気候変動のことをちょっと真剣に考える―『人新世の「資本論」』。そして、蔵書整理の日々―読書月記11

『人新世の「資本論」』を読み終えた。読みながら、1970年代に読んだSF小説『復活の日』『霊長類南へ』『飢餓列島』を思い出していた。最近のSF小説は読まないので何とも言えないが、当時のSF小説は少年ドラマシリーズや映画の原作となったジュブナイルとともに人類滅亡の危機について描いた作品がかなりあった。後者の典型が上にあげた3作だ(『かれらの中の海』も同傾向の作品だが、あらすじの記憶が定かではない)。人類滅亡と言ってもそれぞれで、『復活の日』がウイルス、『霊長類南へ』は核戦争、『飢餓列島』は地球寒冷化が原因だ。『飢餓列島』が描いたのは寒冷化による食糧危機だが、『人新世の「資本論」』が扱っているのは地球温暖化の問題だ。
地球温暖化についてはそのものを否定している人もいるし、地球全体が氷河期に向かっているので相殺するのではという考え方の人もいるようだ。こういった人たちは、特段に対策など必要ないという考えだ。
専門家でもない私がいくら言ったところで、地球温暖化を信じない人は信じないだろう。ただ、温暖化はない、もしくは氷河期と相殺するから100%問題はない、と言い切れる人もそれほど多くないだろう。リスクの割合を低く見積もっているのか、もしくは20~30年も経てば技術の進歩でどうにかなるという楽観論なのだろう。しかし、「もし」である。もし、危険を指摘している人が言う通りなら、どうなるのか。
私は還暦間近で子どももいない。住んでいるところはかなり寒冷なので、自分の人生を考えたとき、残り20年ぐらいはどうにかなるか、とも考える。しかし、子どもがいる人、今自分が40歳以下の人は、30年先のリスクを指摘した意見が当たった時のことを考えた方がいいのは間違いない。自分に子どもはいないが、私の親しい友人の子どもたちは30歳以下だし、従弟妹たちの子どもも10歳以下がほとんどだ。だから、本当にどうでもいいなどとは思っていない。そして、どうでもいいなどと思っていない人がそれなりにいることも間違いない。そういう意味でも、『飢餓列島』で描かれた日本はある意味で今の日本に似ている。危機を認識している人はいるし、メディアだって全く分かってないということもない。ただ、流れの中で何かをする勇気、一歩踏み出す人が少ないのだ。

さて、蔵書整理は今も続いている。ヤフオクでも本を売っているが、先日はブックオフにも本を売った。といっても、直接店舗に持ち込むのではなく、宅配に来てもらうのだ。今回驚いたのは買い取り価格が予想以上に高かったこと。クーポンを利用したので買い取り価格が少し高めであるが、それでも、ある本は、私が10年以上も前に購入した中古価格より高かった。クーポンを利用しなくても、ほぼ同額というレベルだ。今はどうなっているのか分からないが、以前のブックオフは、基本的にはカバーがついていること、書き込みなどがないことが最低条件で、あとは刊行から時間が経過すればするほど買い取り価格が安くなるといった査定だったはずだが、今はブックオフオンラインで本を検索すると一部の商品は元の価格よりも高い価格で売っている(本だけではなく、CD・DVDでもそういった商品がある)。もちろん、戦後すぐや昭和60年代あたりまでの本、貴重だけどあまりきれいでない本を扱っていないのは今も同じだが、おそらくこの20年ぐらいの本で、元値よりも高く、もしくは元値並みという本もそれなりにあるような気がする。基本路線は今も刊行年数なのだろうけど、一部とはいえ、流れが変わっていることは間違いない。『ビブリア古書堂の事件手帖』に、普通の古書店では高く売れる本を新古書店でセドリしてお金を稼ぐ人物の話があったと記憶しているが、今ではそれも難しくなってきたということだろう。おそらく、路線の変更には、そういった形でみすみす利益を逃していることに加え、前月にも書いた古書流通量の減少があるような気がする。
さて、この流通量の減少、ブックオフに関しては今年の4~5月期にかなり需要があったことと関係しているに違いない。これまでブックオフオンラインで注文すると、翌々日もしくはその次の日に届いていたのに、同時期は+2日ぐらい余分にかかっていた。注文数が多いようなことわりがあったと記憶している。
しかし買う場合は5~10冊程度かもしれないが、買い取ってもらうとなると、段ボール箱の大きさを考えると、CDやDVDなどがあれば別だが、最低でも単行本で40冊、文庫本なら80冊ぐらいは必要になる。そうなると、ブックオフから消費者へというルートはあっても、逆は少なく、当然だが、在庫に影響が出てきてもおかしくない。だからだろうか、11月の下旬だがテレビで買い取りのCMをやっていたし、29日(この日、買う場合に割り引きになるクーポン、買い取ってもらう時に査定価格がアップするクーポンがでる)でないのに、買い取り価格アップのクーポンが配布された。

ヤフオクで売っていて面白かったのは、5年前にはほとんど値がつかず売ることを断念して仕方なく家に残しておいた本で今回売れたものもあったということ。考えてみれば、古書として10年前にそれなりに流通量があったとしても、当時は捨て値だったため処分されたりして流通量が減り、そのために希少となり価格が高くなっていることも考えられる。ということで、今回ちょっと難しいかなと思うもので見送ることにして手元に残したものもある。5年ぐらいしたらどうなっているのか。楽しみでもある。ちなみに中古で買ったときの価格の8倍強で売れた本があった。ただ、これは例外であって、ほとんどの本が購入時の価格を上回ることはない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?