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戦闘メカザブングル、前半を観て感じたアニメの「死」の描き方
全く持って無知の極み、お恥ずかしい限りですがイデオン劇場版の配信は期間限定だったんですね。この記事のリンクが切れていて気付きました。修正しようかと思いましたが、面倒なのでそのままにします(怠け者)。
さて、こちらの記事に書きました通り、現在富野監督の作品の一つ、未見だった「戦闘メカ ザブングル」を視聴しております。
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観るキッカケになったのはやはり…配信でした
富野監督作品はほとんど観ているのですが、
・ダイターン3
・ザブングル
・オーバーマンキングゲイナー
・リーンの翼
・Gのレコンギスタ
この辺がまだ、未視聴なんですね。
自分的に聖典であるイデオンへの熱が再燃したのを機に、観ていこうと思い立ったのがキッカケです。
ちょうど、dアニメストアに復活したところだったので活用させていただいております。本日、全50話の半分、25話まで観て感じたことを綴りたくなりました。
明るいキャラが織りなす、命のやり取り
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観ていると作品内では「イイ男」に見えてきます
このザブングル、特にイデオンの後で監督も名前を変えて(漢字だけですが)名古屋テレビ制作のロボットアニメ復帰作、という触れ込みなので色々とリフレッシュを図った結果なのか、基本的に陽性の明るい世界観、ストーリーが前面に打ち出されているんですね。惑星ゾラというファンタジーな設定、三日の掟、特権階級の存在など外枠はおとぎ話の香りがします。
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しかしそうは言ってもロボットアニメ、戦闘の描かれ方はそれまでの作品と同じように「戦争」としてしっかり見せています。結果、メインキャラはしぶとく生き残っていますが(25話時点)、2~3話の出番で終わるゲストキャラは結構、バタバタ死んでいくんですね。
これは富野アニメ特有の見せ方だと思いますが、乗っている機体が大破するなどの描写で直接、絶命の瞬間を見せはせずとも「キャラの死」を伝えてきています。そうなんです、戦争なので乗り物が爆発もしますし、そうなったら中の人間が生きているわけはないんですね。
よくザンボット3、イデオン、ダンバインが「全滅エンド」と呼ばれたりしますが、それら以外の作品も全滅ではないながら、生き残れないキャラが多数いるのが、富野アニメです。
しかしそれが残酷とか非道とか、言われるのもまた筋違いな気がしますし先日イデオン劇場版をYoutubeで初めて観た人達が驚きこそすれ、悪趣味だ!とか嫌悪している様子は私の観測範囲では見られませんでした。
つまり、富野アニメの「死」は「納得のいく死」なんですね。
何故そうなのか、考えれば一つの単純な答えがあります。登場人物が生きようとしている、生き残ろうとしているからです。それでも命は散っていってしまう…戦争とは異常な状況なのだ、それを真摯に描いているからこそ、人の最期が陳腐にならないのだと思います。
たとえば、ファーストガンダムのリュウ・ホセイが、弾のないコアファイターで特攻した場面を愚かという人が居ないように。
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冗談はやめてくれって気持ちにはなります
「萌え」という言葉がなかった時代にも、萌えるキャラはいた
昨日上がっていたこの動画で、庵野監督の初恋の人が宇宙戦艦ヤマトの森雪だったことが判りました、庵野さん、麻上さんに呼んでもらえて至福のときでしたね(笑)。
ヤマトの頃、というともう半世紀前になりますがその頃から、アニメキャラに心を奪われた人はいた訳ですね。近年だとそれがもうビジネスの中心になっていて、女の子が何人も出てくるアニメが大半になった気がします。それの良し悪しについてはここでは語りませんが、先日…
この記事でシーラ様が良い、という話を書きました。当時のことを調べていると、シーラ様は人気の割に出番が少なかったので、出てくるシーンがあるとアニメーターの間で「俺が描く!」「いや俺だ!」と取り合いになっていたとか。彼らにも魂の浄化が必要だったかもしれませんね。
さて、ではザブングルにおいて男性視聴者の心を奪ったキャラは誰だったのでしょう。
大方の予想通りエルチ、ラグのダブルヒロインがワンツーフィニッシュでしたが、頂点に輝いたのはラグでした。
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島津冴子さんの声がハマっていて女の子らしさもありますね
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魅力だったといえます、ジロンと同じ機体を駆るパイロットですし
戦闘においては主人公感もありますね
私が観ている25話までの時点でもラグには大きなドラマがあり、一度アイアンギアを飛び出して敵側につく、というムーブがありました。決して卑猥に描かれてはいませんが、入浴シーンではおっぱいまで晒していましたね。そして圧巻だったのは、22話のラスト。戦闘が終わり戻ってきたラグを、ジロンが涙を流しながら殴り続けるシーンです。今だったら確実に炎上ものなシーンですが、これが先に書いた命のやり取りをしているがゆえの、仲間への愛、といえる激しくも美しい場面でした。
ラグは目を瞑り、ジロンのビンタやゲンコツを受け入れ続けていたんですね。ジロンだから殴れるし、ジロンの拳だから耐えられる。唯一無二の関係性を見せる、前半のクライマックスだったと思います。
アニメだからこそ描ける人の命の美しさ
…これを観ると、近年の暴力や死を忌避する傾向がいかにまやかしであるかを感じざるを得ません。「死」「殺」という字に規制が入るような世の中は明らかに異常であり、間違っていると言いたいですね。それらを遠ざけて、人々が穏やかになっているでしょうか?理不尽な暴力や残酷な事件は相も変わらず、ではありませんか。
ハッキリ言います。
アニメの中では人を殺していいんです。
殴ったり強姦してもいいんです。
それに感化されて実行するような人間は、そのアニメが無くても同じことをやります。むしろフィクションで見せないと人々はイメージも出来ず、免疫のないまま未成熟な社会人になりうる可能性すら孕んでいます。
必死に良く生きようとして、人が傷付き、命を落とす。その過程に暴力があろうとも…、
その悲しさや、時に美しさを見せることが出来るのもフィクションの力です。上辺だけの倫理観を振り回す人達がその事を理解できるとは思えませんが、私自身創作の世界に足を突っ込んでいる身として表現を狩ろうとする勢力には抗っていきたいですね。
人の命にしっかり向き合う、富野アニメを観てそんな思いをあらたにしました。
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ついていけんぞこの女…な印象でした
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これは現代なら確実にSNSのトレンド入りしていますね