故ハビビ元大統領についての私論(1)
2019年9月11日、インドネシア第3代大統領を務めたバハルディン・ユスフ・ハビビ氏が亡くなりました。政府は3日間喪に服すことを決め、全国で半旗が掲げられました。
ハビビ氏は、36年間続いたスハルト政権の後を受け、1998年5月20日に副大統領から大統領へ昇格するものの、1999年10月20日に退任するという、わずか1年5ヵ月の短い任期でした。
しかしこの任期中に、スハルト時代の権威主義体制を払拭し、民主化、地方分権化、言論・結社の自由などのレフォルマシ(改革)が進行しました。また、東ティモールのインドネシアからの分離独立への道筋が作られました。
こうした時代的背景から、ハビビ氏は現在、新しいインドネシアを方向づける重要な役割を果たした大統領として、その功績が大きく称えられています。
晩年のハビビ氏は、かつてのような政治的影響力を与えることはなったものの、政権のご意見番としての地位を保ち、一方で、その愛妻ぶりが小説や映画となり、ハビビ夫妻の理想的な夫婦としてのイメージが定着しました。
新しいインドネシアを方向付けた素晴らしい政治家、家庭や妻を大事にする素晴らしい人物として、ハビビ氏はこの上のない良きイメージを残したまま、この世を去られました。それはそれでよい人生だったのだと思います。
その一方で、30年以上前からハビビ氏をみてきた筆者としては、そうした晩年の彼とかつての彼とのイメージ・ギャップを大きく感じずにはいられません。まだ亡くなって間もなく、追悼の雰囲気に満ち満ちている状況下で、筆者なりのイメージ・ギャップを論じることは、不謹慎と思われるかもしれません。もう少し時間を置いてから書くことも考えましたが、ランダムな形で、筆者なりの私論を書き並べてみたいと思います。
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