紫色から始まる⑧
私の足元にしゃがみ込み、濡れたハンカチで私の膝の傷を拭き始める。
ジミン「染みるけど、少し我慢して。泥拭き取るから」
壊れ物に触るみたいに、真剣な顔で私の膝を丁寧にぬぐっているジミン。
ジミン「ごめん。俺がバカな事させたから」
フッと視線を上げたジミンと目が合って、思わず目が泳いでしまう。
頬が熱い。ブランコのせいかな。
ジミン「絆創膏持ってる?」
ナム子「あ、自分で貼るよ」
ジミン「俺が貼るから貸して」
ジミンが慎重に絆創膏を貼っていく。
ジミン「うん、これで大丈夫。家に帰ったら、消毒して」
ナム子「うん、ありがと。昔もさ、ジミンがよく手当してくれたよね」
ジミン「ナム子泣き虫だったから」
ナム子「懐かしいね」
ふっと笑って、ジミンが隣に腰かける。
もう夕日はほとんど落ちて、月の光が力を増し白色に輝いている。
ジミン「綺麗なお月様だね」
ナム子「うん」
ジミン「……ねぇナム子」
ナム子「ん?」
ジミン「ここに最後に来た時の事、覚えてる?」
!
ナム子「……うん」
そっとジミンを見ると、ジミンも私を見ていた。
私達の間を、昼の余韻を残した夜風が通り抜けていく。
初めて見るような、真剣なジミンの顔。
ジミン「これで最後にするから、教えて」
ナム子「え?」
ジミン「俺、そんなに男として見れない?」
ナム子「え……あーどうなんだろうね……」
ジミン「ナム子は? ナム子にとって俺は……どうなの?」
ナム子「私?! に、は……」
ジミンから目を反らす。
どうしよう、怖い。
でも、もしこれが、本当の気持ちを伝える最後のチャンス、なら?
『気持ちに素直になれば、きっと上手くいくと思う。後悔しないように、本気でぶつかってみて』
ユンジ……。