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ドラマ『僕のいた時間』後編•僕の隣りにいてください
前編からの続きも読んでいただけると、とても嬉しいです。
✳︎*✳︎✳︎
介護士になった恵は車椅子になった拓人と再会します。
拓人がALS患者になったことで彼が自ら、別れを選択したこと。
そして自分が一生の職業に選んだ介護士は、なるべくしてなったのだと理解した恵。
拓人の友人のまもちゃんは、もし可能ならば、
恵に介護士であって友人として拓人の生活のサポートを手伝って欲しいと頼みました。
まもちゃんだって恵が拓人の先輩のシゲ先輩(斉藤工さん)と付き合っていて、今では結婚する予定であることを知らないわけではありません。
シゲ先輩は、まだ拓人と恵が付き合っていた頃から
恵のことが気になっていました。
2人が別れてしまい、ふとしたことで拓人の病気を知ったシゲ先輩は、ふたりが別れた理由を知ったうえで恵には黙って結婚するつもりだったのです。
シゲ先輩にとって拓人は気になる後輩でした。
なぜか拓人には負けたくないと思わせる後輩でもあったのです。
出会うべくして出会った拓人と恵は、周囲の思惑から離れたところで、どうしょうもなくやはり惹かれあっていました。自分の将来と恵の将来を考えると絶望的になる拓人は、どうしても恵のことが大好きなのに、自分の気持ちに蓋をするしかありませんでした。
拓人の生活のサポートをしていた恵はある日、
思い出の海に車椅子の拓人を連れ出して、
そして「私の望み通りにしてもいい?」と
聞いてそっと彼を抱きしめるのでした。
それは拓人が蓋をした恵への想いそのものでした。
恵は結婚を約束したシゲ先輩にも、苦労する拓人との付き合いに反対するお母さんにも、傷つけているのはわかっていても拓人と別れることは、もはや出来ませんでした。
恵の想いをぶつけられた拓人は、我慢してずっと
諦めていた恵にそっと「僕の隣にいてください。」
と頼むのです。
やっと想いが届いた拓人。
でも拓人に残された時間はどんどん無くなっているのでした。
ALSは、神経の病気なので意識はどこまでも鮮明だそうです。
ただ筋肉を動かす全ての回路が遮断?していくので身体中の筋肉が動かせなくなって行くそうです。最終的には瞼や呼吸筋でさえも。
その残された時間の中でいつも今の自分が出来ることを見つけて自分の夢を作る拓人。
最大な協力者を得た拓人は恵と暮らし始めることにします。
拓人の時間がどれぐらい残されているかわからない
恵は一分一秒が惜しいと考えてしまうのでした。
拓人のそばで眠る恵は眠っている彼の呼吸が時折り
止まっていることに気がつきます。
拓人の呼吸筋が衰えてきて、自発呼吸の力が落ちていることに気がつくのです。
自分で呼吸できないと気管切開をして、人工呼吸にしなければいけなくなります。
そうなると命の危険は無くなりますが、もはや一生呼吸器は手放せなくなります。
動かない体でベッドのうえで死ぬまで縛り付けられてしまうことになるのです。
拓人は、そんな状態で生きて行くことに意味があるのだろうかと葛藤しています。
死ぬことよりも生きることのほうが辛い現実が、
ずっと続いて行くのです。
拓人の友人のALS患者さんが選んだように、
自発呼吸ができないのなら人工呼吸器をつける選択を拒否したまま、息ができなくなり亡くなる人もいます。拓人も将来的には、選択しなければいけないことでした。
彼は呼吸器をつけないつもりでした。
けれど拓人の周りの家族も恵もどんな拓人であろうと
生きて欲しいと願っているのでした。
大きな病を得た拓人でしたが、ずっと望んでいた
家族が互いの気持ちを大事にして向き合うこと。
自分の気持ちを受け止めてくれる最愛の人に出会うこと。拓人の夢は叶っていたのでした。
確かに拓人の時間は過酷でしたが、心と心を通わせてその一瞬一秒が、かけがえのない生きていることの証だったのです。
風が吹いていること。日差しが輝いていること。
緑の木々が風に揺れていること。
海が煌めいていること。
公園で吹くシャボン玉がはじけながら空を飛んでいくこと。
ベビーカーに乗ってお散歩している赤ちゃんの笑顔が弾けていること。
その笑顔を見たお母さんの微笑みが美しいこと。
海に落ちていく周りを染めていく夕日、
まっさらな一日が始まる朝日。
森に降る春馬くんが好きだと言っていた雨の匂い。
生きていることはなんて美しかったのかと気がつかせてくれるドラマでした。
拓人が恵に貸した赤いマフラー。
ふたりが出会った頃、帰り道に送ってもらう恵が
「寒い」といえば「帰ろう」と言われるので、
別れるのが嫌で言い出せなかった言葉。
察した拓人が巻いていた自分のマフラーをほどいて
恵にそっと巻いてあげたマフラー。
別れがあって再会があって、恵のそばにずっと置いてあった返しそびれた拓人のマフラーは車椅子に座って
恵を待つ拓人の首元に今はそっと巻かれます。
春馬くんの白い透き通る肌に赤いマフラーがとても
美しく似合ってそれさえも今でも思い出します。
拓人が衰えていく様子に合わすように徐々に体重を落としていった春馬くんのウェイトは大きく減っていました。
学校での講演を頼まれた拓人の姿は痛々しいほど痩せています。
長い長いセリフを最後の集中力で覚えた
車椅子に座って話す様子は、もはや拓人にしか見えません。
いつも全身全霊で役と向き合っていた春馬くんは、
このドラマでもまっすぐに命と向き合っています。
この世界に春馬くんはもういないけれど、
春馬くんが向き合った作品がこんなに鮮明に残って
これから何年も人の心に残っていくのです。
命の重みを知る人でした。
あの時になにがあったのか、ほんとうの気持ちはどうだったのか、わからないことだらけですが、
私は春馬くんは生きたかったと思っています。
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