見出し画像

「UX リサーチ」について学んだら、実はもう始めていた話


はじめに

こんにちは。事業会社のプロダクト開発チームでプロダクトオーナーを務めている vanilla.dev と申します。
最近、「はじめてのUXリサーチ ユーザーとともに価値あるサービスを作り続けるために」という本を読んで、UX リサーチについて勉強しました。

そして驚いたことに、自分がすでに UX リサーチを実践していたことに気づいたのです。今回は、その気づきと学びについて共有したいと思います。

UX リサーチとは何か

本書では、UX リサーチについて以下のように定義しています。

様々な場面で起きる人の知覚や反応(UX)について調べ明らかにすること


松薗 美帆, 草野 孔希.
はじめてのUXリサーチ ユーザーとともに価値あるサービスを作り続けるために.
翔泳社, 2021年, p.16.

UX とは、プロダクトそのもの(= UI)を使っているときのみではなく、プロダクトを使用する人の世界や生活そのものにおける、知覚や反応だといいます。

一生かけても使い切れないほどのプロダクトが存在し、新機能を作ってもすぐ他社に追いつかれてしまう今日において、他と比べて使いやすかったり、使っているときの品質が高いことが使い続けられる理由になりました。
そのため、UX リサーチの重要性は高まっているといえます。

主な UX リサーチの手法には以下のようなものがあります。

  1. ユーザーインタビュー

  2. アンケート

  3. ユーザビリティテスト

  4. KA法、SCAT、mGTA、KJ法

  5. ペルソナ、カスタマージャーニーマップ

  6. サービスブループリント

KA法などは初めて耳にしました。手法の詳しい解説は書籍を読むことをおすすめします。

気づき:僕たちはすでに UX リサーチをしていた

本を読んで UX リサーチについて学んだ後、僕は衝撃的な事実に気づきました。なんと、僕たちのチームは、すでに UX リサーチの要素を日々の活動に取り入れていたのです。以下に、いくつかの例を挙げてみましょう。

1. ユーザーストーリーマッピング

僕たちのチームでは、ロードマップを立てる前や要求定義を行うときに、ユーザーストーリーマッピングをしています。
社内のユーザーに近い営業さんや営業サポートの方、経理の方といっしょにやるのですが、このプロセスで、僕たちは常にユーザーのニーズや課題を考慮し、全体的なユーザージャーニーを可視化していました。
これは、まさに UX リサーチの一形態だったのです。

例えば、EC サイトのユーザーストーリーマッピングでは以下のような流れを作成することになるはずです。

  1. サイトに訪問する

  2. 商品を探す

    • カテゴリーから探す

    • 検索機能を使う

    • おすすめ商品を見る

  3. 商品詳細を確認する

  4. カートに追加する

  5. 購入手続きを行う

  6. 配送状況を確認する

このマッピングを作成する過程で、僕たちは無意識のうちにユーザーの行動パターンや潜在的なペインポイントを分析していたのです。
例えば、「商品を探す」段階で、ユーザーが望む検索方法や、どのような情報があれば商品選びがしやすくなるかを考慮していました。

また、このマッピングを基に、各ステップでのユーザーの感情や期待を議論することで、より深いユーザー理解につながっていました。例えば、「配送状況を確認する」段階で、ユーザーが感じる不安や期待を想像し、それを軽減するための機能(リアルタイムの配送追跡など)を検討していたのです。

2. スプリントレビューでのフィードバック収集

各スプリントの終わりに行うスプリントレビューで、僕たちはステークホルダーからフィードバックを収集していました。
これは、まさにユーザビリティテストやユーザーインタビューの要素を含んでいます。

アウトカム最大化のために、フィードバックを回収していたわけです。
また、スプリントレビューで発言しにくかったり、スプリントで扱った機能以外での疑問や改善案などを回収するためにアンケートの配布も行っていました。
これらのフィードバックを基に、次のスプリントでの改善点を見出していたのです。

3. アナリティクスによる量的分析

僕たちは Google Analytics を使って、定期的にユーザーの利用状況を量的に分析していました。これは、本書でも述べられている量的リサーチそのものでした。

例えば、現在僕たちが取り組んでいるプロダクトのリプレイスプロジェクトでは、以下のような分析を行っていました:

  1. 既存システムの利用パターン分析:Google Analytics の行動フロー機能を使って、ユーザーが現行システム内をどのように移動しているかを可視化しました。これにより、新システムでも維持すべき重要な動線や、逆に改善が必要な複雑な動線を特定することができました。

  2. 機能別の利用頻度分析:各機能の利用頻度を測定し、どの機能が最も重要で、どの機能があまり使われていないかを把握しました。これにより、新システムでの機能の優先順位付けや、場合によっては不要な機能の削除を検討する材料となりました

  3. ページ滞在時間と離脱率の分析:各ページの滞在時間と離脱率を測定し、ユーザーが困難を感じている可能性のある箇所を特定しました。これは、新システムでのページ設計や情報アーキテクチャの改善に直結する洞察となりました。

これらの分析から、僕たちは以下のような重要なインサイトを得ることができました:

  • 特定の機能が予想以上に頻繁に使用されていることが分かり、新システムではこの機能をより目立つ位置に配置し、使いやすさを向上させることにしました。

  • 一方で、特定の機能がほとんど使われていないことがわかり、機能を削除したり簡略化することで、プロジェクトの工期短縮に貢献できました。

  • ある検索画面では、ユーザーの多くが途中で離脱していることが判明。膨大な量のデータから情報を取得するため、レスポンスに時間がかかり途中離脱していることがデータでわかりました。新システムでは、このプロセスの最適化と高速化を最優先課題の一つとしました。

これらの分析と発見は、僕たちの新システム開発の方向性を大きく左右し、データに基づいた意思決定を可能にしました。結果として、現行システムの問題点を解決し、ユーザーのニーズにより適したシステムの設計につながりました。

UX リサーチを意識することで得られた変化

UX リサーチについて学び、それを意識的に実践するようになってからは、いくつかの positive な変化がありました。

  1. より深いユーザー理解:単なる機能追加ではなく、なぜその機能が必要なのか、ユーザーのどのような課題を解決するのかを、より深く考えるようになりました。

  2. エビデンスに基づく意思決定:「こうすべきだと思う」という直感的な判断ではなく、ユーザーの声やデータに基づいて意思決定をするようになりました。

  3. チーム全体の UX への意識向上:エンジニア含むチーム全体が、ユーザー体験を意識するようになりました。

  4. 優先順位付けの改善:ユーザーにとって本当に価値のある機能や改善点を、より正確に特定し優先順位をつけられるようになりました。

まとめ:UX リサーチは特別なことではない

この経験を通じて、UX リサーチは特別な活動ではなく、ユーザー中心のプロダクト開発を行う上で自然に組み込まれるべきものだと理解しました。僕たちはすでに UX リサーチの要素を実践していましたが、それを意識し、体系的に取り組むことで、より効果的なプロダクト開発が可能になるのです。

プロダクトオーナーとして、これからも UX リサーチの手法を積極的に取り入れ、ユーザーにとってより価値のあるプロダクトを作り続けていきたいと思います。

皆さんも、日々の活動を振り返ってみてください。きっと、あなたも知らないうちに UX リサーチを実践していたかもしれません。その気づきが、より良いプロダクト開発への第一歩となるはずです。

いいなと思ったら応援しよう!