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反出生主義の流れは止まらない

昨今、誰も表立って口出さないが反出生主義の思想が水面下で広がっている。
日本や先進国のみならず途上国までもが出生率が2を切っている状況を見ると世界的に子供を産まない方が良いというのが大きな潮流になっていると言って良いだろう。

私がセミリタイア系のブロガーを好んで読んでいるのもあるがネット上で子供が欲しいと言っている人や子供がいて幸せそうにしている人を見たことがない。

人間は言葉では簡単に嘘をつくが行動は嘘をつけない。
データは残酷なもので、隠していても人間の深層心理を浮き彫りにしてしまう。
事実、日本の出生率は年々下がっており2023は過去最低であったし、婚姻率も右肩下がりで2021年は過去最低になった。
口では子供が欲しいだとか家族で過ごすのが幸せだとか言いながら現実には子供を産んでいないのだ。

家族=幸せ
子供=幸せ

この図式は明らかに崩壊しかかっている。
その原因は橘玲氏が無理ゲー社会という書籍で社会の難易度を上げている要因として述べている「リベラル化」「グローバル化」「知識社会化」の三位一体の進行の影響だと思う。


リベラル化の影響

リベラル化とは端的に言えば全ての人間は自由に自分らしく生きて良いという考えだが、これは結婚や子育てとは真っ向から対立する思想だ。
結婚すれば相手に合わせて少なからず自分の自由は制限されてしまう。
子育てとなればその制限はさらに大きくなり金も時間も子供のために捧げなければならない。
金も時間も残念ながら有限なので、独身であれば自分らしく生きるために使えたはずの資源は配偶者や子供のために失われてしまう。
もちろんリベラルは子供を育てる自由を否定していない。
だが自己の自由を何よりも大事すべきという思想を内面化した人間が自由を制限してまで子供育てを望むかと言えばNOだろう。

またリベラルが望ましいと考える自由恋愛についても恋愛できる者とできない者の格差を押し広げてしまう。
当然恋愛できない敗者は子孫を残せず屈辱を味わうことになる。
海外ではインセルと呼ばれる存在が自分にパートナーができないことを嘆いて銃乱射事件を起こしているし、日本でもジョーカーと呼ばれる人々が規模はアメリカと比べ小さいが同じようなことをしている。
リベラルの思想からすれば自分のパートナーは自分の意思で自由に決める方が良いとされ、こうした恋愛はドラマなどで題材となっている。
親の決めた許嫁ではなく性格のヤンキー系の男を選ぶストーリーは少女漫画のテンプレの一つだ。
だが、こういった自由恋愛も良いことばかりではない。
自由に相手を好きになったとしてもその相手を手に入れられるわけではない。
愛人や不倫相手という立場に甘じて良いのなら別だが、結婚したり本命のパートナーになれるのは1人だけだ。
例えば私が浜辺美波や広瀬すずとの恋仲になりたいと望んだところでその他大勢の数百万、数千万の男に勝たなければならない。
妥協すれば良いという考えもあるがそれにも限度がある。
パートナーを作ることには先ほど述べた通り自由が制限されたり、金がかかるデメリットがある。
それを上回るメリットを提供できないのなら異性から選んでもらえないのが現実だ。
マッチングアプリのビッグデータを分析した研究によると男は金があればモテ、女性は若い方がモテることがわかっている。
ということは裏を返せば金のない男や歳のいった女性ほどパートナーを得られる可能性は低くなってしまうわけだ。
性的魅力の高い者はマッチングするがそうでないものは恋愛市場から締め出されてしまう。
そしてその中の一部はインセルやジョーカーとして恨みを募らせてしまう。
魅力的な人間がお見合い結婚などで強制的に結婚させられたら不幸になるかもしれないが、恋愛弱者は強制的にお見合い結婚させられた方が幸せだったのかもしれない。
年々未婚率は下がっているがその原因の一つは自由恋愛によりかつてお見合いで結婚できた層が恋愛市場から脱落してしまったためだと言って良いだろう。

グローバル化と知識社会化の影響

次にグローバル化と知識社会化によって子供が望まれなくなっている状況を説明しよう。
まずグローバルによって自由に世界中の人々と取引できるような社会ではイーロン・マスクやスティーブ・ジョブズのように世界市場相手にビジネスを成功させて大金持ちになる人間がいる一方で、賃金が下がったり職を失う弱者も同時に現れる。
弱者が現れるメカニズムを解説する。
途上国が安い労働力を大量に使い工業製品を作り出せば、日本人に高い金を払っていた工場は価格競争に負けてしまう。
そういった事態を避けるために日本の工場は途上国に移転してしまい、日本の工場労働者は職を失ってしまう。
それが嫌なら途上国に移転されないように労働者は給料ダウンを受け入れなければならない。
これは工場労働者だけの問題ではない。
グローバル化した社会では企業自体も世界を相手に戦わなければならない。
日本のかつて栄華を極めた大企業であっても一寸先は闇だ。
シャープは台湾の会社に買収されてしまったし、東芝は上場廃止となってしまった。
日本企業の中で現在時価総額一位のトヨタですら電気自動車や自動運転が普及したらどうなるかわからないと言われている。
グローバル化した社会では我々は大手に勤めていようが給料が下がったり、クビになったり、会社が潰れるリスクにさらされている。

次に知識社会化の影響について説明する。
先ほどの述べた通りグローバル化した社会では単純労働者は発展途上国の安い給料で働く労働者によって仕事を奪われてしまう。
そんな状況の中で高い給料を得ようするなら大学などで高度な知識やスキルを身につけ希少価値の高い労働者になる必要がある。
だが高度なスキルを子供に身につけさせようとすれば多大な教育費が親に負担として重くのし掛かる。
受験戦争を勝ち抜くためには中高一貫の私立中学へ受験させたり、塾に入れたりしなくてはならないし、無事大学へ受かった後も高額な学費を払わねばならない。
今は子供の教育が上がっているだけではなく賃金が下がり大企業も潰れる時代だ。
支出が増え、収入が下がるダブルパンチを受けている状態では親はそう何人も子供を育てることはできない。
将来結婚するかもしれない若者たちもそうした状況を目にすると結婚への意欲は削がれてしまう。
こうして子供の存在は望まれるものではなくなってしまった。

異次元の少子化対策など無意味

最近、岸田が異次元の少子化対策だとか言っているがはっきり言ってリベラル化、グローバル化、知識社会化の潮流の前では無意味でしかない。

リベラル化を止めるために考えられる施策は個人の自由を制限してお見合いを強制させたり女性の社会進出を禁止したりすることだがそんなこと人権侵害は現代の価値観において到底許されるはずもない。
ヒトラーのような独裁者が現れれば億が一、そうした
ことが実現する可能性はゼロではないが、グローバル化や知識社会化に至ってはそうした為政者の都合など無視して他国が勝手に進行させてしまうため、止めることは不可能と言ってよい。
もし日本が鎖国したらiPhoneやサブスクなどのサービスは無くなるし、エネルギーや食料も不足し飢饉が起きるだろう。
その間に他国は自由貿易により豊かになり、高度な人材が新たなイノベーションを起こす。
日本はそうした進歩から取り逃がされることになり、国力が弱まり最悪の場合は他国に侵略され併合されてしまうだろう。

岸田が無駄に増税した金を子育て支援とか言って配ったところでリベラル化もグローバル化も知識社会かも止まらない。
焼石に水とはまさにこのことだ。

社会全体の難易度が上がった

リベラル化、グローバル化、知識社会化の三位一体の進行に伴って社会の複雑さは増大した結果、社会適応できない人間の数も急激に増えてしまっている。
高度化が進むほど多様な人種や性別、性的趣向の人々の利害を調整しなくてはならなくなるからだ。
そのような社会ではASDのように他人の気持ちを読み取ることが苦手な人間は振り落とされてしまう。
また知識社会化により仕事がデスクワーク中心となるとADHDのように多動性や不注意を抑えられない人々は生産性が低く仕事ができないと見なされる。
そういった発達障害でなくとも高度化した社会ではうつ病や適応障害を発症してしまう人も少なくない。
異性の従業員に誤った接し方をすればセクハラとなるし、部下の指導を誤ればパワハラとなってしまう。
権力者や有名人であっても少し言動を間違えれば立場を失ってしまう世の中だ。
社会適応の難易度は急速に上がってしまっている。

行動遺伝学によって人生のネタバレが進んだ

ASDやADHDなどの特性は現代社会には不適合であるとみなされるが過去においては適応的であった可能性が示唆されている。
例えば現代でも狩猟採集生活を送る民族のDNAを調査するとADHDの関連遺伝子を持っている人ほど栄養状態がよかったという。
ADHDは狩猟採集時代においては適応的であったのだ。
それが現代の社会では不適合な要素とみなされてしまう。

行動遺伝学の知見によれば発達障害は遺伝することが分かっている。
それだけでなく知識社会で非常に重要な知能も遺伝することがわかっているし、誰もが知っている通り容姿も遺伝する。
世の中を生き抜いていくのに必要な能力が遺伝で決まってしまうのだとしたら現代社会に不適応な形質を持つ人たちは自分の子供も同様の不幸を背負うことになることを想像してしまうだろう。
トンビが鷹を産むということわざがあるがそれはたまたま運が良かっただけだ。
普通カエルの子はカエルという現実を直視すれば、現代社会に不適合な人間は次世代にその苦しみを味合わせないよう遺伝子の断絶を望んでもおかしくはない。

反出生主義は今後ますます市民権を得るだろう

ここで恐ろしい予言をしておこう。
反出生主義は今後ますますポピュラーな思想になっていくだろう。
社会が高度化し社会に適応できない発達障害や精神病患者が増えつづけ、経済的にも子育ての難易度は高まり続ける。
この流れが止まる要素は見つけられない。
イーロン・マスクや大谷翔平のように現代社会にうまく適応した人間は例外としてその他大勢にとってはディストピアのような社会になりつつある。
Ζ世代の45%は子供がいらないと回答しているデータがある。
不幸になることが分かりきってるのだから子供欲しくないと考える若者は増えているのだ。
この傾向は止まることなく今後も続くだろう。

日本だけでなく少子化は先進各国で進んでいる。
アメリカではリベラル化やグローバル化をディープステートの陰謀だと唱える人たちはトランプ大統領の復活を望んでいる。
バイデンがまた大統領になったところで現代社会に適応できない人々とエリート層の分断は終わらない。
日本も10年遅れでアメリカのような社会へ近づいている。
トランプの代わりにガーシーが国会議員になったし、欧米で問題視されているキャンセルカルチャーも小山田圭吾の事件を発端に有名人が次々と公職を追われている。

世界のディストピア化は止まらない。
もう終わりだよこの世界。

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