見出し画像

<2022/06/21>【トルコ】ウクライナ危機で注目、トルコのエルドアン大統領【世界情勢】#77

今回は、ウクライナ危機が始まってから何かと話題のトルコについて、日本では注目度が低いですがアメリカや西側諸国にとっては非常に重要な国ですので、ご紹介をしたいと思います。

話題が絶えないトルコという国

トルコという国は話題がありすぎて何から話すか非常に難しい国ですが、NATO内ではアメリカに次ぐ第2位の軍事力を保有する「軍事大国」ですが、その一方で経済的にはボロボロで、凄まじいインフレと通貨(トルコリラ)下落が止まらない国でもあります。

エルドアン大統領

この国の国際的な影響力は今単にトップのエルドアン大統領が握っています。彼は、2014年に大統領になって以降、権威主義的な手法で、国民には嫌われながらも圧倒的な支持層を掴む政治家として君臨してきましたが、現在は、トルコ国内の経済悪化は彼の政策のせいだとの非難が止められずに四苦八苦しています。トルコのインフレ率は5月のCPIが73.5%の上昇という、G20の中で1位、世界でも6位という驚異的なインフレ率となっていますが、この原因は、利上げの敵と自らを呼んで、経済の冷え込みを嫌って低金利政策を持続しているエルドアン大統領自らが招いているもので、いよいよ保守層の支持率まで低下し、来年6月に大統領選挙が予定されていますが、そこで敗北を予想する声が大きくなってきている状況でした。
そんな中でウクライナ危機が始まった途端に、エルドアン大統領は、そのしたたかな外交手腕で、急激にその存在感を増してきています。

エルドアン大統領がウクライナ危機で行ったコト

彼がウクライナ危機で行ってきたことを整理すると、まず、バイラクタルTB2と呼ばれる軍事ドローンをウクライナに供給し、これがロシア軍への攻撃に於いて大きな役割を果たしたということで、ウクライナつまり西側に大きなメリットをもたらしたと共に、トルコの防衛技術の高さを見せつけました。今は他国からもかなり引き合いが増えているとのことで、因みにバイラクタル社の社長はエルドアン大統領の娘婿で、一族でがっちりと軍需産業に食い込んでいます。
2つめですが、ロシア軍の軍艦が黒海に入るのを国際条約に基づいて阻止し、食料を輸送するウクライナ船舶を黒海内でトルコ海軍によって保護しようとロシア側と交渉したこと、そして3つ目は、ロシアのプーチン大統領と対話できる数少ない指導者と言うことで、仲介役を買って出て、ロシアとウクライナの和平協議を2度主催しました。
こういった動きはアメリカも評価して、バイデン大統領から電話を掛けるなど西側諸国からの評価の向上につながった一方で、エルドアン大統領は、ロシアのプーチン大統領にもきっちりと恩を売っています。
まず、NATO加盟国ながら、ロシアへの経済制裁には反対し、一切制裁を課していませんので、トルコが今、金持ちロシア人と、ロシアマネーが流れ込む逃避先となっていることは、プーチン大統領にとって大きな支援となっています。
そして、5月に大きく報道されたのは、北欧2か国、スウェーデンとフィンランドの、NATO加盟に反対していることです。事前には、NATO全加盟国が賛成すると言われていたんですが、エルドアン大統領のトルコのみが、両国がクルド人武装組織のPKKを支援しているということを理由に反対しています。これは本当に支援しているかどうかではなく、反対することによって、一つはプーチン氏に大きな恩を売ること、そして二つ目には、エルドアン大統領の目下最大の外交政策は、イラク北部のクルド人武装組織PKKへの軍事攻撃ですが、これと今回の話を絡めて、西側にこの軍事攻撃に強硬に反対させない、という狙いもあります。
そして何といっても、「トルコを守る強い大統領」としての国民へのアピール、支持率アップも同時に狙っていると思います。アメリカとロシアの両方に恩を売り、一石2鳥どころか3鳥4鳥も狙うエルドアン大統領のしたたかさに対し、今後アメリカバイデン大統領がどう対応していくか、注目していきたいと思います。

今回の内容を動画で見たい方はこちら↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?