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教員養成教育の質保証を考える

1.教職課程の自己点検・評価の義務化


 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教員養成部会 教職課程の基準の在り方に関するワーキンググループは,昨年12月,「複数の学科間・大学間の共同による教職課程の実施体制について(素案)」をまとめた。学校現場のニーズの多様化や複数免許取得の要請を背景として,教職課程の実施体制に関する基本的な方針を検討してきた。
 とりわけ,教職課程の自己点検・評価については,その義務化を提言している。

“教職課程に関する自己点検・評価の実施を義務とすることが適当である。ただし,評価に係る事務負担を過度に増大させることとならないよう,学校教育法(昭和22年法律第26号)第109条第1項に基づいて行われている教育研究等の状況についての自己点検・評価の中で教職課程についても扱うこととするなど,柔軟な取組が可能となるように留意すべきである。”(pp.15-16)

 質的向上答申(2015)をはじめ,これまでも提言されてきた内容であるが,令和2年度文部科学省予算に「教職課程の自己評価のガイドライン策定」事業が盛り込まれるなど,いよいよ本格化の兆しを見せる。では,各大学はどのような事項をどのような基準で点検・評価すればよいのだろうか?

2.各団体による教員養成教育の評価・質保証に関する調査研究


 検討に際しては、いくつかの団体が調査研究を進めてきた教員養成教育に特化した第三者評価が参考になるだろう。我が国では,2010年に東京学芸大学によって教員養成教育の評価・質保証に関する調査研究が立ち上がった。2014年までの第1期には「教員養成教育認定システム(JASTE)」を開発し,続く2016年までの第2期にはこのシステムを用いて国私立8大学10学部を対象に教員養成教育の評価を試みた。しかし,一国立大学が我が国全体の教員養成教育の評価事業を行うことに違和感が生じたこともあり,現在は教員養成評価機構がその事業を引き継いでいる。
 また,大学基準協会も文部科学省の委託を受け,質の管理を自律的に行うための具体的取組の把握等を目的とし,2017年と2018年に調査研究を実施した。
 さらには,開放制教員免許制度下における教師教育の充実と発展に寄与することを目的としている全国私立大学教職課程協会も,その組織特性を生かし2018年に調査研究を実施している。
 管見の限り,現在我が国で教員養成教育の質保証システムの在り方を検討している団体は上の3つである。各団体の調査目的等は以下のとおり。

本当の

3.アメリカの教員養成機関に対するアクレディテーション(適格認定)


 我が国の認証評価制度の手本とされており,教職課程の質保証が先進的に行われているとされるアメリカの事例も参考になるだろう。アメリカではCAEP(Council for the Accreditation of Educator Preparation)がその任を担っている。当団体は2010年にそれまでアクレディテーションを行っていた2団体(NCATEとTIAC)が合併し創設された非政府団体である。高等教育系の団体に加え,州の教育行政団体,教員団体,各教科団体も構成員となっている。アクレディテーション基準には「教員養成機関の質保証と継続的改善」が設定されており,以下のような基準が設けられている。

団体調査

 CAEPでは,エビデンスに基づく実証性を重視している点が特徴として挙げられる。教職の高度化や高等教育の説明責任を背景としてアメリカにおいて実施されてきたアクレディテーションは,我が国の教職課程の質保証の在り方を検討する上で参考になると思われる。

4.まとめ


 以上,第三者評価実施機関の紹介に留まるが,質保証の在り方を検討する手がかりを取り上げた。採用-研修段階との接続や学校種・教科の多様性への配慮,情報公表など,様々な観点でさらに検討を進めていく必要があるだろう。

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