TBS系日曜ドラマ 「JIN-仁- 」 最終回後のお話 〜第3話〜 (同人・自己満です)
第3話
-1869年5月○日-
今日は横浜に出向き、野風さんにお会いしてまいりました。
相変わらずのあのきらびやかな笑顔に、おなごでありながら引き込まれてしまいました。
安寿ちゃんとルロンさんとの仲むつましい様子にもとても癒され微笑ましい気持ちになりました。
ですが、野風さんは以前より少しばかりお痩せになられたように見てとれました。
少しずつ病の影が見え隠れしてきたのかもしれません。
誰にも、野風さんを救うことはできないのでしょうか…。
橘 咲
-1869年6月1○日-
今朝、仁友堂の庭の手入れをしていたら、雨音の先にいつの間にやら紫陽花の花が咲いておりました。
もうそんな季節なのかと思うと感慨深いものです。
そしてそんな光景を眺めていたら、ふと朧げにあの方のことを思い浮かべてしまいました。
何故でしょうね。
もし本当に居らしたのなら、せめてお名前だけでも思い出したいのですが…。
橘 咲
-1869年6月2○日-
妙な夢を見ました。
内容はあまり覚えていませんが、私にとって幸せな夢だったかと思います。
しかし、朝目を覚ますと何故だか涙を流しておりました。
嬉し泣きというものでしょうか?
不思議でございますよね。
夕日が綺麗なあの丘に腰掛け、どなたかとお話をしている夢でした。
橘 咲
-1869年7月○日-
今日、なんと今は亡き坂本様から野風さん宛に文が届きました。
どうやら生前に長崎から送ったものが今になって届いた様でしたが、野風さんのお住まいが分からぬ故、一先ず仁友堂宛に出したとのことで。
なんとも坂本様らしいですね。
診察も兼ね、さっそく野風さんへお届けに向かったのですが、そこでまた坂本様らしい可笑しな出来事に鉢合わせました。
野風さん曰く、文は誕生日をお祝いする内容のものだったそうで。
そして、丁寧に日付を指定しお届けするように送られていたようでしたが、この文は昨年送ったもので、どうやら坂本様は年号を一年後に誤って書き記していたらしく。
これには失礼ながら二人して笑ってしまいました。
しかし野風さんの表情はとても嬉しそうで、
「主さんには内緒にしなければなりんせんなぁ。」
と、冗談めいて仰っていたのが印象的でございました。
私にもとても嬉しい出来事でございましたが、その様に思ってくださる方がいた野風さんのことが、実は少しだけ羨ましくもあった、…というのは此処だけの話にしておきましょう。
橘 咲
-1869年7月2○日-
雨の季節も終わり、明日はこの夏最初のお祭りがございます。
町の一員として、仁友堂の面々も今日は準備や手伝いに奔走しておりました。
ちなみに、仁友堂は金魚すくいの屋台を出すことになっており、佐分利先生はとても張り切っておられます。
山田先生は、お食事ができる屋台が良かったと少し愚痴を仰っていましたが…。
何はともあれ、皆で成功させられるよう頑張ってまいります。
橘 咲
-1869年8月○日-
先日のお祭りは大成功でございました。
私たちも町の皆も一体となり、本当に楽しく幸せな時間であり、やはり私はこの季節が誠に大好きでございます。
七日後にまた別の場所でお祭りがあるそうなので、そちらも今から楽しみにしております。
そういえば、今日は私宛に文が届きました。
遅くまで診察が重なり今宵はもう更けてしまいましたので、明日改めて拝読したいと思います。
「南方 仁」という方からの文のようですが、「みなかた」と読むのでしょうか。
橘 咲
第4話へ続く