私の男 20220912
『私の香り』だと思った。
揺れて擦れた葉、
蜜蜂が体中に纏った花粉、
太陽に温められて土から蒸発する水分……
濃厚な匂いに混ざって、私へ届いた微かな香り。
香りを頼りに行き着いたのは、一人の男の人。大きな木々が作る涼しげな日陰で、とても気持ち良さそうに本を読んでいる。
紙をめくるほっそりとした指。
眉間に寄せられた微かな皺。
本に集中するあまりに、その大きな体はとても無防備に見えた。
揺れる木漏れ日を受けながら本を読み続ける、少年と大人が入り交じったような男の人。
私は『