メタファシリテーション手法とは?
一人でも多くの農家さんの自立を促すために、ベナンで野菜配達ビジネスをしている綿貫大地です。
*この記事は、JICA青年海外協力隊(2017年10月〜2019年9月)時に投稿した記事を再掲したものです
今回はメタファシリテーション手法を紹介します。
この手法を知ったのは、ある国際交流イベントにて、あるNGOのワークショップで紹介されていたのがきっかけです。
その後も興味は続き、そのNGO主催のセミナーに参加したり、途上国の人々との話し方―国際協力メタファシリテーションの手法を参考に理解を深めました。
今回お伝えすることは、ほぼこの本に書いてあります。
とても参考になる本なので、詳細を知りたい方は読んでみてほしいです。(特にこれからコミュニティ開発でJICA海外協力隊員になろうという方にはおすすめ)
メタファシリテーション手法とは
聞きなれない言葉ですが、”メタ”と”ファシリテーション”に分けて考えると理解しやすいです。
メタとは心理学用語のメタ認知からとったもので、メタ認知とは、”自分が何かを認知(理解)しようとしながら、同時にそういう自分自身を認知(理解)する行為や機能”。
ファシリテーションの定義はいろいろありますが、この本では”気づきを促す(faclitate)こと”としています。
具体的な方法は後述しますが、大原則がこれです!
事実質問だけで構成する
・問題は何ですか?それはなぜだと思いますか?と決して聞いてはいけない
・5W1Hのうち、When, Where, Who, Whatで構成すると質問しやすい
事実質問とは?
事実質問がどういうものなのでしょうか。
①朝ごはんは今日何を食べましたか⇒事実
②朝ごはんは何が好きですか⇒好み=感覚、感情
③朝ごはんはいつも何食べますか⇒思い込み、考え、意見
質問は上記3つにカテゴリーされます。
注意すべきなのが、“いつも”や“普段”などがついた質問も事実質問ではないということ。
上記の質問のなかで、事実質問は①だけです。
なぜ事実質問だけをするべきなのか
都合のいい原因分析
わたしたちは自分自身の問題の原因を分析する場合、自分の都合のいいように解釈したがります。
つまりポジティブな出来事に関してはそれを内的要因に求めて。
ネガティブな出来事については外部環境や他者などの外部要因のせいにしたがる傾向があります。
これらは私たちに元々備わっている自己防衛システムである。
よって、なぜですか?どうしてですか?と問われると、自分なりに都合よく解釈された原因分析を、もしくは事前に用意された言い訳を答えてしまうのです。
Mのコミュニケーションの罠
次にMのコミュニケーションの罠というものを紹介します。
机に下記のような文字のような数字のような図形のようなものが置いてあります。
Aの位置に座っている人がこれは何ですか?と尋ねると、それぞれこう答えました。
右側の人「数字の3でしょうか」
左側の人「アルファベットのEだと思います」
正面右側の人「アルファベットのWですね」
正面左側の人「いや、これはアルファベットのMではないでしょうか」
ここで起きていることは以下の通り。
正面左側の人が、Aの位置から見たらこう見えるであろうという答えを
自分の答えにして回答しているということ。
これをMのコミュニケーションの罠といいます。
開発の現場で起きていること
この2つの現象が開発の現場で頻発しているのです。
外部者が、感覚や思い込みを尋ねる質問をします。
回答者は、問題の当事者が自分なりに解釈した思い込みや考えを、外部者に合わせて外部者が期待することを答える。
これが起きているのです。
これでは、いつまでたっても現実の課題に辿り着くことはできません。
だから、開発の現場で事実質問が求められるのです。
事実質問のメリット
事実質問はさらなる特徴があります。
『気づきを促し、オーナシップを引き出す』
事実質問の受け手になって実感することでもあり、また聞き手が意識する必要があることですが、事実質問を続けていくと『受け手に考えさせるのではなく思い出させる』という行為に近くなってきます。
前述のように、人は自分の都合のいいように記憶し、自分の都合のいいことだけを思い出す傾向があります。あるいは、いつも決まったパターンでものごとを思い出します。
事実質問で聞かれると、自分なりの過去の解釈ではなく、事実に基づく回答を用意します。
簡単な事実質問の連続は、そのパターンを破ることに一役買うのです。
そこで受け手は違うパターンで思い出す。それが、気づきを促す。
そして、この自分自身で気づくことがオーナーシップを引き出します。
言い換えると自分自身で気づかないとオーナーシップは形成されません。
参加型開発の理念とされるのが当事者(開発を受ける側)が主体性をもってプロジェクト関わること(もしくはプロジェクトを進めていくこと)。
しかし、当事者の主体性がなく、形だけの参加型開発が多くみられます。
”現実はこうだからこれが問題、そのためにはこの課題をクリアする必要がある”、と自分自身で気づく。
それによって、オーナーシップが引き出される。そのプロジェクトが自分ごととなる。
これが事実質問のメリットです。
次回メタファシリテーション手法の手順と練習方法を紹介します。
それでは。
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