【1分小説】雨のショー
雨だって悩み事があるんです。
ある日、雨は雲の中でため息をついていました。なんでも、最近他の天気が仕事を盗んでいる不満を漏らしているのです。
「私も楽しく仕事がしたいのに、いつも他の天気に邪魔されちゃうんだもん」と雨は雲に話していました。
すると雲は「じゃあ、今日は私たちだけのショーをやろうよ!」と提案しました。
雨は嬉しそうに頷いて、急いで地上に降りていきました。そして雲と一緒に大粒の雨を降らせていると、濡れるのを楽しんでいる人々の姿を見つけました。中には涙を流して喜んでいる人や、静かに合掌している人もいました。実は地上では日照りが続いていて、人々にとってはまさに恵みの雨でした。
「やっぱり雨は嬉しいんだね」と雨は笑顔で言いました。
楽しくなった雨は、雲と一緒に歌ったり、踊ったりしているうちに、地上からの喜びの声はいっそう大きくなりました。
すると、他の天気たちも雲と雨のショーに参加してきました。風が踊り、太陽が笑顔で光を放ち、雷が太鼓を叩く中、雨も競うようにより大粒の雨を降らせました。
みんな時間を忘れて楽しみました。そして他の天気たちは満足そうにして帰っていきました。
「楽しい時間ってあっという間だよね。ほら、見て。泣いて喜んでいる人たちもたくさんいるよ」雨は上機嫌に言いました。
「良いことをした後って気持ちいいよね」雲もまた上機嫌でした。
未曾有の大災害に見舞われた地上の多くの人々は、家屋を失い途方に暮れていました。
「またみんな誘って、今度はもっと派手なショーをやろうよ」
雨の提案をきっかけに、地上では毎週天気たちのショーが開催されることになりました。