して話をしたけれど、近年稀にみるほどのひどい出来だったように思う。
正直、ところどころしか記憶がない、その記憶も(あ、この話は刺さらなかったか…)と思ったところばかりだ。ということは、逆に考えるとほぼ全て覚えているということか。とにかく、ダメな中年男性の姿しか残せなかった、そんな感じで終わってしまった。

食事が終わりホテルに戻ると、ドッと疲れが圧し掛かってきた。
…にしては疲れすぎのように思う、気になって体温を測ってみると
「39.5℃」この数字を見て、すぐに眠りについた。
翌日帰ってから検査をしたが、インフルエンザでもなければコロナでもなかった。知恵熱とはこういうことなのか、はたまた気負いすぎたということなのか。

いずれにせよどこかで堀元先生にはちゃんと楽しんでいただけるような接待をリベンジしたい。

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