真実の中に嘘を
「愛してるよゲームしましょうよ!」
「嫌だ」
「なんでですか!楽しいからやりましょうよ」
「やらないよ。一人でやればいい。最近のゲームは一人でも十分たのし」
「一人で出来ないゲームだから誘ってるんです!愛してるよって言われて照れたら負けのゲームです。試しにあそこにいるコウキさんにやってみるんで見ててください!」
「コウキはああ見えて硬派だから照れないだろ…」
「あの…コウキさん…愛してます」
「いっ、岩井…」
「はい、照れた!コウキさんの負けです!じゃあ次は先輩に言いますよ」
「おれが照れるわけ…」
「先輩…愛してます」
「…」
「つよっ!どうして照れないんですか!」
「この程度で照れるわけないだろ。おれは学園恋愛マスターだぜ?経験してきた甘酸っぱいシチュエーションの量が違うんだよ」
「でも先輩って男子校出身…」
「ギリ共学ですぅぅぅ!!! 工業高校だから女子は数人だったけどギリギリ共学ですぅぅぅ!!!」
「なのに学園恋愛マスターって…」
「読んでるんですぅぅぅ!!! いちご100%!アオハライド!!かぐや様は告らせたい!!!アオのハコ!!!! この4つ読んでれば学園恋愛マスターなんだよクソガキがぁぁ!!!」
「クソガキって…」
「ごめん、嘘だよ。本当はクソガキなんかじゃなくて、ちゃんと女として見てる。岩井、愛してるよ」
「せっ、先輩…」
「はい照れたぁぁぁ!!え?キュンとしちゃった??ドキドキとかしちゃった???だからお前はクソガキなんだよ!!帰ってしまじろうでも観とけやぁぁ!!」
「うっざ…」
「要するに詐欺師の常套手段だよ。愛してるよって嘘だけ言ってもリアリティないだろ?嘘の中に真実だったり本音を混ぜると人は騙されやすくなる」
「てことは、さっきのは…」
「愛してるよと女として見てるが嘘で、クソガキが本音」
「まじでウザイんだけど」
「なんでもフィクションとノンフィクションのバランスが大事ってことよ。例えばこのGジャン」
「当時の2ndモデルを踏襲してる。だけどこのサイジングと細かいところのディテールは当時は無かった。この世界に溢れている服には必ず元になったアイテムが存在する。それを踏襲せずに服を作るなんてほぼ不可能だよ。だから踏襲して、嘘をつくんだ。生地をサイジングをディテールを。その嘘の名前はデザイン。おれたちデザイナーはみんな詐欺師さ。元ネタという真実がある以上、なにをやっても嘘になるだろ?」
「元ネタという真実と、デザインという嘘…」
「そう。真実に寄り過ぎても、嘘をつき過ぎてもダメ。その綱引きをするのがデザインってこと」
「そうなんだ…私、やっぱり先輩の話聞くの好きだな。好きな人の話だからかな…デザインを嘘って例えるセンスも、自分のことを詐欺師っていう少しキザなところも全部好き。先輩…愛してるよ」
「いっ、岩井…」
「はい照れたぁぁ!!何が、いっ、岩井…だよ!それセクハラですからねぇぇぇ!!てかいっつも話長ぇんだよ!真実とか嘘とかカッコつける暇あるなら縮毛矯正でも行ってこいやクソ天パがぁぁぁ!!!」
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