スイートプリキュア♪感想…「浄化」と「修復」の尊さ
先日、「スイートプリキュア♪」全48話&劇場版を鑑賞しました。
映画の感想はすぐに書きましたが、TV版の感想プラス「プリキュアへの印象」を書いていきたいと思います。
12年前のメッセージ
このスイプリ、放送は2011年で世の中的には災害に見舞われ日本全体が暗かった時期です。そのことが作品にも少なからず影響したとWikipediaに書いてましたが、そこはメインターゲットが女児のアニメ、最終的には希望を持たせてくれるものになっていました。
特に近年、ここ三作だと「ひろプリ」「デパプリ」「トロプリ」とどれも比較的明るい作風のものが続いていますが、これらと比較するとスイプリは重いですね。特に敵側が、定番ではありますが響、奏の友情を壊そうとする作戦を繰り返してきたり、人質を取るような策を使ったり、そしてそれらがほぼ成功してしまう流れでプリキュアは幾度となく窮地に追いやられます。似たようなやり方に引っかかるなよ、と言いたくなりますがその辺は純粋な中学生って事なのでしょうか。
8話でセイレーンが偽りの友人を演じる作戦がありましたが、ここで少し揺れる描写があったりするのは良いですね。その伏線が回収されるのは少し後になりますが。
こうして、とことん痛めつけられてしまう主人公達の印象が強い作品になったのは、「悲しみから目を逸らさない」というメッセージだな、と感じました。これは2011年であるがゆえのものかと思いますが、その為に主役二人、響と奏のドラマがやや薄味になっている感が残念でもありました。奏のミーハーな一面が映画では覗きましたが、王子先輩への想いが宙ぶらりんのまま終わってしまいましたね。響も、ピアノについてもっと悩む話があっても良かったと思います。最初からそこそこ上手かった、と捉えられなくもないですが上達するドラマも欲しかった。
プリキュアが伝えようとしているものは
苦戦を強いられる、それ即ち敵が強いということですがスイプリの敵、黒幕はノイズという「全ての音を消し去ろうとする」存在です。人間の悲しみから生まれたノイズは、38話で鳥の姿でキュアミューズ=アコの前に現れますが、やがて巨大な姿→人間体へと変わっていきます。演じるは中尾隆聖さん、お馴染みの悪役ボイスを聴かせてくれますがそのノイズ、自分の声もコンプレックスだったというのが地味に面白い。
ノイズも含め、敵側のキャラクターも皆、「浄化」されて平和に暮らしている、という最終回で幕を閉じますが、加音町、メイジャーランド共々人々が石にされてしまうという危機的状況から、それらが全て「修復」されて終わるのです。
「浄化」「修復」
これらによって、悪いものがなくなって大団円を迎える…プリキュアは大方、こうして終わります。異世界の仲間との別れが描かれることもありますが、基本的には失わず、新しく何かを得て終わるんですね。
現実を見てみると、壊れたものは一瞬で元通りになったりしませんし、悪事をする人間が「操られてました」ですぐ改心することもありません。毎回、身の回りのものが怪物になるも倒せば元通り、怪物に変えていた敵も洗脳が解けて善人に…これらはアニメならではの絵空事です。
なのに、「くだらない」「ありえない」「バカバカしい」といった気持ちは沸きません。今回10日で全話観ましたが、毎回楽しんで観られています。それは、ここにも視聴者へのメッセージ、願いが入っているからだと感じます。
エヴァンゲリオン第九話「瞬間、心、重ねて」で加持さんが「大人は恥をかきたくないのさ」と言います。
その通り、大人になるとプライドを持ち、見栄を張りたくなるものです。ゆえに、なかなか自分を変えられなくなります。世の中に犯罪は絶えませんが、罪を犯した人間は、秩序を護る機関によって裁かれるのが社会の仕組みです。それによって更生すれば良いですが出来るとは限りません。
逆に言うと、「浄化」「修復」が可能なのは子供の間だけ、とも言えます。大人になったら不可能、ではありませんが難しい。まだ余計なプライドや見栄を持たない間に、道を間違えたら正す、正せる、ということを覚えた方が、先の人生で道を間違えないことにも繋がると思います。だから、子供の間に「悪者を撃退するのではなく、浄化する」物語を胸に刻む意義がある。
完全に私の主観ですが、女児向けアニメとして、敵を倒すのではなく、更生させる物語を見せる事がプリキュアのテーマなのではないだろうか、と感じました。
それはさておき、愛すべきキャラ達
と、小難しい話もしましたが、とにかくスイプリのW主人公たる響&奏の夫婦感は気に入りました。終盤になるとなかなか見られなくなってしまいましたが、序盤のケンカは視聴者的にはニヤニヤしっぱなしのご褒美でしたね(笑)。
過去プリキュアは二年前、トロプリ映画の予習としてハートキャッチプリキュアを観て以来の履修でしたが、今回も楽しかったです。
dアニメストアにはお世話になってます。
配信時代、バンザイ!(笑)