62:ヴェネツィアで出会った大阪人とまずいパン
私はルキノ ヴィスコンティが好きでヴェネツィアと言えば『ベニスに死す』なんだけど、そういえばあのビーチはどこにあるんだろう。
ヴェネツィアでは同世代の日本人によく会った。人気の観光地だからかな。北のほうのヨーロッパでは誰にも会わなかったのに。
日本で住んでいる場所も違うし、旅のルートが違うこともあって、話がはずむ。雑貨や小物を目当てに旅をしている子、サッカー観戦を楽しみに来た子。美しかった街や怖い体験談。誰かが確かモロッコで、星空を眺めながら眠ったという思い出話にうっとりした記憶がある。行ってみたい。
おいしい夜ご飯を食べた後、大阪から来た女の子二人組も一緒にジャングルクルーズに行った。川面がキラキラしていた。寒いけどきれい。
と日記にある。ジャングルクルーズとはなんだろう?ゴンドラのことかなと思ったんだけど夜はやってないだろうし、ゴンドラは翌日に乗ったと書いてある。ヴァポレットという地元民の交通手段の小舟に乗って、どこかに行ったのかな?
そうそう、海外で会う子は不思議と関西の子が多かった。東京の子より好奇心が旺盛でオープンマインドなのかな。雰囲気的に声もかけやすくて、出会ってすぐに一緒にご飯を食べに行った。
なぜかパンがまずかった。白くて見た目がペットリしていて美しくない。給食で出た適当なパンの味がさらにないタイプ。パスタのトマトソースがおいしいからつけて食べれば忘れられるのかなとか思ってた。だって不思議。同じ小麦製品のパスタやピザはおいしいのにパンだけまずい。パンにプライドがないのであろうことは、歳を取った今わかった。
絵に1000Lのカプチーノとある。たぶんそこらの自販機のだろうけど、ヨーロッパではこういうことがたびたびあった。日本でもどこでもおいしい緑茶を飲めるのと同じ。
ヴェネツィアの街は本当に魅力的だった。小さくて狭くて古い。街はカーニバルで、本当に仮面がたくさん売られてた。お店はもちろん街中にはワゴンが出る。仮面の質感なんかも日本のおもちゃのお面ではなく、ヨーロッパの高い人形みたいな。なんて言ったらいいのかな。ああ、そうだ。昔のビジュアルロックの世界観に似ていたな。