高校魅力化プロジェクトの事例と高校生がつくった『島の仕事図鑑』の紹介
この記事は、以下の記事の続きになります。
お時間があれば前回の記事をご覧になってから、今回の記事を見ていただければ幸いです😊
高校魅力化プロジェクトに始まり、今や都心にいる高校生が地方に学びに行く現象が起きています。
そして、離島や中山間地に位置する高校を中心に『地域みらい留学』という新たな制度が始まり、高校生にとって選択肢がどんどん拡がっています。
留学先の高校は、全国に70校もあります(2021年6月7日現在)。
高校魅力化プロジェクトの取組み内容は、主に以下の3つを柱に行われています。
①その地域・学校でなければ学べない独自カリキュラム
②学力・進学保証をする公営塾の設置
③教育寮を通じた全人教育
(※その他、コーディネーターも含まれる)
今回は、私が気になった高校魅力化プロジェクトに取組む高校をピックアップし、続けて高校生がつくった『島の仕事図鑑』の紹介をさせていただきます。
では、早速いきましょう!
▢事例1:新潟県立阿賀黎明高校
新潟県の阿賀町は、新潟県内では3番目に広い面積地をほこり、そこには約1万人が暮らしているそうです。
ただ、2019年1月に公表された「平成30年新潟県人口移動調査結果報告」によれば、阿賀町の人口減少率は県下で最も高い3.31%となっているようです。
その町に唯一存在する阿賀黎明(あがれめい)高校は、前身の津川高校から数えると創立100年の伝統校です。
ですが、進学率の低迷等を理由に、町外へ流出する若者が増え、長年定員割れが続き2020年には併設中学校を閉校し、周辺に存在する中学校との連携型中高一貫校に転換したようです。
そして、2016年に魅力化プロジェクトを開始し、2020年度には県内高校として初めてコミュニティ・スクールの指定を受けています。
また、阿賀町が支援する公営塾も存在するほか、コーディネーター採用も活発なようです。
2021年には地域みらい留学制度による全国からの生徒募集にともない、日帰り温泉施設「清川高原保養センター」をリノベーションし、学生寮「温泉と森のシェアレジデンス」を整備しています。
(▼阿賀黎明高校の留学制度パンフレット)
ちなみに、阿賀黎明高校の2020年度新入生を見てみると、県外生が5名も入学しているようです😲
▢事例2:山形県立小国高校
山形県の小国町も県内で2番目という広い面積地をほこり、そこに約7,000人が暮らしているようです。
ちなみに、RESASによると人口流出のほか、2015年時点で高齢化率は県下で4番目に高い数値のようです。
早くからコミュニティスクール制度を導入し、2017年から周辺の小中学校との合同学校運営協議会を実施しているだけでなく、
現在は保育園まで巻き込む形で「白い森おぐに保小中高一貫教育」までを構想しているようです。
また、高校の近くに道の駅があり、そこを実践場にも活用しているようです。
加えて、地元の大学(東北芸術工科大学)とも連携し、企画立案・ファシリテーター研修を積むなど地元人材の育成を行っています。
(▼小国高校の高校魅力化プロジェクトHP)
高校魅力化プロジェクトを開始してから、県外生徒の増加のほか、進学においても国立大学入学者を輩出するなど、徐々に学力も向上しているようです💪
▢高校生がつくった島の仕事図鑑の紹介
島の仕事図鑑は、島で働く人達へ高校生がインタビューを通じ、町にある仕事を知る機会を得て本にまとめた学習成果物になります。
中でも気になった3点をご紹介します。
①広島県立大崎海星高校
生徒たちが島で働く大人へインタビューし、本を作るまでの過程を綴った本です。定員未充足が続き、存続を迫られる高校…。高校を存続させるために立ち上がった先生やコーディネーターの方の熱意、それに応える生徒たちの成長がよく分かる一冊となっていました。
②鹿児島県立与論高校
生徒とみなとラボが「海に囲まれた島で生きる人々」を主題とし、探究的な学びを展開し作られた本です。48名の生徒ひとりひとりが話を聞いてみたいと思う人にインタビューし、撮影・執筆したものが中心になっててデザイン性が高く、制作に携わった生徒は楽しいだろうなぁ…なんて思う一冊です。
③新潟県立佐渡総合高校
高校1年生の「産業社会と人間」という授業から生まれた本で、島に暮らす96名の人々のさまざまな生き方が記されています。また、表紙には生徒が撮影した写真5枚入ってて、1枚ずつ裏面に生徒のコメントも綴られおり温もり感じました。これもすごくデザイン性があります。
②③の高校は、高校魅力化プロジェクトとは関係ないようですが、島民の仕事を知り、探求的な学びを書籍としてモノに変えることは重要だなと感じました。
特に、②③は写真もメチャメチャおしゃれなので、制作に携わった高校生がスゲー羨ましいと思いました👀
▢まとめ
事例からも分かるように、高校が核となり組織をオープンにする思想が地域の振興を支えていることが分かりました。
例えば、東京から地域へ留学し、高校卒業後に東京に戻った場合でも、第二の故郷として留学先は記憶に残ります。
その後、社会人となって第二の故郷へ「ふるさと納税」といった形で自治体へ副次的な効果もあり得るかもしれません。
あるいは、留学先にある大学や専門学校といった高等教育機関への進学も考えられます。
一方で、地域特有の課題を良く知る生徒(人材)を地元企業等が放って置くとは思えません。
高校魅力化プロジェクトと親和性のある事業の一つに、高校生が地域の課題をビジネスへ転換する事業として、
『地域ビジネス創出事業(Social Business Project:SBP)』というものがあります。
SBPは、地域課題をビジネスに転換する実務を担うため「地域固有の課題を良く知る生徒が欲しい」という、地元役場等からオファーもあるそうです。
スポーツの世界では練習も大事ですが、その成果を試合という実践の場で発揮し、何が悪くて良かったのかを振返り、気付きがなければ更なる成長には繋がりません。
これを教育に置き換えると、都心といった中心部に位置する学校では埋もれてしまうような個性も、活躍する場が多ければ多いほど、磨かれることは多分にしてあります。
つまり、活躍するフィールドを越境することで、新たな出会いが生まれ、考えもしなかった自分を見つけるきっかに繋がるかもしれない…
という選択肢も今はあるということです。
すごいですね。
僕たちの時代には考えられなかったことです。
高校魅力化プロジェクトを実践している高校は、自分が住む県にも存在していました。
ぜひお話を聞きに行きたいと思ったし、そういった生徒にウチの大学へ入学して欲しいなぁ~…って思ってしまいました。
正解がない現代だからこそ、越境することで見える景色も変わって自分事にへと落とし込むことができ、関係人口の輪が広がっていく…
ひいては、地域発展へ続く好循環が高校魅力化プロジェクトには詰まっているのかもしれません。
高校生の受け皿である大学は、高校の動きにはもっと敏感にならないといけないと思いました🏃♂️
ご紹介の書籍もぜひ参考になさってみてください!
最後までお付き合いいただき
ありがとうございました!
Twitterもやっています。@tsubuman8
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