2022/07/12【安倍元総理追悼】安倍氏が残した功績と今後の日本の政治に与える影響【世界情勢】#80
安倍晋三元総理大臣が、7月8日に凶弾に倒れ亡くなられました。私は、6月も2度、安倍元首相のお話を直接聞く機会がありましたが、このような事件で亡くなるとは本当に残念極まりなく、心より哀悼の意を表したいと思います。今回は特別編として、安倍元首相の功績と、今後、安倍元首相の突然の逝去が与える政治や外交への影響について、お話をしたいと思います。
事件について
事件について感じたことは、犯人は思想犯では無い様ですので、民主主義に対する挑戦ということよりも、この狂気的な犯罪を許した警備体制の脆弱さですね、これは特定の誰かがどうと言うことではなく、日本社会全体に出てきている甘さ、緩みみたいなものがああいう場面で出たのでは、という懸念と、このような犯罪を起こす人間が生まれる今の日本社会の歪み、闇を、非常に大きく感じる事件でした。
安倍元首相の印象
さて本題ですが、安倍さんの首相というお立場の際の最も強い印象は、兎に角圧倒的に選挙に強かった、という点です。自民党の中でも安倍派と言われる清和政策研究会、私も集まりには顔を出させて頂いていますが、従来最も保守的な右派であって、この保守本流の安倍さんが、野党やリベラルな左派政党が取るべきポピュリズム的な政策を次々と実行することによって、野党に何もさせなくして力を奪うという手法がこれだけの自民党一強体制を作る大きな要因だったと思います。その意味では、安倍さんが居なくなることで、盤石だった自民党の一強体制に中長期的には風穴が空く可能性がありますので、一強体制の良さとその弊害を見極めつつ、今後の野党の台頭があるとしたらどの政党なのかをよく見ていく必要があります。
その自民党の足元ですが、今後、自民党に安倍さんが居なくなることで党内も大きく勢力図が変わり、今までの流れでは有り得なかった方や派閥が勢力を持つ可能性が大きく出て来ました。まず最大派閥の安倍派の会長が誰になるのかが大きな焦点ですが、皆さんご存じのところでは西村さん、萩生田さん、世耕さん、弟の岸防衛相、松野官房長官、下村博文さん、稲田さん辺りが候補となると思われますが、決定的な方が誰も居らず全く後任が読めない状況の中で、参院選後の内閣人事、自民党人事がどうなっていくのか、安倍さんの政敵としてチャンスに恵まれなかった方や、お若い3期、4期で優秀な方も自民党にはたくさんいらっしゃいますので、その辺りが注目されます。
次に政策面ですが、沢山の功績が有る中で一つだけ挙げるとしたならば最大の特徴であったアベノミクス、実態は、異次元緩和と言われた金融緩和政策ですが、これによって株価が上がり、円安を誘導し、経済を見事に復活させたこと、この功績は歴代首相の中でも極めて大きなものだと思います。ただ、この効果はせいぜい2016年くらいまでで、この後、成長戦略と言いつつ効果的な手が打てない、そんな中権力だけで政権を維持した空白期間が長すぎました。大企業だけが利益を出して格差が広がり続けたPhaseからその次に中々行けなかったことは、コロナという要因を勘案しても今後尾を引くマイナスであろうと思います。まずは来年3月の黒田日銀総裁の任期が終了します、ここで既定路線とは異なる後任が選ばれる可能性が出てきましたので、本当の意味でのアベノミクスからの卒業に期待したいと思います。
安倍元首相の外交における功績
一方で外交については、安倍さんの功績は極めて大きかったと思います。確かに、ロシア、韓国、北朝鮮といった国々との外交は失敗、という専門家がいらっしゃいますが、これは誰がやっても難しかったと思います。それよりも、最大の同盟国であるアメリカはもちろん、イギリスやフランス、ドイツなどの西側諸国、そしてインドや豪州、これクアッドのメンバーですが安倍さんはクワッドの考案者ということで、こういった同盟国やそれに準ずる国々の首脳との信頼関係づくりは、あの安倍さんのお人柄、人間力でなければ構築できなかったものだと思います。
そして何といっても安全保障です、これも話すときりがありませんが直近の話題だけ申し上げると、私が最後に安倍さんのお話を直接聞いたのは6月11日でしたが、その際も、GDP2%の防衛費は日本の責任目標だ、この責任目標という言葉を何度も使われて、自分で祖国を守ろうとしない国をアメリカも助けようとはしてくれない、日本も努力をしなければならない、そうすることによって、アメリカにもっと東アジアにコミットしてもらうことで中国を抑止していかねばならない、ということを強く仰っておられました。
今、アメリカが大きく変わりつつある大変化の時代、いよいよ台湾有事もあるかというこのタイミングに、安倍元首相の人間力、ご知見、ご経験はまだまだ無くてはならなかったと思うと残念でなりません。ご冥福をお祈りすると共に、安倍さんに変わる、今後の日本外交を支える政治家が出て来て下さることを期待したいと思います。
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