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WOWOWドラマ•ペンションメッツァ

春馬くんのことがあってからミーハーだった私が、
ドラマやテレビをあまり見られなくなって
たまにお見かけする若手芸能人が知らない人だらけになっていて、そんなことで時間の流れを感じてしまう日々だ。

そんな私の最近は、たまにアマゾンプライムを見ていてWOWOWドラマのペンションメッツァ
とても好きになった。
オンエアは、2021年1月だそうだから
毎日自分がどう過ごしていたのかわからないほどの頃だったのだと思う。

あの頃、人と会えない時期を過ごして
少しずつ世の中が動き始めた頃。
少しでも傷ついた世界を癒したくて
人と人が出会って話すことが
やっぱりとっても大事なことなんだと
そんなことを伝えたいドラマなんだと聞いた。

小林聡美さんのテンコさんがひとりでペンションをしている。その様子は1人で切り盛りしているっていう感じじゃなくて、自然体で豊かな森の中でひとりでのんびり暮らしている。そんな感じだ。

彼女の家は大きな家のなかに木がまるまま一本立っているような大きな柱がリビングにある家で、そこで彼女はシンプルに暮らしていて、彼女のもとへいろんな想いを抱えた人たちが会いに来る。

そしてそのペンションの客室はたったの一部屋なのでお客さまは一組。
豊かな森と彼女の暮らしや会話から、
自分にとっての大事なことを見つけていっているようだ。

ペンションメッツァのロケ地は長野だそうだから
周りの溢れるほどの豊かな森とその緑が目に沁みるように美しくてそれだけでも心が平穏になれる。

物語は1話完結でペンションメッツァにお客さまがやってきて、そのお客さまと森に暮らすテンコさんとの
2人で過ごす一回に25分くらいのショートストーリーだ。

オンエア当時は4話目のゲストが
事故を起こして放送できなくなってしまったので、
その回を抜いて全6話で放送したらしい。
アマゾンプライムではその4話目も収録して
全7話になっていた。

小林聡美さんが出ているドラマは、かもめ食堂パンとスープと猫日和や古くはすいかのように彼女がいるから独特の不思議な世界観のドラマになるのか、
あの世界観を作りたくて小林聡美さんが登場しているのか、たぶん両方なんだろうけれど、
ちょっと変わった不思議なドラマになる。
そしてそのドラマには、もたいまさこさんはじめ
不思議な住人が登場してストーリーも
変わった展開をしていくのだ。
見ている人の心と記憶にどこまでも
その印象と存在感を残していくようなドラマだ。

そして今回のペンションメッツァ
やはり日本のどこかに、こんな森にあるペンションやテンコさんの小林聡美さんが存在しているんだろうなという気持ちにさせてくれるドラマなのだ。

7回のドラマはそれぞれその回のお客さまとの
心にふれるエピソードがあるのだけれど、
私の中に特に印象的で好きだった回があった。
役所広司さんが出た1話目の『つねき』とテンコさんの『むかしの男』であるコマちゃんがペンションに訪ねてくる5話目だった。

つねき

1話目のつねきだった役所広司さんは最高だった。
私の中では映画パーフェクトデイズのトイレ掃除をしている渋い彼のイメージが未だ色濃い状態であって、今回の彼の役どころ、常木はマンションの庭でお掃除をしているテンコさんの前に突然に現れる。
そしてどこか彼は奇妙なのだ。
夕食に出て来たハンバーグを知らなくて、
「肉なのにこれは柔らかいんですね」と感心してみせたり、庭掃除をしているテンコさんに
じっとしているのが苦痛なので何か手伝いたいと申し出て草むしりを手伝ってくれるのだけれど
なぜか犬の声に怯えていたり。
軽妙でどこか面白みのある愛すべきキャラクターを演じる存在感はさすがの彼だった。

朝ごはんの用意をしてお部屋に声をかけたテンコさんは、常木がいつの間にかいなくなっていることに気づく。部屋は綺麗に掃除されていて、ベッドのうえには生えていると噂されていた「マツタケ」がそっと置かれていた。
ベランダで宿代がわりの松茸をしちりん(七輪)で炙って焼いているテンコさんがいて面白かった。
テンコさんはツネキが、もしかしたらキツネだったことを気づいていたのかしら。

むかしのおとこ

そして5話目は、光石研さん演じるコマちゃんが
ペンションの玄関に花束を持って現れる。
イケてる男子だったむかしと違って作務衣姿で現れたコマちゃんに驚いたテンコさんだったけれど、もちろん喜んで招き入れる。
ふたりは若い頃に行き違いがあって別れた様子だったけれど、当時の懐かしい話やそのときに一緒に歌った歌を歌い、そしてコマちゃんが淹れてくれたお得意のコーヒーをふたりで向かいあって飲む。

コマちゃんの現在の様子を聞いてもあまり話さず、
そしてコマちゃんの会話はなぜかみんな過去形なのだ。「何回も会いに来ようと思ってたんだけど迷惑だと思って来られなかった。来るのが遅かったね」というコマちゃんにテンコさんがうなづく。

そしてコマちゃんは森の住人のもたいまさこさんと
目が合ったりするのだ。
もたいまさこさんは、森に住んでいて物語のスパイスとしていろんな回で登場するのだけど、
誰とも話さずセリフもない。ただそこに現れているだけで誰にも姿も見えない。けれどたまに宅配配達の車の助手席にしれっと乗っていたりするのだ。

やがてテンコさんとコマちゃんはふたりで森にお散歩に出る。「そろそろ帰るわ」というコマちゃんの姿が、いつのまにかテンコさんの視界から消えていた。
そしてコマちゃんは、テンコさんに
「いつまでも待ってる」と声をかけていくのだ。

きっとコマちゃんは、もうこの世にはいない
あの世の人なのだろうなと、なんとなく思う。
コマちゃんの現在はテンコさんには多くは語らないけれど、きっと機嫌良く生きているのだと思う。
そして今までに出会って来たいろんな人を懐かしく、見守っているのだと思う。

あの世はきっとコマちゃんがふっと現れて消えたように案外近くにある気がする。
そして思うより身近な気がして仕方がないのだ。

やがてテンコさんはペンションメッツァを出て、新しい生活をすることを決めたようだが、他の回に出ていた古い友人の娘さんにペンションを続けてもらうように頼んだようだった。
テンコさんのペンションに泊まってみたかったな。
不思議な癒されたドラマだった。


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