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フランス南西部の街(9)Argeles-sur-Mer(アルジュレス・シュル・メール)

アルジュレス・シュル・メールはペルピニャンからスペイン方面に20kmくらい南下したところにある海岸沿いの街です。街の名前も直訳すると「海の上のアルジュレス」ですね。
ここはもう数十分も車を走らせればスペイン、という、国境にほど近い場所です。

アルジュレスの海岸は長い砂浜が続くきれいなビーチになっています。
ここをあえてひとことでいうとすると、いってみれば「フランス最後の海岸」とでもいったところでしょうか。

どういうことかというと、フランスとスペインの国境ってピレネー山脈で区切られていますが、海岸線も国境付近は山がちで、割と断崖が多いんです。
グーグルアースで見てみますとこんな感じになっております。

ということで、ここを最後に、スペインまでもう砂浜はほとんどなくなります。
まあ、正確にはコリウールやバニュルスなどちょっとしたビーチのある小さな街が点在するんですが、いわゆる「白砂の長い海岸」みたいなのはフランス国内ではこれが最後です。

そういうわけだからというわけではないんでしょうが、ここアルジュレスは夏休み時期はそれはもう、あり得ないほどの人であふれかえります。
ヨーロッパ中から地中海の太陽求めて人々がやってくるわけです。
ビーチはもちろん、周辺には所狭しと露天が並び、移動式遊園地も多数出現し、そこら中でコンサートやらフラメンコやらのステージが行われ、それはもう大変な賑わいです。

夜の移動式遊園地です(この写真、キャプダグドに載せてしまいましたが、よく見たらアルジュレスでした)。

ニセドナルドが
あひるつりあそびです

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雰囲気はどちらかというと、そんなに高級すぎず、割と大衆感にあふれてリラックスした感じです。
かといってさして治安が悪い風でもなく、いわゆる普通の中産階級のヨーロッパ人の方々が多く訪れているような印象です。ファミリー的な感じのひとびとや若い人々の姿が多数目につきますね。
食べ物やおみやげもそんなに高くないです。

この辺の雰囲気は前に紹介したCap d'Agde(キャプダグト)とちょっと似ているかもしれません。
でも、キャプダグドの方がリゾートとしては大規模かな?
確かに、むこうは遊園地とかもいっぱいありますしね。

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海岸に向かう大通りには飲食店が軒を連ねています。
ここの中華料理屋さんがおいしいんですよね・・・。
フランスの中華料理屋さんって、たいがいベトナム料理とかもごっちゃになっていて、「ネム」という春巻き風の料理がとってもおいしいんです。書いてるだけで食べたくなってきちゃいました。

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さて、紛らわしいんですが、実は「アルジュレス・シュル・メール」という名前の街の本体は海岸から数キロ離れたところに位置しておりまして、今まで話していた海岸沿いの地域は、「アルジュレス・プラージュ(アルジュレス海岸)」という別の呼び方をしております。
このあたりもAgde(アグド)と似てますね。フランスの海岸沿いはこういう構成の街が多いです。

こちらの街の本体の方のアルジュレス・シュル・メールも私はよく訪れました。
隣町のSaint-Andre(サンタンドレ)に母親が住んでいたので、よく買い出しなどにやってきました。
アルジュレスは大きなマルシェをやるんですよね。街の中心部に教会がありまして、そこのまわりでやっています。

教会です
街のようす

なにしろサンタンドレは小さいので、ちょっと何かあると隣町のアルジュレス・シュル・メールに行き、もっと大きな街に行くときはペルピニャンに行く、という感じでした。

また、アルジュレス・シュル・メールはSNCFの駅もありますので、サンタンドレに行くにはここが最寄りの駅となります。

アルジュレス駅の写真です

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駅といえば、フランスで鉄道に乗るときは、前もって切符を買っておかないとかなり大変なことになります。
日本ですと、鉄道の切符は、新幹線や特急に乗るのでもない限り、大概は田舎であっても乗るそのときに駅で切符を買ってそのままホームに行きますが、フランスでそれはかなり危機一髪です。

わたくしが前にサンタンドレの母の家に行き、これから電車に乗って帰るというとき、このアルジュレス・シュル・メールの駅で当日に切符を買っていこうとしたことがありました。
何があるかわからないので、電車出発の数時間前に駅に向かったと記憶しております。

そしたらですね、老夫婦が切符を売る窓口で駅員となにやら話をしながら切符を買っていたんです。
どうやら、どうやったら早く行けるかとか、安いとか、そんな相談をしている風でした。

それ自体は別になんてことない話なんですが、えーと、困ったことに、この相談が異常に長い。
とにかく長くて、30分やそこらの話じゃないんです。
当然ですが、長蛇の列です。
自動券売機などはありませんし、窓口もほかにはなく、この一つだけです。

窓口のおじさんも特に焦っている風でもなく、とりあえず後の人をがんがんさばくという考えは毛頭なさそうですし、誰か別の駅員を呼んできて別の窓口を開ける様子も全くありません。

かといって、当の老夫婦もゆっくりしたもので、全くもって後ろの人たちを気にかける様子はなく、かなりマイペースに(しかもけっこう談笑しながらどうでもいいことを聞いていると思われる)話し込んでいます。

ではこれがフランスの国民性で、みんなしかたないと諦めているのかというとこれまた全くそんなことはなく、ものすごい勢いで並びながら怒っています。
スペイン系のものすごい派手なお姉さんは、ものすごいジェスチャーで何かわめきながら途中でどこかに行ってしまいました。

で、小一時間の後、やっとその老夫婦は笑顔でチケットが買えて、めでたく次の人に。
ああよかった。もうとにかくよかったよかった。
これでやっとチケットが買える。もう時間がない。ここは暗黙の了解で急ぐんだみんな。

・・という思いも空しく、まるでさっきまでのことは全くなかったかのように、やっぱり何人かにひとりは必ず複雑(かどうかは不明)な案件を持ちかけはじめてしまいます。そしてすぐにまた同様に列が停滞し、みんな石のような時間をすごすことになります。
地獄です。

このときは列車に乗れたんだか何だったんだかさっぱり忘れましたが、とにかく、「当日に切符買う」だけは御法度だと肝に銘じました。

その後は必ず前の日以前に切符を買うようにしています。
でも、駅に買いに行くとやっぱり大概おじいさんとおばあさんが話し込んでいて、最低数十分並んで待つことになります。

(一度だけ、「急ぐならかわっていいよ」と言われたことがあります。悪気は本当にないようです)

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※この文章は2009年に書かれたものをリライトしたもので、現在では状況が違っている場合があります。ご了承ください。でも多分たいして変わっていないと思います。

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