#1. 歩き続けた果て(『星の旅人たち』)
noteを始めたときに、フォローしている方の記事の中にこの映画の話が出ていてなんだかとても気になった。そのため、観てみたのだが個人的にすごく好きな映画の部類。特に劇中大きな転機みたいなものはなかったが、しみじみと情景が入ってくる感じ。良きでした。
あらすじ
アメリカ人の眼科医トムは、ひとり息子のダニエルが、スペイン北部ガリシア地方の聖地「サンディアゴ・デ・コンポーラ」を巡る旅の途上で不慮の死を遂げたとの報せを受ける。妻の死後、疎遠になっていた息子が何を思って聖地巡礼の旅に出たのかを知るため、トムは亡き息子の足跡をたどる。
ストーリーの構成について
映画の舞台は、スペインだ。息子が聖地巡礼へと赴く際に不慮の事故により命を落とす。それを知った父親が、息子の代わりに2ヶ月ほどかけて800kmほどの道を歩くという話。今回主人公が辿った道は、「カミーノ・デ・サンティアゴ」というもの。カミーノは道、サンティアゴはイエスの弟子である聖ヤコブのことを指している。最後の目的地となるサンティアゴには聖ヤコブの遺体が眠るといわれる大聖堂がある。
聖ヤコブ
イエス・キリストの十二使徒のうちのひとり。12使徒のなかで最初に殉教した(命を落とすこと)人物として知られている。
主人公であるトムは、その途中の道で兄弟の結婚式に向けて痩せたいというオランダ人のヨスト、禁煙をするために歩き始めたというカナダ人のサラ、旅行雑誌の記者であるアイルランド人のジャックと一緒に旅をすることになる。(ちなみにジャックとはヤコブの別名でもある。何かの暗示だろうか?)
途中トムは、亡き息子ダニエルの鞄が川に流されたり、ジブシーの子供に盗まれたりしてしまう。そんなことがありながらも、旅を進めていく。
聖地巡礼について
聖地巡礼とは、最近だとアニメや映画のモデルになった場所を巡るときに使われるようになったけれど、正確には宗教において重要な意味を持つ場所を指す。巡礼する人々はバッグにホタテの貝殻(聖ヤコブの象徴で、理由は諸説あり)をつけて、巡礼手帳にスタンプを押してもらいながら最終目的地を目指す。寺社仏閣の御朱印帳に、どこか漢字は似ているかもしれない。
当初トムは、医者としてそこそこ成功して、休みの日にはゴルフをしたりしてかなり悠々自適な生活をしているご老人である。それほど生活にも困らない暮らしをしてきたので、おそらくぎゅうぎゅうに修道院に押し込められたり野宿したり精神的にかなりしんどかったことだろう。
トムがそれでも聖地巡礼をやめなかったのは、息子への追悼、そして息子と一緒に旅をして彼のことを少しでも理解したかったのではないか、そんなふうに見える。ちなみにトムは察するにキリスト教徒ではない。信者じゃないけど、きっと何かおよこのつながりの様なものを感じたかったのではなかろうか。
ジプシーの言葉について
旅の途中、トムはジプシーに自分のバッグ(元は息子のもの)を盗まれてしまう。だが彼はバッグはさておき、一緒に入っていた息子の遺灰だけは返してほしいと懇願する。最終的にそれはジプシーの父親が聞き、盗んだ息子を叱責してバッグが帰ってくる。
その夜、お詫びとともにジプシーはトムたち一行を彼らの宴に誘う。トムはキリスト教ではない自分が、果たして聖地巡礼を続けて良いものかどうか思案しているようだったが、そんな彼に対しジプシーは
Religion has nothing with faith, nothing at all.
(宗教と信心深さは全く、なんの関係もないよ)
というのである。別に宗教を信じておらずとも自分の中に確固たる信ずるものがあれば聖地巡礼はそれで問題ないということだろうか…?
物語全体としては、描写がかなり牧歌的でスペイン人の陽気な姿が映し出されていたように感じる。映画を見ていたら、わたしもいつか聖地巡礼、したくなってきた。そのときは、きっと自分の信じられるものが何か見つかったときだろう。
いつか、原書でも読んでみたいな。英語版しかないらしいけど。
おまけ
こういう映画を見たときに、一般常識かもしれないけど実はよくわかっていなかったワードが時々出てくる。ジプシーはなんとなく知っていたけど、それはヒッピーとはどう違うのか。
ジプシー
ヨーロッパを中心に各地に散在する民族。箱馬車などに住んだが、現在は多くが定住。男は鋳掛け、女は占いなどで生活をたて、各地で差別を受けた。特有の音楽・舞踊の伝統をもつ。
ちなみに、
ヒッピー
1960年代後半にアメリカ合衆国に登場した、既成社会の伝統、制度など、それ以前の保守的な男性優位の価値観を否定するカウンターカルチャー (en:Counterculture) の一翼を担った人々、およびそのムーブメント。
だそうだ。ジプシーはモンゴル人などに見られるような遊牧民族のようなものなのだろうか?彼らはかねてより迫害されているイメージがある。そういえば、かつてスペインを旅しているときに、若者たちに突如囲まれてお金を取られそうになったことがあった。今思えば、あれがジプシーだったのだろうか。
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