仮面ライダー展回顧録その3…令和の世も戦い続けるヒーロー
最新作ガッチャードの1話を観た直後、これを書いています。
ラストの令和編です。
しかし令和ライダーといっても平成から地続きですので、分ける意味がどれほどあるのか、は疑問ですね。
かの感染症の影響を受けたゼロワン
令和をそのまま名前にしたような1作目、ゼロワンですが4年前、東映特撮ファンクラブの募集でエキストラとして撮影に参加した思い出があります。
人間とヒューマギアの共存を目指す飛電或人の戦いを描いたゼロワンは、メカニカルで近未来的な設定が活かされており面白い作品でしたが、番組が折り返した頃にコロナの影響を受け、一ヶ月ほどの空白が出来ると言う憂き目に遭いました。夏の劇場版も公開されず、鉄板だったルーチンワークが崩れた作品になったんですね。結果的に映画は冬公開になりましたが、最終回後の物語としていくらか修正されたのが功を奏したのではないかと思っています。映画「REALxTIME」は本当に良かった。
低空飛行だった、剣士と悪魔
2020年セイバー、2021年リバイスと続くわけですが、個人的にこの2作はどうにも乗れませんでしたね。
機械的な要素が強かったゼロワンに対しファンタジー路線で、「物語を紡ぐ」という御伽噺的な雰囲気で剣士の戦いを描いたセイバーですが、これが「仮面ライダー」との相性がすこぶる悪かったように感じます。キャラクターや設定がファンタジーですが舞台が基本的に現世界。登場人物は日本人名ですが思考や行動がファンタジックだったり、「どっちつかず」な印象が強かった作品です。それでも赤を基調としたセイバーのデザインや友情物のドラマ要素は悪くなかっただけに、惜しい作品でした。
続くリバイスですが、「悪魔との契約」が鍵になる家族もの、という作品でした。銭湯を経営する五十嵐家が、悪魔によって仮面ライダーの力を得て戦います。
まず、これも題材が仮面ライダーとは相容れなかったと思っています。基本的に仮面ライダーの主人公は天涯孤独であったり、戦わざるを得なくなり周囲への影響を考え孤独を望む者が多く、それが他のヒーローと異なる独自性を持っています。リバイスは三人兄妹、かつ両親とも仲良く暮らしており母親以外が全員ライダーに変身する…「らしくない」わけです。
かつて兄妹戦隊なファイブマンやゴーゴーファイブがありましたが、仮面ライダーでやるとそのヒーロー性が薄れてしまう気がします。家族がいる、それは基本的には幸福だからですね。
主人公、一輝は悪魔、バイスとの契約によって次第に記憶を失ってしまう…終盤のドラマの中心になっていたのはこれですが、近年、特撮もシビアな展開は忌避される傾向があるので、「どうせ、最後には元通りになるんだろう」とシラけてしまった部分があります。それは相棒の悪魔・バイスのキャラがあまりにも丸くなりすぎて、悪魔としては半端な印象になってしまったことも手伝っていますね。「やりたいことはわかるが、中途半端」、これがリバイスの感想でした。ギフという巨悪の存在を早くから提示していたのに、結局何と戦っているのかがボヤけてしまったのも良くなかった。
余談ですが、冬の映画で五十嵐家に新しい子供が出来た、というので本当にリバイスは個人的に「苦手な作品」になってしまいました。あんな大きな子供が三人いて、4人目を作る夫婦ってどうなのよ…というのがどうにも受け入れられなかったんですね(汗)。
SNSでもこの2作品は酷評が目立ちました。
制作環境の厳しさから問題が噴出しニュースにもなったりと、特に仮面ライダーにネガティブなイメージが付き危機的な状況だったと言えます。
立て直しにかかった、「幸せを求める」ライダー達
かつて東映の白倉氏のトークショーで聴いた話ですが、もう仮面ライダーは仮面ライダーという「業界」になってしまっており、これが大勢の人達の生活を支えてもいる、なので止めることも出来ないと伺いました。
セイバー、リバイスは商業的にも振るわなかったようで(プレバン商品が多すぎる、など手法の問題もありますが)、本来ならシリーズ終了となってもおかしくない状況ですがそれも出来ないという事情があるんでしょうね。…昭和の時代、3回も終了している訳ですが時代が違うって事です。結局、継続しながら人気回復、立て直しを図る以外にないのでしょう。
そんな中で令和4作目、ギーツが始まったのがちょうど一年前ですね。先週無事完結を迎えましたが、なんとか目的たる立て直しが叶った…かどうかはともかく、番組の人気、評判は上々だったように見受けられます。
デザイアグランプリという、怪物ジャマトから人間を守るゲーム。それに仮面ライダーとして参加し、勝者になれば自分の望みを叶えられる…という作品だったギーツは、やがてそのゲームを仕組んだ未来人達との戦いになり、「誰もが幸せになれる世界」を勝ち取り、その可能性を示して物語の幕を閉じました。陣営が複雑で目的がブレていたリバイスと違い敵は未来人、と明確化されていたのが良かったですね。「ギーツロス」というワードがTwitterのトレンドに入った程なので、その人気や盛り上がりは確かなものでした。「セイバーロス」、「リバイスロス」って聞いたことなかったですから。
これからも時代の写し鏡として
昭和がテレビの時代、平成がビデオの時代と述べましたが、令和は配信の時代といっていいと思います。映像作品の視聴方法はどんどん多様化し、しかし表現に対する規制は強くなり番組制作は厳しく、窮屈になってきていると言います。過去の作品の再放送に注釈が入るのはもはや常です。
そんな中で50年以上続いてきた仮面ライダー、成功、失敗を繰り返しでもその時の少年少女に「力は使う者次第」を伝え続けてきた日本が誇れるコンテンツであることは間違いありません。
もはや止まることが出来ないのであれば、朽ち果てるまで戦ってみろ!という気持ちでこれからも追っていきたいと思います。
なんだかんだ言っても、「変身!」と叫ぶ文化は尊いものですから。