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人間力と仕事の力

昨日、偶然が二つ重なって、いい機会を得た。

一つ目の偶然は、仲がいいチーム長のNさんが隣の席だった。
二つ目の偶然は、そんなNさんと帰るタイミングが一緒だった。

Nさんと会社を出る時に、「この後懐かしい人達とご飯を食べに行くんだよ」と言って、メンバーを聞いたらその中に、3年間も同じチームでぼくを教え続けてくれた恩師Yさんがいることを知り、「顔だけ出していいですか?」と言った。
Yさんは2年ほど前に会社を旅立ったのだった。


お店に到着して、窓から少し覗いたら、Yさんの顔が見えた。
やっぱり顔出すだけだとなぁと思い、Nさんも「もしよかったら」と言ってくれていたので、奥さんに連絡をした。
夕飯の準備中だったみたいで、かなり申し訳なかったが、奥さんにはYさんの話をよくしていたので、「お土産買ってきてくれたらいいよ!」と言ってくれた。

2年ぶりで、且つ尊敬する人なので緊張しながら店内に入り、マスクをした状態で顔を出すと、Yさんは少し硬直した後に「あーーー!!」と驚いてくれた。
YさんNさん以外にも2人いて、この2人もぼくが働く会社を旅立った人であった。

そんな人達と話す忘年会は当然楽しくて、あっという間に時は過ぎ去った。
恩師Yさんの帰り道は、ぼくが降りる駅を通るルートなので、2人で話しながら帰った。




「ある程度は後輩に尊敬されるような人にならなきゃですよね。
何でも言い合える関係性がいいと思うんですけど、友達みたいな感じになると、ついて行きたいって思われないなぁって。」


みたいなことをぼくは言った。
するとYさんはこう言った。


「人間力の次は”仕事の力”をつけるといいよ。」



Yさんがチーム長の時、本当に多くのことを教わった。

誰かとプロジェクトをうまくやる力
誰かを引っ張っていく力
ちゃんと聞く力
俯瞰するにはどうしたらいいか
コンペをどうとったらいいか
好感をもってもらうための作法
武器は隠し持っておけ
私達は言葉じゃなくて形を売っている

テクニカルなことではなく、基本的には人間力を伸ばすように、ぼくに伝え続けてくれた。
教えるのではなく、考えさせるようにして、気付かされたこともある。

この時は「仕事の力」と聞いて、「実績」のことなのかなと思った。
仕事が内装設計なので、どかーんと大きい規模の案件をやって、みんなから、すごーいって思われるものを作れば、わかりやすく部下もついて行きたいって思われるなって。

でもやっぱりそれだったら「仕事の力」って言わないだろうし、そもそも大きい規模の案件をやるには、関係者が増えるので、今まで以上に協調性とか牽引力、結局、人間力が試される。

Yさんが特にすごかったのは、誰もが知る大きな企業の、普段経験しないような建物の条件下で、さらに工事が何回かのフェーズにわかれる複雑な案件で、プロジェクトメンバー全員を引っ張っていたことであった。

それは完成したものがすごかったというより、それが出来上がるまでの過程がすごかった。

これこそが「仕事の力」である。
人柄の良さだけでこれは出来上がらない。

ぼくは来年、後輩を育成する可能性がある。
教わるならやっぱりYさんのようにならなければって思う。




ぼくが降りる駅に到着した。
席を立った時と、電車を出る時にお辞儀をして、笑顔で手を振ってくれた。



「私は本当に何もできなくて、いい人に出会ってすごく努力をしたから、人にいろいろと教えることができる。」
「もともとセンスがあった人との違いですよね。
イチローは努力してきたから人に具体的に教えられるけど、長嶋茂雄はセンスがよかったから教える時に感覚的だったって何かで読んだことあります。
「そうそう、シュッとか、バッとかね笑
だから私とあなたは指導者に向いていると思うの。」


この会話も忘れられないなぁ、と思いながら駐輪場までの道を歩いた。

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