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TBS系日曜ドラマ 「JIN-仁- 」 最終回後のお話 〜第2話〜 (同人・自己満です)

第2話

安寿「もう一人の母上と同じ病って、まさか…。」

咲「そう、乳癌です…。少し前から右の胸にしこりを感じ、このところ自分で診察を繰り返していました。念のため、友人の医者にも診てもらいましたが、やはり同じ見解だったので間違いないのでしょうね…。今まで黙っていてごめんなさい、安寿。」

安寿「…い、嫌ですそんなの。…何故、母上はそのように穏やかで居られるのですか?」

咲「…ふふ、私はもう七十の老いぼれですよ。仮に天寿を全うしたところで、どの道後先はそう長くありません。」

安寿「そんな…。あ、あとどれほど…なのですか?」

咲「二年、…というところでしょうか。」

安寿「二年…。」

咲「安寿。あなたは、この二年という歳月を短いと感じますか?それとも、長く感じる…?」

安寿「え、それは…」

咲「…。」

安寿「…短いです、とても。…母上はそうは思われないのですか?」

咲「…きっと人に依るのでしょうね。二年を『長い』と感じていた人も、私は存じてあげていましたから。…ただ私は、『短かった』と思えるように過ごしたいですね。」

安寿「え…?」

咲「だって、幸せな時間は過ぎるのがとても早いでしょう?」

安寿「…はい。」

咲「私だって、なにもこの世に未練が全くないわけではありませんよ。でもね…」

…ガラガラガラ
ふと、部屋の襖が開く音がした。

寿野「母上ー、おばあちゃまー。眠れないの、一緒にご本読んでー。」

安寿「寿野…。」

咲「あらあら、寿野ったら良いですよ、おばあちゃまが読んであげますね。」

安寿「あ、母上…」

寿野の肩を抱き、咲が優しい笑みを浮かべ振り返る。

咲「…湿っぽい話は性に合いませんね。何、別に今日明日のことではありません。ゆっくりと向き合う時間はありますから。」

安寿「…。」

開いていた襖が静かに閉じられる。

安寿「向き合う時間か…。」



しばらくすると、うつむき加減の安寿の視界に先ほどの咲の日記帳が映った。

安寿「何が、書いてあるのだろう…。」

そっと手に取る安寿。

安寿「…1869年2月○日、私は...」



-1869年2月○日-

私は、本日から日記をここに記すことに致します。
何故だかそうせずには居られなかったからです。

すでに先日、"あの文"は記しました。
今でも確証があるわけではございませんが…。

なので、この日記は私自身のために残すのです。

あの文には、『いつか全てを忘れてしまうかもしれない』と記しましたが、あの後私は思いました。
『例え悲しくとも、苦しくとも、やはり絶対に忘れたくはない。』と…。

だから、此処に書き綴ります。

夜も更けてきたので、今宵はこの辺りで。


橘 咲




-1869年3月○日-

春の息吹が感じられる今日この頃。
日記を書く習慣も、すっかり様になってまいりました。

ですが、人間の悪い癖でしょうか。
何だか毎日この様に書き綴っていると、単調な内容になることに飽きて、つい面白おかしく記そうとしてしまいます。

それではいけませんね。
等身大に表してこそなのに。

ですが、今日は少し不思議に思ったことが本当にありましたので、記したいと思います。

今晩、母上に久しぶりに揚げ出し豆腐を振る舞ったところ、昔より味が濃くなったのではと仰られました。
私も改めて味見をしてみたのですが、そう言われてみると確かに塩気が少々きつかったかもしれません。

特に分量を間違えた覚えもないですし、私を含めて橘の人間は皆薄味が好みなので、おかしな話でございますよね。

それでは。

橘 咲



-1969年5月○日-

今日は横浜に出向き、野風さんにお会いしてまいりました。

野風さんは少しばかり…

第3話に続く


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