佐藤 篤

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最近の記事

教職大学院において「論文執筆や研究指導を目的とした科目」を教職課程の科目として申請することは不適当か?

教職大学院改組による課程認定申請時の事務局指摘 知人の勤めるある大学が教職大学院を改組し,課程認定申請を行いました。すると,事務局指摘で次のような指摘がありました。 「●●(授業科目名)」について,論文執筆や研究指導を目的とした科目に見える。これらの科目については,学生によって扱う研究テーマ等が異なり,学校教育に資する教科又は教職の専門性にどのようにつながるか不明であることから,教員免許取得のために必要な単位として適当とは言えない。このため,これらの科目については,教職課程

    • 教職課程認定制度の先行研究

       尊敬する先輩職員が「大学設置認可制度の先行研究」をブログにまとめています。  先輩を真似て,また,私自身のメモ用に「教職課程認定制度の先行研究」をまとめてみました。  事例が多く掲載されている『教師教育研究』(全国私立大学教職課程協会)や政策解説記事の多い『シナプス』(ジダイ社)については十分に拾いきれていません。 制度史 ・竺沙知章・大谷奨(1999)「1954年教育職員免許法改正前後における中等教員養成の展開」兵庫教育大学研究紀要,19,41-53. ・小池俊夫(2

      • 読書感想文04_『仕事で「一皮むける」』金井壽宏

         成長し続けるビジネスパーソンは,どのような企業で,どのような環境下で,どのような仕事経験を通じて成長しているのでしょうか?  日本におけるリーダーシップ研究の第一人者である金井壽宏先生(今年度,神戸大学から立命館大学へ移られた。)と関西経済連合会人材育成委員会は,メンバー企業で経営幹部を務める20名にインタビューを行い,どのような<一皮むけた経験>を通じて経営幹部ならではの思考法や行動様式を身に付けたのか,調査結果を報告書にまとめています。  本書は,その内容を新書として仕

        • 国立教員養成大学・学部出身者は本当に教員になっていないのか?

              国立教員養成大学・学部の最もインパクトの強い評価指標は「教員就職率」です。教育者としての仕事を自立して遂行できる一人前の資質能力を身に付けた教員を計画的に養成することを目的としているため,一流企業就職者をどれだけ輩出しても文科省からは評価されません。  国立教員養成大学・学部卒業者の教員就職状況は,毎年度文科省が調査し公表していますが,近年では60%程度で推移しており,卒業者数から大学院等への進学者と保育士への就職者を除いた数を母数とした場合でも,その数値は70%程度

        • 教職大学院において「論文執筆や研究指導を目的とした科目」を教職課程の科目として申請することは不適当か?

        • 教職課程認定制度の先行研究

        • 読書感想文04_『仕事で「一皮むける」』金井壽宏

        • 国立教員養成大学・学部出身者は本当に教員になっていないのか?

          書評03_『迷走する教員の働き方改革 変形労働時間制を考える』内田良・広田照幸・髙橋哲・嶋﨑量・斉藤ひでみ

              2019年12月4日に「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(以下,「給特法」と略記。)の一部改正法が成立しました。これにより2021年度から,自治体単位で公立学校において「1年単位の変形労働時間制」(以下,「変形労働時間制」と略記。)が導入可能になります。     この制度改正は果たして教員の長時間労働の問題を解消するのでしょうか?本書は5名の著者それぞれの立場から教員の働き方改革の現状と課題を考察しています。  本書は全5章からなっており

          書評03_『迷走する教員の働き方改革 変形労働時間制を考える』内田良・広田照幸・髙橋哲・嶋﨑量・斉藤ひでみ

          書評02_『大学の組織とガバナンス』羽田貴史

              本書は,広島大学や東北大学などで高等教育研究に従事してきた羽田貴史氏の著作である。これまで論文・書籍として発表したり,講演録として活字化されていたりしたものに加筆・修正が加えられ,まとめられている。    全14章構成で,第1章~第5章は大学の組織に関する論文が収録されている。第4章では大学統合・再編を取り上げ,教員養成大学・学部の統合問題にも言及している。教員養成機関は学校教員の計画養成や研修機能等を担っているため,その統合の可否に関しては財政投入をはじめとする政

          書評02_『大学の組織とガバナンス』羽田貴史

          教員免許の国家資格化をめぐって

          日本における議論 高度専門職業人として,教員に普遍的に必要とされてきた資質能力に加え,学校安全,特別支援教育,ICT教育…といった,より高度でかつ新たな教育課題に対応するため,教員養成の大学院レベル化や教員免許の国家資格化が度々提案されてきました。古くは戦後まもなく教員免許法の立法過程で,近年では民主党政権下の2012年に出された中央教育審議会答申「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」において,さらに2015年の自民党教育再生実行本部の第四次提言で

          教員免許の国家資格化をめぐって

          得意教科は大学教育の何に影響を受けるのか?

          「小学校教員の授業実践に関する全国調査」  日本の小学校では伝統的に「学級担任制」が採られてきました。説明は不要かもしれませんが,「学級担任制」とは1人の教員が特定の学級に張り付き,全教科の指導や生活指導を担うものです。国語に算数に体育に音楽に…多数の教科を指導しなければならない小学校教員には,幅広い専門知識が求められます。  大学における小学校教員の養成段階では,当該教科の背景となる学問領域に関する科目(教科に関する専門的事項)とそれらを踏まえて授業設計を行う方法を身に付け

          得意教科は大学教育の何に影響を受けるのか?

          教員養成教育の質保証を考える

          1.教職課程の自己点検・評価の義務化  中央教育審議会 初等中等教育分科会 教員養成部会 教職課程の基準の在り方に関するワーキンググループは,昨年12月,「複数の学科間・大学間の共同による教職課程の実施体制について(素案)」をまとめた。学校現場のニーズの多様化や複数免許取得の要請を背景として,教職課程の実施体制に関する基本的な方針を検討してきた。  とりわけ,教職課程の自己点検・評価については,その義務化を提言している。 “教職課程に関する自己点検・評価の実施を義務とするこ

          教員養成教育の質保証を考える

          書評01_『大学改革の迷走』佐藤郁哉

           英語民間試験の活用と記述式問題の導入。大学入試改革の柱とされていたこれらが,受験機会の公平性や採点の正確性等を理由に見送りになったことは記憶に新しい。当初から数々の問題点が指摘されながら,なぜ議論されずにここまで進んできたのか?また,今年4月より「高等教育の修学支援新制度」が実施される。家庭の経済状況に関わらず意欲ある子どもたちの進学を支援することを掲げながら,対象要件を実務経験のある教員による授業科目の割合や学外者の経営参画といった機関(大学)側に設定するのは妥当なのか?

          書評01_『大学改革の迷走』佐藤郁哉