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クリスチャニア訪問―異物か、先駆者か
デンマーク王宮の目と鼻の先、そこにあるのは、異質極まりないクリスチャニアである。
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70年代に、軍の跡地をヒッピーたちが占拠して自治・独立を宣言した。その後50年たった今でも、周りの地区のような開発もされず、一応自治を保っている。
コペンハーゲンに来るまで、こんな場所が存在するとは全く知らなかった。アマリエンボー宮殿から海を渡ってすぐのところにこんなところがあるというのは、想像しにくいことである。東京で言えば築地のあたりが自治をしており、その中では堂々と大麻がやり取りされ、車も入れず、ヒッピーたちがハッピーに暮らしているという感じか。
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常駐する警官もいないので、法律が本当に守られるのかもわからない。実のところ、クリスチャニアには独自の「法」がある。暴力禁止、犬にリードをつけること禁止、武器禁止、走ること禁止などである。
驚くべきなのは、クリスチャニアの中は非常に治安がいいということである。なぜなのか。皆ヒッピーとしてピースフルな人生を生きているということなのだろうか。
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時間がゆっくりと流れ、「コペンハーゲン」とは明らかに違う。いや、これも「コペンハーゲン」の一部なのか。
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クリスチャニアを一周散歩してみる。人々は思い思いの小さな一軒家で暮らしているようだ。
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ルール通り、犬はリードにつながれていない。放し飼いだ。しかし、犬ですら穏やかで、吠える犬は一匹も見なかった。
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歩いていると、チベット仏教の塔などもあった。
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Morgenstedetというベジタリアン料理店で昼食とする。Baked Plateというのを頼んだ。
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赤豆とポテトのスライス、芽キャベツ、ナッツ、ズッキーニなどが入ったラタトゥイユ風の料理。とてもおいしくて、これだけおいしければベジタリアン生活も苦にならないだろうと感じた。また、フムスと人参が合うことにもびっくり。非常に硬くて噛み応えのある豆腐ミートも、どうやって作るのだろう。
20dkkのコインを会計時に落とし、ついぞ見つからなかったが、おいしかったのでチップとしよう。
大麻合法化を訴えるアートギャラリーでシールを買い、「You are now entering the EU」という門を通ってクリスチャニアを後にする。非常に刺激的で興味深い体験だった。
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大麻は試さなかったが、クリスチャニア訪問の体験それ自体がまさにトリップであった。
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クリスチャニアは、言ってみれば「異物」であり、デンマーク政治においてもしばしば争点になると考えられる。しかし、コペンハーゲン市民のほとんどはこのヒッピー自治区に対して良い印象を持っており、誇りに思う人も多いという。
実際、この地区が発揮するクリエイティビティはデンマーク全体に大きな影響を与えている。例えば、オーガニックやリサイクルのムーブメントはここから始まったそうだし、コペンハーゲンでは石を投げればクリスチャニアバイクに当たる。
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何より、この地区が体現する自由の精神は、デンマーク人の根底にある価値観につながっているのだろう。また、「異物」の存在が許容される寛容さにこそ、現代デンマークの競争力の根源があるのかもしれない。
思えばコペンハーゲン1日目、街にホームレスが全く見られないことに驚いた。高い税負担と充実した社会保障で、SDGsが標榜する「誰一人取り残さない社会」を地で行く北欧型福祉国家の在り方は、近年広く知られるようになり、日本でも注目されている。労働時間は日本と比べて圧倒的に短いにもかかわらず、その平均賃金は日本よりはるかに高い。デジタル社会の到来にも迅速に対応し、変化にも強い。幸福度ランキングでは常に上位にある。
デンマークのそういった現状には、様々な要因が複雑に関わっていることは確かだ。だから、日本のあらゆる課題に対峙するとき、デンマークの真似をすることは万能薬とはなり得ない。
だが、デンマーク社会の寛容さや確固たる個人の自由、そしてその基盤の上に立つ透明性の高い民主主義は、デンマークの社会・経済の強さの一因だと言えるのではないだろうか。
そうであるとするならば、日本の社会もそこから学べる事があるはずだ。少子化や人材の海外流出、日本の国際競争力の低下といった問題を考えるとき、経済状況や政策の成否だけでなく、社会の根底にある価値観にも目を向けることが重要なのではないだろうか。
クリスチャニアを後にして、コペンハーゲンの美しい街並みを歩きながら、そんなことを考えていた。
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