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「それ」 /2020年6月28日 いつからか、それを信じることをやめてしまった。 子供のころには、それがはっきりと目に浮かんでいた。 グラウンドの野球ボールにも、真っ白の画用紙にもそれがあった。 それは、布団の中にはいっても、胸を高鳴らせた。 微かなそれの残骸は、かえってわたしを苦しめた。 疲れ果てたわたしには、それを直視できなかった。 それを語るひとを、私は冷たい凍えた眼で見るようになった。 でも、むかし描いた、それを思い出したときは、懐かしい音がした。