見出し画像

2022/07/26 【欧州】欧州2つの大国の首相が辞任、政治経済の混乱と危機【世界情勢】#82

今回は、現在の欧州、ヨーロッパ全体の政治経済の混乱と、それが招く危機の可能性について、お話をしたいと思います。

欧州の問題点

まず欧州全体についてですが、現在の欧州の最大の問題は、アメリカと同様、インフレです。ユーロ圏では、CPI,消費者物価指数が、昨年同月比で5月は8.1%、6月は8.6%と上昇する一方で、為替もついに対ドル相場で1ユーロ=1ドルを割り込むほど(いわゆるパリティー割れ)ユーロ安が進んでいます。この水準は、昨年同月から比べれば2割近く下落していることになりますので、日本と同様のいわゆる「輸入インフレ」が更に加速する懸念が強まって、21日に、ついに欧州中央銀行(ECB)が、0.5ポイントという大幅な利上げに踏み切りました。このECBの利上げは11年振りで、これにより、2014年から8年間続いたマイナス金利政策も終了することになります。

ECBが利上げしてこなかった理由

アメリカのFRBとは対照的に、ECBはずっと利上げをせずに来ましたが、ECBが利上げをしてこなかった理由は、勿論景気減速への懸念はありますが、もう一つはユーロ圏特有の問題である、イタリアやスペイン、ギリシャなどの南欧諸国が抱える財政破綻リスクの問題です。彼らは莫大な債務を抱えていますので、利上げで借入コストが上昇すれば大きな打撃を受けますし、金利が上がれば国債価格が下がって利回りが上がる、つまり国債の利払い費用が増大するため南欧諸国の政府財政はますます悪化しますので、アメリカの様に簡単に利上げがしづらいベースにある中での今回の利上げ決定ということで、そこまで今の欧州のインフレが深刻だと言うことになります。

ユーロ圏の財政バランスとプーチン

そんな中で、イタリアの財政改革、財政健全化に大きく期待されていたマリオ・ドラギ首相が辞任しました。9月下旬に総選挙が実施される予定ですが、新政権がどの様な政権になるか予想し辛い中で、健全な財政を目指すのか、放漫財政的な政権となるのか、その時にECBがどの様な手法でイタリアを含むユーロ圏の財政バランスを取っていくのかが、このエネルギー高騰、物価高騰という大きな問題を抱える欧州の安定に於いて重要な課題となってくると思います。
そしてこの動き(西側の混乱)を最も歓迎しているのは、ロシアのプーチン大統領です。そもそも経済的に関係の深いイタリアで、ドラギ前首相はウクライナ支援を明確にし、アメリカ中心の対ロ制裁に積極的に協力してきましたが、今国民の支持率が一番高い政党は野党の「イタリアの同胞」というファシスト党の流れをくむ極右政党で、党首のメローニ氏が政権を取る可能性があり、そして連立を組むであろう他の政党党首、例えば「フォルツァ・イタリア」を率いるベルルスコーニ氏、そして「同盟」のサルビーニ氏は、ロシアと強い関係を持っていますので、民主主義陣営の対ロ制裁に影響が出る可能性が高いと見る向きが強くなっています。

欧州の混乱が進む

今月の始めには、イギリスのジョンソン首相も辞職に追い込まれ、西側、NATOの中心国であり、G7のメンバーという大国のうち2か国でトップが今月辞職することとなりました。実はフランスでも6月の総選挙で、マクロン大統領の与党連合が大敗北を喫して政権運営が不安視されていますが、この背景は全て、ウクライナ紛争に起因する、エネルギー高騰、物価高騰による国民の不満が絡んでいますので、欧州の混乱、分断を狙うプーチン大統領の狙いがある程度奏功していると言わざる負えない状況が生まれています。

次回はイギリスの保守党の決選投票を直前に迎えるタイミングですので、イギリスの次期首相が誰か、新政権が世界に与える影響が何か、その辺りのお話をしたいと思います。

今回の内容を動画で見たい方はこちら↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?