推しの子第21話感想…こんなに可愛くても、簡単には売れません
二週間ぶりの、推しの子最新話を観ました。
第二十一話「カイホウ」あらすじ
遺伝子鑑定の結果、姫川とは異母兄弟だと告げるアクア。しかし、姫川から聞かされたのは衝撃的な事実で──。一方、ルビーたちB小町の活動にも新たな展開が……!?(公式サイトより引用)
舞台編の締め、新事実、新展開と盛りだくさんな回でした。
「クズ」の確認
まず衝撃の事実として、仇として追っていた父親が既に故人であることが腹違いの兄、姫川から語られます。これによってアクアは、長年の怨恨から解放されるんですね。タイトル「カイホウ」は、これを指しているのだと思われます。
兄弟といわれても実感は薄く、それでもアクアと姫川の間に、「ロクな人間ではなかった父親への軽蔑」という共通認識が出来て友情めいたものが生まれた場面でしたね。しかし、意図せずして共に芸能界でいるというのもまた因果なのか、ちょっと怖さを感じます。
個人的にココ、メチャメチャ共感しました。
私も本当に父親と不仲で絶縁状態にあるからです。以前別の映画感想記事で書いたことがありますが、ただただ尊敬できない人間だったんですね。「それでも、たった一人の父親」などと美徳にする話に虫唾が走るので、この場面の姫川とアクアの会話には溜飲の下がる思いがありました。
なので、親子仲良好で父親とコミュニケーションが取れている人を羨ましく思う事もよくあります。
…あ、ちなみに他にも母と妹がいてそちらとの関係は良好なので、家族そのものを忌避しているわけではありません。
久々のMEMちょ、ルビー
舞台編ではほぼ出番なしだったB小町の二人が久しぶりに、存分に出まくってくれた21話でした。
堅調にYoutubeチャンネルの登録者数は増えているものの、まだまだの段階。MEMちょ先生による動画活動の実態とテコ入れが提案され、舞台の慰安旅行&新曲のビデオ撮影を兼ねて宮崎に飛ぶ…という話になりました。
芸能界のリアルを描いているこの作品ですが、ここでも「売れる」ことのシビアさを突き付けてきましたね。大方、漫画やアニメに出てくるアイドルはすでに売れていたり、「デビューして、人気を得た」みたいな形でトントン拍子だったりするのですがそこにこれだけの情報を織り込んで厳しさを見せてくる作品は、やはり斬新です。
B小町の3人、ルックスは申し分ないと思うのですが可愛いからといってすぐに売れる訳ではない、とっても現実的な話ですよね。
ルームツアー動画を出すと私物が経費で落ちる…?目から鱗でした。
ユーチューバーがやたら高級品を買って動画にしてるのは、そういうこと…?と驚きましたね。たとえば最新の商品を買ってみました、とかならまだしもただのブランド品なんか、動画で見て何が面白いのか…と思っていましたが、色んな裏事情があるんでしょうね。勉強になりました、MEMちょ先生。
ちなみに思いきり途中が抜けていますが、最終章突入と謳い始めてから原作をながら読みし始めました。こちらはいよいよクライマックス、な空気ですが少し、重い気持ちで読み進めています。
そんな気持ちになってしまうくらいには、星野兄妹の幸せを願っているんですね。この作品特有の空気として、落ち着いた場面ほど何か不穏なものを感じてしまうものがあり、「復讐は終わった」と言われると嫌な予感しかしないんです(汗)。アニメ二期がどんなところで締めるのかはわかりませんが、本当に心が落ち着かない作品ですよね。
ルビーの笑顔を、消して欲しくないなぁ。
作品の本質は、「真実と嘘」?
この推しの子、ジャンルでいえば「ピカレスクアニメ」とでも言えば良いのでしょうか。様々な観点があるので一概に括れるものではないですが、雰囲気としては「社会の下層に位置する主人公が、一人称で自己を語る物語」というピカレスク小説の定義にはまっている気がします。
そこに、発端、舞台が芸能界であることで「自分を偽る、演じる」ということと生き様を投影させて人生の目的を探っていく物語…というのが本質かな、と感じます。
そこに魅力的なキャラクターの関係性が挟まる事で見応えのある作品になっていますが、どうしても命が関わる出来事が絡んできて完全に陽性側に振り切れない闇がつきまとっているのが、独自の魅力ですね。アクアは、どう転んでも幸せにはなれそうにない。
「芸能界=嘘の世界」というのはやや短絡的にも感じますが、嘘が散りばめられた世界であればこそ、人間の本性がまた、周りの人間を動かしている世界でもある、と伝えている気がします。その根幹には人が人を求める気持ちもあるのだと、ある美しさとして迫ってくる…今回、行き詰った大御所作曲家がルビーの動画を観て奮起する場面にはそれが表れていましたね。
ドス黒いものや厳しさを描きながら、それでも前に進むのは人が持つ、真っすぐな淀みない心なんだ。
それを伝えようとしているかのような、「美しい作品」だと感じる21話でした。
ハッピーエンドを望みます。
ここまでの感想記事です。