初作品で即完売→全国のドンキで販売中!『フリマアプリのボードゲーム』の作り方を公開! -着想から販売までの全て-
ボードゲームって素人でも作れちゃうんですね…!
「自分たちでも作れた」ということに今でも驚いています!
はじめまして! @daicche といいます。
今年(2019年)、友人と一緒にボードゲームを作り、量産・完売しました。今では全国のドン・キホーテやAmazonなどで販売しています。これらは全て初めての経験なのですが、この経験が「老後になってもずっと覚えているだろうな」と思えるほど楽しかったのです。この楽しさを多くの人に知ってもらいたい!ということで、制作過程を公開することにしました!
どんなボードゲームを作ったか
今回ボードゲームの題材にしたのは『フリマアプリ』。メルカリやラクマなどの、あのフリマアプリです。ちなみに、私は株式会社メルカリに勤めていますが、今回の活動は所属会社とは関係ありません!
プレイヤー同士でモノを売買します。何を買うか決めたり、値付けや値段交渉をしたりしながら「人生を楽しむ」というコンセプトです。
パッケージデザイン
『お金は大事。でも人生は、それだけじゃない。』
人生ゲームのような「お金を貯めたら勝ち」ではなく、モノを「買って使って売る」ことで、人生が豊かになるという考え方を大事にしました。全30種類ある『モノカード』にはそれぞれ【Enjoy Point】というポイントがあり、モノカードを『使用』すると、【Enjoy Point】が貯まります。このポイントを一番多く貯めたプレイヤーが勝ちというルールです。シンプルなルールですが、戦略が問われるゲームになっています。
モノカードの例。私の推しカード はにわ 🌵と DJテーブル 🎧
詳しいルールについては説明動画も用意しています!ボードゲームに慣れていない方にとっては説明書を読むのが大変だと感じたため用意しました。
(私自身、説明書を読むのが苦手でして。。。)
動画編集作業も初めてでしたが、友人に切り貼りと早送りだけ教えてもらい、なんとか完成しました。
ECサイトで再販してるので、もしよければサイトに遊びに来てください〜!
なぜ作ろうと思ったか
「新しい視点でフリマアプリの面白さを伝えたい」という思いが根本にありました。フリマアプリに対して抵抗のある方や、面倒くさそうだと思う方に、気軽にフリマアプリの楽しさを感じてほしかったのです。また、フリマアプリの面白さにはゲーム性があるので、ボードゲームにしたら面白いのではないか!と考えていました。ゲーム性というのは、例えば『限られたお金でいつ何を買うべきか』『どの値段で売るべきか』というものです。
制作工程の全体像
今回の工程を図解するとこんな感じです。
ボードゲーム制作を経験した今ではこのように図解できますが、作り始めた当初はどんな作業が必要になるか想像できませんでした。ボードゲームを初めて作る方にはぜひ全体像を把握してもらえると嬉しいです。何も分からず走り始めた私たちはプロジェクトの全体像を掴めずに苦しみました 😇
コンセプトメイキング
「フリマアプリの面白さを伝える」と言っても、何がどう面白いのかをまず言語化する必要があります。自分たちが考えるフリマアプリの面白さについて議論しました。
私たちが考えるフリマアプリの面白さ
✔ お金を稼ぐだけじゃない。様々なモノを使うことで人生が豊かになる
✔「誰かの要らないものは誰かの欲しいもの」
✔ 自分の値付けで販売した商品を誰かが買ってくれるという喜び
✔ 値付けや値段交渉による駆け引き
ルール設計の改善サイクル
A. ルール設計・ゲームバランス調整
メンバー間で話し合ったコンセプトをベースにし、既存の有名なボードゲームを参考にしながらルールを設計しました。たとえば「ゲームの後半ほど盛り上がる」「金額と勝利点を比例の関係にしない」などの要素は他のゲームを参考にしています。
B. プロトタイピング
最初は付箋や紙に手書きでカードを作っていました。
紙でのプロトタイピングを何度か行い、ルールがある程度固まってきたら、スプレッドシートでデータを管理し始めました。変数が多くなりがちなので削りつつ、ゲームバランスを死守するために細かな数字のチューニングを入稿ギリギリまで何度も行いました。
更に Adobe XD というプロトタイピングツールを使い、量産の効率化を行います。
Adobe XD で『モノカード』を量産している様子
グーグルスプレッドシートのデータを自動で Adobe XD に連携するプラグイン を用い、Adobe XD 上の数値をわざわざ毎回変更しなくてもよいという工夫もしました。(プラグインのバグがあり、少し苦しみました。。。)
Adobe XD で作成したデータを印刷し裁断。これでテストプレイの準備が整います。
印刷したプロトタイプで試遊している様子
よく見ると、ところどころペンで修正を加えており、
数値の調整を行いながらプレイしていることが分かります。
C. テストプレイ・ユーザーテスト
プロトタイプを作るたびにテストプレイをします。
自分たちの納得がいくまでは、メンバー内でテストプレイを行いました。
自分たちの間でルールが固まってきた頃に、まだ遊んだことのない友人にも遊んでもらいます。
友人に遊んでもらった結果、プレイ開始数分後に眠そうにしていたり(あくび祭り!)、30分経ってもゲームが全然進んでいなかったり(このゲーム何時間あれば終わるんや!)、という結果になりました。ルールが複雑すぎたのです。私たちはルールを複雑にしすぎたことを海よりも深く反省し、多くのルールを削り、かなりシンプルにしました。ルールの文章量で言うと、半分程度になります。
制作メンバー内でテストプレイした時は、慣れているからゲームをスムーズに進められていたというだけで、始めてプレイする人にとってはルールが非常に難解だったのです。自分たちが面白いと思っていたものが妄想に過ぎないと気づいたときは膝から崩れ落ちましたが、良いモノを作る為には痛みを伴うことを避けられません。泣く泣くルールを削りました。
ルール改善の為のサイクルをたくさん行いました。制作メンバー内で行うテストプレイを計10回、メンバー外の人を巻き込んで行ったユーザーテストを計4回行いました。その都度ルール変更やゲームバランスの調整などのチューニングを行っていたので、改善サイクルを14回ほど回していたことになります。
デザイン作成
ボドゲを作り始めた頃は自分たちでイラストを書こうとしていましたが、イラストを書けるメンバーがいなかったので断念。商用可のイラストやフォントを探し、現在の形に落ち着きました。知人のデザイナーにもサポートしていただきました。本当に感謝 😭
デザインの中でも重要なのが、パッケージデザイン。無名サークルのボドゲが最初に売れるための要素として、パッケージは大きな枠割を担っていると思います。パッケージデザインはメンバーのあやのが担当しました。
カードのデザインは、3D合成を行い「斜めから見たときにどう見えるか」ということもチェックしました。印刷会社に入稿してしまうと後戻りできないので、入稿前に確認できることは積極的に確認するよう意識しています。
印刷後の雰囲気を確認するための3D合成
mockup generator でググると簡単に3D合成できます
印刷発注先検討
日本にはボードゲーム専門の制作会社がいくつかあります。日本で一番有名なのは萬印堂さんだと思います。私たちも当初は萬印堂さんに発注させていただこうと、考えていました。そう、当初は。。。
不思議なことに、ボードゲーム業界には繁忙期があります。どういうことかというと、国内で一番大きなアナログゲームイベント『ゲームマーケット』が年に2回、決められた季節に開催されます。ゲームマーケットに合わせてボードゲームを作る人が多いので、ゲームマーケット前の2ヶ月間ほどはボードゲーム制作会社の繁忙期となります。
5月末にゲームマーケットがあり、萬印堂さんは3月末を発注の締切としていたのですが、私たちはその締切に間に合いませんでした。。。メンバー一同絶句です。一番有名どころの萬印堂さんに制作依頼できない。他の制作会社さんはお値段が高め。どうしよう。。。
そこで私たちがとった手段は「印刷会社に発注する」ということでした。
印刷会社に発注する場合のデメリットが大きく2つあります。1つ目は、パッケージやチップなどを別経路で手配する必要があること。2つ目は、カードやチップ・パッケージ・説明書等が集まったのち、『箱詰め』作業をしなければならない、ということです。箱詰めについて説明します。たとえば印刷会社にカード30種類100部を発注すると、『カード①が100枚重なった塊』『カード②が100枚重なった塊』・・・この塊がカード㉚まで納品されます。ただし、ウリカイ1箱に必要なモノカードはカード①, カード②・・・カード㉚が1枚ずつなので、納品された状態の塊から1枚ずつ抜いて箱に詰め直す作業が必要です。このような作業を印刷業界では丁合(ちょうあい)と呼ぶそうです。以下に図で説明します。
丁合(ちょうあい) という作業。大同印刷さんより引用 ( link )
「箱詰め作業を自分たちでやる必要がある」ということが非常に億劫でしたが、ボードゲーム制作会社の発注期限に間に合わなかった自分たちが全て悪いのです。。。この日は歯を食いしばり数時間ぶっ続けで作業しました。発注期限に間に合わせなかった過去の自分たちを呪います😇
とてもつらい
また、パッケージの制作については、パッケージを制作していらっしゃる方が Twitter で連絡してくださり、なんとか用意することができました。たくさんの人に支えられてウリカイは成り立っています…!
ボードゲーム制作会社と一般的な印刷会社に発注する場合の比較を表にまとめてみました。
発注
印刷会社は大手を選びました。納期が早くて金額が安いところを選びます。
カードの厚さや素材については、まず印刷会社にサンプルを送ってもらい、実際に手で触ることで理想の厚さや素材を決めました。
発注の数についてですが、ゲームマーケット出展にあたりどのくらいの部数を作ればいいか全く分からなかったので、twitter で聞いてみます。
「初出展者は50部売れれば上出来」というようなアドバイスを頂いたので、気合を入れて100部発注!在庫を抱えるリスクもありますが、ノリで決めました。
入稿
デザインデータを印刷会社に送る作業です。AdobeのIllustratorを用い、印刷用のフォーマットに整える必要があるのですが、チームには経験者がいません。知人のデザイナーに頼んで入稿作業のお作法を教えていただきました。
この時、カードの種類分の入稿データを作るのが非常に大変でした。ウリカイの印刷物は全てで46種類。46ファイルの入稿データを作成しました。入稿作業に慣れてないのでかなり大変です。初めてボードゲームを作る際にはもっとシンプルなゲームから作りはじめるべきだと学びました。。。
印刷物以外のコンポーネント購入
サイコロとチップをECサイトで大量購入しました。ボードゲーム制作会社さんだと、印刷物と同時にチップや駒などのコンポーネントを発注することができます。 たとえば今回購入したチップは一箱あたり40枚。100箱製造したので、4000枚のチップを購入しました。( 在庫管理が大変 😱)
プロモーション
メンバーのあやのがTwitterでの発信を積極的に行いました。彼女のこまめな発信のおかげで、ウリカイの認知度が大きく向上したと思います。ゲームマーケット当日も、多くの方から「いつもTwitter見てます。応援してます。」というお言葉を頂きました。泣きます。
販売
ゲームマーケットというイベントに出展。会場は東京ビッグサイト。2019年春の実績だと土日で来場者数 25,000人、出展ブース数は約900という国内最大のボードゲームイベントです。ちなみに来場者数もブース数も年々増加しています(↓推移グラフ)
ゲームマーケットの来場者数と出展数の推移 ( link )
年々伸びてるぜ!すごい!
一番狭いブースだったので、最終的にこのような形に。この時、思ったよりも狭かったので「次出展する時はもう少し大きいブースにしような」という約束をチーム内で交わします。
コルクボードやワイヤーネットは100均で購入
会場で宣伝するため、ショップカードも作りました。ショップカードの裏には、noteやtwitter のQRコードを掲載しています。
印刷入稿前の3D合成による見た目チェック
プロモーションの成果もあり事前予約フォーム ( google form で用意 ) から80部を予約していただきました。事前予約なので、取り置きという形です。また、当日販売分は開始7分で完売しました。
また、事前予約分の受け取り期限を15時までにしていましたが、受け取りにいらっしゃらない方が15名ほど。残った分を15時に販売開始するとtwitterで事前告知しましたが、15時には20名ほどの行列ができていました。中には14時30分頃から並んでくださるお客様もいて、メンバー一同、嬉しくて号泣。。。
また、購入してくださる方と直接お話できることが何よりも幸せでした。
再販
非常にありがたいことに、「買えなくて悲しい」「再販してほしい」という声を多く頂いたので、再販することにしました。
萬印堂さんのオフィスに直接お邪魔して相談させていただき、その場で見積もりを頂いて発注することにしました。無料相談会やってるの本当にすごいですね。。。土曜なんかは一日3~4回やってるそうです。めちゃすごい。
再販希望の声を多く頂いたため、今回は新しくECサイトを用意しました。
ECサイトを運用した際、売れるたびに梱包したり発送したりする作業が大変なので、 stores.jp さんの 倉庫サービス を使わせていただいています。
保管・梱包・発送を全て代行してもらえるので非常に便利です!めちゃすごい!
購入者の声
ウリカイを楽しんでくださっている方々のお声です!何度見ても嬉しい…!
お客様の反応はこちらでまとめています。
まとめ
ボードゲーム制作は骨の折れる作業で、一筋縄ではいきませんでした。それでも、気の知れた仲間と作るのが本当に楽しかったし、私たちのボードゲームを購入してくださったお客様が楽しんでプレイしている声を聞くと、心から作ってよかったと感じています。ボードゲームを作ってみたいと思った方はぜひチャレンジしてみてください!同じ志を持つものとして、心から応援します!
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