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放置された家の末路

家は月日の経過と共に必ず劣化はするのですが、
その劣化は急激には進みませんので、そんなに心配することはありません。

ですが、中には長年放置されてしまい、取り返しのつかない状況になっている家があります。
そうなったら、修理では済みません。


■こんな放置住宅がありました

1 水漏れが床崩壊になった

その方は、OB客様からのご紹介でご連絡くださった方で、
洗面所で水漏れが発生したので見てほしいとのご相談でした。

築10年前後とのことで比較的新しい住宅でしたので、なぜ、建てた会社ではなく他社に相談したのか分かりませんでしたが、取りあえず、緊急性が高いと思い、すぐにご訪問することになりました。

お住まいは軽量鉄骨系の某ハウスメーカーの2階建て、親世帯と子世帯の二世帯住宅とのことでした。

水漏れは子世帯の洗面脱衣室ということでしたので、
到着後、現場状況を見ていないというお母様とご一緒に不具合現場の洗面脱衣室の引戸を開けて見えたその光景に絶句してしまいました。

何と、脱衣室の床が沈んでいました。
数㎝ではなく、数十cmは沈んでいました。
洗面化粧台は大きく傾き、床もいつ抜けてもおかしくない状況に一歩も脱衣室に踏み込めませんでした。

子世帯に尋ねると、
洗面化粧台が水漏れしたそうですが、それが何と2年も前とのこと!?

2年間放置された水漏れによって、床は崩壊し、今にも崩れそうな状況にまで陥っていました。

どうやって脱衣室を利用しているのか?
浴室への出入りはしているのか?
と思いましたが、

何よりも、なぜ2年も放置してしまったのか?

とお尋ねしたところ、
最初は余りに気にしていなかったとのことでした。

しかし、何の処置もしていない水漏れによって住宅は徐々に蝕まれ、
床が崩壊していったのですが、それでも何とか使えていたからそのままにしていたが、いよいよ床がグラグラしだしたので相談したとのことでした。

水に対して極端に弱い鉄骨造で2年も水漏れを放置するなど、
建築関係者でなくとも考えられないような暴挙だと思いましたが、
もはや、修繕でどうにかなるレベルではなく、洗面脱衣室、浴室、その他隣接する全ての空間、外壁、躯体、などの大規模改修か、
もしくは、建替えレベルの損傷がある可能性すらありそうでした。

築浅であることもあり、そこまでは出来ないとのことでしたので、
であれば、建てたハウスメーカーに相談するしかないのではないか、とお話ししました。

どう見てもちょっとした修繕でどうにかなるレベルではありませんでした。

あの時、
初めてその光景をご覧になったお母様の青ざめた表情が忘れられません。
私がいたので、その場での家族会議にはなりませんでしたが、
私が帰った後にどんな会話が交わされたかは分かりません。

2 屋根瓦が割れ放題になった

2011年に発生した東日本大震災では、
埼玉県内でも瓦が落下するなどの被害が多発しました。

弊社でも、地元で何件もの屋根修繕を行いました。
その中の1軒のことですが、
当時は瓦業者もてんてこ舞い、瓦もすぐには納入されない状況で、私どもも応急処置をして回るのが精一杯でした。

そこのお宅の被害状況は、
地上からも屋根瓦や漆喰が落下してしまっているのが見えるほどの被害が出ていたので、応急処置として、瓦が落ちた箇所に庭に保管されていた予備の瓦を仮に並べておくことにしました。

しかし、築50~60年以上経過している住宅、かつ、一度も屋根を葺き替えていないとのことで、瓦はボロボロの状態でした。
漆喰すら数十年単位で何も手入れしていないようでした。

そのため、
屋根に上って一歩踏みだすたびに、足元の瓦が割れていき、交換する箇所が増えていくような状況でした。

とてもではないですが、
応急処置でどうにかなるレベルではありませんでした。

震災とは関係なく、元々、瓦の割れ、ズレは数十カ所、漆喰が完全にない箇所も多数あり、雨漏りし放題、動物も入り放題でした。

出来る限りの処置はしたものの、これ以上の修繕は不可能と判断し、築年数を考慮して建て替えをお勧めしましたが、その後もそのままお住まいのようです。

3 バルコニーがプールになった

バルコニーの床面は緩いながらも勾配が付いており、ドレンと呼ばれる穴から雨樋などを通って地上まで雨水を排出しています。

バルコニーの不具合として一番良くあるのが、
FRP防水などの定期メンテナンスを怠ったが故の雨漏りですが、
ここでご紹介する事例は長年にわたり放置してしまった結果、
バルコニーが強めの雨のたびにプールになってしまうという事例です。

不具合の初めの要因は何だったのかは分かりませんが、
おそらく、バルコニーの掃除を怠り、ドレンが詰まってしまったことが発端だとは思います。

バルコニーに長期間水が溜まった状態が何年も続いた結果、早くに防水性能が無くなってしまい、バルコニーの床下地にまで水が浸透し、大きく変形してしまうに至ったものと思われます。

その結果、床下地が大きく反り返り、バルコニー床の勾配が反対になってしまい、ドレンに水が集まらないような状況になり、より水が溜まりやすいバルコニープールが出来上がりました。

そこまでいってからのご相談でしたので、
現場を確認した際にはフカフカと動くバルコニーの床に絶句しました。

しかも、バルコニーの下には部屋がありましたので、これはすぐにでも対処しないと、大変なことになってしまうと判断し、改修の必要性をお話ししましたが、大規模な工事は望んでいないとのことで、保留となりました。

この時点で取り返しのつかない状況でしたが、もう一段階進めば、修繕ではなく、建替えに発展するほどの悪い状況でした。

願わくば、弊社以外の会社でもいいので、きちんと修繕されていることを期待しています。

■保留するにしても、また期間を開けすぎない方が良いです

それまでだって長年放置してきたのに、また、更に放置してしまえば、状況は更に悪化するだけです。

いくらプロでも、何でも直せる訳ではありませんし、プロが絶句する状況は簡単には直りません。

例え、直したとしても、建替えた方が良かったと思うほどの大規模で高額な工事が必要になってしまうかもしれません。

誰かに有償で委託でもしていない限りは、
自宅の維持管理は所有者様によってのみ実施されますので、あまり、放置し過ぎないようしてください。

■最後までお読みいただきありがとうございます