紫色から始まる⑩
ジミン「俺はナム子が好きだよ。女の子として」
ナム子「!」
ジミン「キスした時……俺、焦ってた。中学に入ってナム子どんどん可愛くなって、気付いたら俺の中で女の子になってた」
ナム子「……」
ジミン「周りの男共がナム子の事聞いてくるし、誰にも取られるもんかって……ここで二人きりになってチャンスだと思った。キスをすれば、気持ちが伝わると思い込んでたんだ、バカだよね」
ジミンが大きく息を吸って、話を続けた。
ジミン「キスした後、何事もなかったみたいに話し掛けてくるナム子が『俺達は兄弟だ』って言ってるように思えてしまって。そのうち目をそらされるようになって、本当にどうしたらいいか分からなかった」
ナム子「……」
ジミン「他の子を好きになろうとしてみたけど、そんなのムリだった。いつもナム子と比べてた」
ジミン「俺、ナム子が好きだよ」
涙が溢れてきて止められない。
ジミン「ナム子は、俺の事、好き?」
ナム子「……うん、好き」
うん、うん、と言いながら、ジミンが私の両手を取った。
ジミン「ありがとう、ナム子……気持ち、教えてくれて」
ナム子「うん」
ジミン「もう泣かないで」
ジミンの温かい指が、頬の涙を拭っていく。
ナム子「ジミンだって、泣いてる」
ジミン「うん、うん」
ジミンの頬に触れる手が震える。
お互いの涙を拭きあって、顔も手も何だかぐちゃぐちゃになって、掴み合いのケンカを思い出した。
ふいにジミンの手が背中に回って、気付けば彼の腕の中に引き寄せられていた。
私をすっぽり包み込むジミン。
いつの間にこんなに大きくなったんだろう。
ジミンの呼吸が、耳のすぐ傍で聞こえる。
心臓がバクバクと音を立てて跳び跳ね、涙は一気に引っ込んだ。
ジミン「……もう兄弟はやめて、今日から恋人になろう」
ナム子「……うん」
少しだけ体を離して、私の頬をそうっと包み込む骨っぽい手。
さっきの温かさとは違う熱を持ってる。
私の目をまっすぐ覗き込む色素の薄い目。
ジミン「目、つぶって」
初めて見る顔で、ジミンが唇に視線を落とす。
傾けた顔がゆっくりと近付いてきて、慌てて目を閉じる。