【モチーフ小説】にじむ汗と熱
身体を動かさない日があると、心の中まで鈍ってしまうような感じがした。
こんなところで立ち止まっているわけには行かないのに。
けれど、ときどき勝手に開かれる、余分な扉。
私を踊りに夢中にさせたのが環境ならば、私を男から遠ざけたのも環境だ。
なんだか、その事で損ばかりしている気がする。
実際には、そうでもないのかもしれないけれど。
情感が足りない、と講師はいった。
私の踊りには、情感が欠けている。
ほんとうにそうだろうか。私は訝しく思う。
それは、私には必要のない感情なのではないか?
そんなもの無くたって私はどこまでだって行ける。
そんなもの無くたって。
ある夜、私は恋をした。
その夜だけにときめいた。
目が覚めると恋人は姿を消していて、私だけを取り残して。
そんなことが何度かあって、こんな経験が私にメスを入れていく。
私が私になっていく。
曲の終盤。
フロアに滴る汗が、私の足を取った。
あやうく転びそうになる。おかしくなって、私は笑った。
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