バックミラーに映る一つの季節(セゾン)
「怒ってますか?」
部下が僕に尋ねる。
「なんで?」
「ミスをしたので、なのに笑顔でいてくださるのは配慮かと」
僕は、彼の質問の意図を測りかねた。
「君がミスをしたのに、僕が怒るの?」
「先輩の成績に響くので」
なるほど、意味がわかった。
「別に怒らないよ。笑顔なのは、ほら、癖かな」
僕は、病床にいた時の、祖父を思い出した。
意識がないのに、僕の名前だけをはっきり叫んで、小声で耳打ちをした。
「大成する」
僕は、祖父の予言通りに生きられただろうか。
人に好かれることが、人に怒