2021/11/23【自動車産業】アメリカ、驚異のEVメーカーと日本の課題【世界情勢】#35
今回は、11月に入ってアメリカで大きな話題となっている、大注目の電気自動車メーカーの話題と、そこから見る日本の自動車産業の課題について、お話をしたいと思います。
米国大注目企業「リビアン・オートモーティブ」
この大注目企業は、リビアン・オートモーティブ、という会社で、11月の10日に、IPO(新規株式公開)を実施したのですが、時価総額は、公開初日でフォードを抜いてGMに並び、そして、先週の一番株価が高い日の11月15日でなんと1500億ドルを突破しました。これは、飽くまでも一時的ではありますが、ドイツのフォルクスワーゲンを抜き、世界第3位の自動車メーカーに相当します。因みに、今1位がテスラ、で、時価総額が約1兆ドル、2位がトヨタで、約2500億ドルです。
驚くべきことは、リビアンは、9月に漸く納車をスタートさせたばかりで、まだ殆ど販売していないのにも関わらず世界第3位の時価総額となったことで、如何に投資家の期待が高いかが伺えます。この理由は様々ですが、最も他社が遅れておりかつ収益性が最も高いと言われるピックアップトラックやSUVに特化していることや、アマゾン・ドット・コムが2019年に20%出資し、配送用の電気自動車を既に10万台発注していることなどが追い風と思われます。
日本の自動車産業と独自優位性
いずれにせよ、アメリカは勿論、世界中がEVに急速に舵を切る中で、最も気になるのが日本の自動車産業です。
世界でビジネスをすると良く分かりますが、アジアを除く新興国で、日本企業が進出している8-9割が自動車関連企業です。自動車は非常にすそ野が広く、一つのメーカーに数百社という下請け会社がぶら下がっていると言っても過言ではありません。この企業群が、それぞれ、徹底的に、0.1%の不良品率の向上に拘ってサプライチェーンピラミッドを作り上げる自動車産業こそが、日本企業の最大の強みを最も引き出す、日本人が最も強みを生かせる事業だったわけです。パソコンや携帯電話というハイテク産業で負けに負けを重ねてきた日本企業ですが、技術はどんなに優れていても、技術者の引き抜きなどで、簡単に金で買われてしまいます。それよりも、コツコツと真面目に、組織の規律を厳格に守る、という日本人の気質が、最大の差別化価値だったわけです。
日本の課題
この自動車産業が、大きく産業構造を変革させようとしています。今電気自動車に一気に代わると、日本人は2つの大切なものを無くします。それは、先程申し上げた、最大の差別化価値(強味)、と、そして、大量の雇用、です。このEV化という観点で、今、日本の自動車産業は遅れている、ガラパゴス、などと言われだしていますが、恐らくトヨタを始め、各社、少しでもガソリン車が長く、最悪でもハイブリッド車は残す方向性を作り出さないと、この最大の強みと多大な雇用の両方を失う、ということも考えてのことだと思います。
しかしながら、リビアンの例などを見る限り、日本企業の思う方向になる可能性は現状低いと言わざるを得ません。今から乱立してくるアメリカや中国のEVメーカーとの競争をどの様に世界で行っていくか、自動車だけでは無い、日本のビジネス界の大きな課題と思います。
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