
勘違いしていませんか~国産信仰~
最近では、随分と減ってきたとは思いますが、
「日本産のものが最高!」
「国産が一番!」
「外国産は危ない!」
と言うことは、私にはもはや信仰染みた考えではないかと考えています。
技術力の日本ではない
伝統技術を継承し、
世界屈指の技術力を有する国・・・日本・・・
おそらく、
昭和の頃の日本のことを表しているのではないでしょうか?
はっぱをかける意味で申し上げますと、
ご承知の通り、
様々な分野で世界中の国々に後れを取っているのは明白です。
IT、自動車、エネルギー、宇宙・・・
先進技術と呼ばれる技術は日本以外が世界をリードしています。
建築ではどうでしょうか?
建築は耐震技術ではまだ優位、省エネルギーは後進国
地震の多い日本では、耐震などの災害対策について世界トップレベルの技術と言っても過言ではないでしょうが、
建築分野の省エネルギーについては、
欧州などからは大幅に遅れを取っています。
近年は、何とか追いつこう、
ということで基準を引き上げに動いておりますが、
将来的な人口減、空き家問題、など住宅を取り巻く環境の未来が明るくないことを考えると、なかなか好転していかないような予感もしております。
食料品の安全性は高いと言われていますが
国産食品は輸入食材と比べると、安全性が高いと言われておりますが、
価格面では圧倒的に輸入食品に太刀打ちできません。
農業、漁業、畜産業などは
後継者不足などにより、減ることはあっても、食料自給率を大幅に増やすような事にはなかなかならないのではないかと思います。
建築は林業も衰退
一方で、建築業界で関わりの大きい林業も衰退の一途を辿っています。
新築着工戸数が減少していますので、確かに需要が減少しているということもありますが、やはり、安価な輸入木材に押され、国産材の需要が減少したことが大きかったと思われます。
しかも、それは随分前のお話し、
もはや、多くの山が荒れ、
良質な木材が生産される山は随分と減ってしまったそうです。
良質な国産木材は存在していますが、
供給量は少なく、かつ、高価、
新型コロナの影響で輸入材の供給がストップして国産材にシフトしたところも多かったと思いますが、
近年の木材の質の低下が国産へのシフトも影響しているのではないかと考えてしまいます。
正直に申しますと、
木材については、
外国産であるから質が悪く、国産であるから質が高い、
と言う印象は最近では一切感じていません。
樹種によっては、
極寒の地域で生育した木材の方が質が高い、
ことが多く、外国産の木材の方が品質が高いことも珍しくありません。
技術者が激減している
技術、素材、の低下と共に、
今後ますます深刻化する技術者不足、
現在、建築業界で腕を振るっている60代以上の方々が引退した後には、
AIなり、ロボットなり、が取って代わってくれなければ、
今以上に国外の方々のお力をお借りするしかありません。
建築では職人が足りません
日本人だけに期待をしていては到底足りません。
実際に、言語、コミュニケーション、風習、
などの問題はあるでしょうが、技術だけで見れば、
日本人の男性と比べて、外国生まれの方々が劣っているということは全くなく、むしろ、勤勉な方々も多いと聞きます。
また、女性の参入も積極的にするなど、
業界全体の裾野を広くするために、職場環境、現場環境、作業方法などを見直す必要があります。
国産でなければ嫌だという固定概念
このように、昭和、平成、令和と時代が移り変わると共に、
日本の建築の状況も大きく変革しました。
建築に関しては言えば、
国産材+日本人技術者、と言う組み合わせこそが最高である、
と言うことは一切なく、適材適所が昔とは変わってきた
と言うことをご理解いただきたいと思います。
まだ、私どものような町の小さな工務店では、
長い付き合いのある地元の業者だけで仕事をさせていただいておりますが、きっと近い将来には、いろんな言語が飛び交う現場に私どもが係わる機会も増えると考えています。
ですから、皆さまにも、固定概念は少しずつ和らげていただき、
出来上がる建築物の品質で評価していただけるようにお願いしたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。