紫色から始まる④
ユンジ「ナム子、座ったら?」
ジミンは他の席の下まで散らばったナム子の化粧品を探しに行っている。
椅子に座ったナム子に素早く耳打ちする。
ユンジ「良い? 私が席を立って5分くらいしたら、必ずスマホを見て。必ずよ」
ナム子が小さく頷いたのを確認して、体を離す。
ジミン「ナム子、これで全部揃ってる? そそっかしいところ、ホント変わんないよな」
ナム子「あ……ありがとう」
ナム子の視線が、ジミンと私を行ったり来たりしている。
何が起こるの? とでも言いたげに。
椅子に戻ったジミンが、笑顔で口を開いた。
ジミン「話戻すけど、ユンジちゃん、俺と付き合って下さい」
ユンジ「ありがとう」
ナム子がギュっと目をつぶる。
ジミン「じゃあ……!」
ユンジ「でも、付き合えないわ」
ナム子「!」
ジミン「どうして?!」
ユンジ「私、付き合ってる彼がいるもの」
ナム子・ジミン「えっ?!」
ナム子「そんな話聞いた事ないわよ」
ユンジ「内緒にしておいて、って言われたの。彼、恥ずかしがり屋だから」
ジミン「そんな……」
みるみる肩を落としていくジミンと、顔に赤みが差してくるナム子。
良かった。あとは……素早く店内を見渡す。
あ、あれがいい、同じ制服。よしっ!
ユンジ「彼が来たから行くわね」
じゃあね、と言って席を立ち、ビックリしている同じ制服の男の子の腕を引っ張って2階へ上がった。
チラリと後ろを見ると、肩を落としているジミンを、少しだけ顔の赤いナム子が見つめていた。
2階の空いている席に着いて、スマホでナム子にLINEを送る。
『ジミン、軽く凹んでると思うから慰めて上げてね。ナム子が自分の気持ちに素直になれば、きっと上手くいくと思う。
私なんて、って思わずに、後悔しないように、本気でぶつかってみて。冷静にね』
私の勘が正しければ。
二人はきっと、気持ちが繋がっているはず。
自分の勘を信じよう。