現場がきれいな方が良い理由
「現場をきれいにしよう」
というのは、規模の大小問わず、日本の建築会社であれば概ねそのような認識で現場に臨んでいるのではないかと思います。
中には、スローガンのように現場にペタペタこれでもかと張り付けている所もありますが、実際にそれが実施されているどうかについては、そうした張り紙がどこまで効果があるかは甚だ疑問ではあります。
■なぜ現場がきれいな方が良いのか
1 現場は誰のものかを考える
現場で作業するのは、お施主様から依頼を受けて工事を受注した建設会社の関係者たちですが、その土地、その建物はお施主様の所有されるものです。
完成して引き渡す際にはきれいな状態にする当然のことですので、
それはどこでもいっしょだと思いますが、
その過程がどうかは様々な考えがあると思います。
ですから、
私どもの考えでは、
いつお施主様が現場に来ていただいても不快に思わない、
または、現場見学が出来る、くらいの状態を保つことを理想としています。
もちろん、作業内容・状況によっては現場の状況は様々です。
また、建設現場ですので、工事期間中は日常空間のような清潔さを求められても実現はほぼ不可能だということはどうかご理解ください。
2 施工ミスが減る
現場が汚れている、物が煩雑に置かれている状況ですと、
現場での作業がしづらくなります。
また、目が行き届きづらくなります。
そうなると、施工品質がどうしても低下してしまいます。
施工者だけではなく、現場を監督する際にも見づらく、確認しづらくなりますので、見落としなどが生じやすくなってしまいます。
3 効率が悪くなる
現場の掃除をしない方は
「掃除している時間があれば現場がもっと進む」
と考えていることが多いと思います。
確かに、
掃除にも時間も労力も掛かりますので、間違ってはいないと思いますが、
現場が片付くことで、現場内の移動もしづらくなりますし、
作業の効率は間違いなく上がりますので、
結果的には、
片付いている現場の方がスピードも品質も高くなると私は考えています。
日常生活とも近いですが、
物が溢れているお宅ですと、必要な物がどこにあるか瞬時に分からなくて探し回ることがあると思いますが、場合によっては見つけることが出来ずに、新たに購入することになってしまうと思います。
時間もお金もロスしますよね。
現場でも、片付いていない現場では、必要な道具を探し回ったり、材料をあちこち移動させなければならなかったり、自分では理解していない作業以外の時間が意外と多く発生しています。
「現場を見ればその人の腕が分かる」
と若いうちに先輩方に良く言われたものです。
かと言って、掃除ばかりしていても作業は進まないのは確かなので、作業が区切りがつく度に掃除をする、などの自分なりにペースを決めておくのが良いと思っています。
■現場のきれいさを気にしているのプロだけ?
1 汚い現場を見ても何も感じていないようでした
とある他社の現場の近くを通った際に、
あまりの現場の汚さに衝撃を受けてしまい、失礼とは思いましたが、立ち止まってまじまじと見てしまいました。
すると、お施主様?購入予定者様?のようなご夫婦がお越しになり、おもむろに現場をスマートフォンで撮影し始めました。
きっと、
あまりの現場の汚さに施工会社に文句の一つでも言おう
ということなのかとドキドキして見ていましたが、
どうやら、現場が進んでいることにのみ関心があったようで、
「現場が進んでいるね」
とお二人で満足そうにしていました。
施工中の建物の手前のお庭部分に乱雑に山積みにされたゴミたち
汚れに汚れた仮設トイレ
グチャグチャな地面と土に汚れた靴跡で汚れた道路
など、それらは全く目に入っていないようでした。
ここに住む予定の方が気にならないのであれば、私などが気にする必要は全くありませんので、大ごとにならなくて良かったと思いながらその場を立ち去りました。
こうしたことが一般的だとすれば、現場をきれいにしなくてもいいかと思う所も増えていくかもしれませんね。
現場のきれいさよりもコストカットですかね?
2 そんなことやっている時間はない
コストカットの最も簡単な方法は人件費を削減することです。
施工者の日当を減らし、施工日数を減らせば、削減できます。
そのため、工期短縮は至上命題となっており、建築業界ではとにかくスピードが重視されています。
中には、スピードを競うようなことまでしているそうです。
そんな中では、掃除など最も不要な時間と捉えられても無理はありません。
「不要と言うよりも、やっている時間が無い」
と言う方が正確かもしれません。
その内に、そのことにも慣れてしまい、多少時間があったとしても掃除なんてしない、自分たちの仕事ではない、となっていくのかもしれません。
3 みんなが何とも感じなくなってくる
消費者の方々もあまり気にしなくなっているような印象もありますが、
現場に関わるプロの側も気にしなくなっていると感じています。
冒頭にも書きましたが、これでもかと現場をきれいにすることをスローガンとして現場のあちこちに張っているような現場がとんでもなく汚いということなど良くあることです。
これは、普段現場で作業している方々が何も感じなくなっているということだと思います。
慣れたのかもしれませんし、
こんなものかと諦めてしまったのかもしれません。
先程とは違う現場で、
現場にエコキュートが搬入されているのを見かけました。
そのエコキュートは現場の屋外に台も何も置かずに直接地面に横たわった状態で置かれていました。
失礼ですが、
最初に見た時は、冷蔵庫か何かの不法投棄かと思ってしまうくらい雑に置かれており、数日後に見た時にもそのままの状態で置かれていたことに重ねて驚いた、ということがありました。
エコキュートは高価な設備機器ですし、精密機器でもあります。
そうした設備機器を雑に置く方もですが、そのような状態を許す建設会社・・・、私の感覚ではありえない光景でしたので、今でも鮮明に覚えています。
もしかしたら、私が気にし過ぎで、そうしたことは現代では普通のことなのかもしれませんが、私は絶対にそんな現場には関わりたくないと思います。
4 現場は私たちの職場です
弊社には事務所も作業場もありますが、
お客様からご依頼を受けて作業する現場も職場、仕事場です。
俳優さんや歌手さんで言うところの舞台のようなもの、
と言ったら言い過ぎかもしれませんが、
そこで仕事をするのは間違いがありませんので、
私たちは自分が仕事をする環境は整えておきたいということは今後も変わらないです。
私は現場はきれいな方がいいです。