第8話「彼らの採択」感想
1 プロスペラ発言の信頼性評価
今回、スレッタ同伴でミオリネがプロスペラと会談し、シン・セー開発公社の「GUND-ARM」関連技術の供与を要求しました。
しかし、プロスペラは、
・「GUNDフォーマット」はブラックボックス部分が多く、実用化には技術解析から始めなければならない。
という趣旨の発言をした上で、碌に説明もせず、関連データ提出だけしました。
また、スレッタの疑念や質問に対し、明らかにはぐらかすような発言と共に、わざとらしい愛情表現をして、スレッタの思考を誘導する露骨に胡散臭い描写がありました。
・スレッタの質問に嘘をついていたこと。
・嘘が判明した後に、スレッタに対して真摯に謝罪せず、釈明も適当だったこと。
・スレッタの愛情を利用して、露骨な思考誘導をしたこと。
・娘を救ったミオリネに対しても、全ての情報開示をする気がないこと。
等から考えて、
・プロスペラの発言を考察の根拠にすることはできない。
と今後は判断せざるを得ないでしょう。
2 ミオリネの経営者としての資質
前回、スレッタに対する魔女裁判紛いの弾劾に対して、
・咄嗟に事業計画を立ち上げる。
・適切な投資金額を計算して提示する。
・嫌っていた父親に対して頭を下げて投資を呼びかける
等、経営戦略科トップに恥じない手腕を見せつけました。
今回も、
・期限までに必要なタスクを見極める。
・タスクの優先順位を決定する。
・優先度の高いタスクに必要人員を配置する。
等に関しては、経営者としての資質は十分にあると判断できます。
しかしながら、
・スレッタの人脈に依存した地球寮からしか人員を確保できていない=経営戦略科のクラスメイト等、自分の人脈を活用できていない。
・事業の核心である「GUND-ARM」技術について、専門家から十分なヒアリングを受けようとしていない=プロスペラの不十分な情報開示に対して有効な対策を講じられていない。
・「会社の定款」採択という事業の大戦略決定の際に、投資家の思惑や市場動向を適切に考慮していない=軍事産業企業連合であるグループ内投資家や軍事利用という確実な需要を無視。
等の問題が見受けられます。
そもそも、
「医療技術としてのGUND技術開発」
という事業目的は、民間需要の市場では十分な需要を見込めるとは思いますが、
・投資を募ったのがMS製造業という軍事産業のベネリットグループのインキュベーションパーティー。
・GUND技術の軍事利用の象徴である「GUND-ARM」を会社名に採用したこと。
・「ベネリットグループ全体への起爆剤になる」とプレゼンテーションしたこと。
等の状況から考えて、
・「GUND-ARM」や「GUNDフォーマット」の基礎技術としてのGUND技術開発
でないと、投資家の理解は得られないでしょうし、「GUND-ARM」型MSを望む勢力から敵対的買収を仕掛けられる危険性も無視できません。
その意味で、今回のミオリネの行動は、
・基礎的な経営者の資質は十分にあるが、MS製造業という業界特性への理解や経験が不足している。
と言わざるを得ないでしょう。
3 「GUND」再考
GUND
パーメットを利用した身体機能拡張技術。GUND技術を軍事転用したシステムは「GUNDフォーマット」と呼ばれ、これを搭載したモビルスーツは「GUND-ARM」と総称される。
公式HPの用語集によると、
GUND=パーメットを利用した身体機能拡張技術
ということになります。
パーメットの「情報を共有する」という特性を踏まえるならば、
GUND=「パーメットの情報共有機能を利用したマン・マシンインターフェイスを基盤とした人造身体制御技術」
だと解釈するのが妥当でしょう。
プロローグや今回の記録映像におけるカルド・ナボ博士の発言を見る限り、
・過酷な宇宙環境に人体を適応させるための身体機能拡張技術
こそがGUND技術の主眼です。
その意味で、
・医療転用による「人造義肢」
・軍事転用による「GUND-ARM」
もサイズと複雑さがが異なるだけで、
・「身体機能拡張」
という観点からは「本質的な違いはない」というのが大前提になるでしょう。
そうすると、
・データストーム=「人造身体のサイズと複雑さ増大=パーメット流入値増加」に伴う心身への負荷
は単なる技術的欠陥に過ぎず、
・「GUND技術」そのものに非人道性は存在しない。
と判断するのが自然です。
そこで問題になるのが、
・デリングはどういう理由で「GUND-ARM」研究所を壊滅させたのか?
という
「Why done it?」=「何故、それをしたか?」
になります。
4 「ガンダムの呪い」
プロローグ時点における
「データストーム対策が不十分なままのGUND-ARM運用」が非人道的だ
ということを受け入れたとしても、
・カルド・ナボ博士らがガンダム・ルブリスを開発していたのは「データストーム」問題を解決するためだった。
・GUND技術を医療転用した「GUND義肢」には「データストーム」問題が発生しない。
という描写を見る限り、
・適正な管理と監査の下でGUND技術の研究・開発を継続。
・「データストーム問題」を解決するまでは「GUND-ARM」利用禁止。
等の穏健な対応が十分に可能だった筈です。
しかしながら、
・ヴァナディース機関を襲撃し、研究者殲滅及び研究資料破棄。
・軍事転用の「GUND-ARM」だけでなく、医療転用の「GUND義肢」まで禁止になった。
という過激な対応が実施されたのが事実です。
そうである以上、
・「データストーム」問題を口実に、「GUND技術の研究・開発を禁止する」必要性があった
可能性が示唆され、それこそが「ガンダムの呪い」だということになります。
とは言え、まだ開示情報が不十分なため、
・GUND技術そのものに、何らかの本質的欠陥がある。
・GUND技術の目的である「宇宙適応のための身体機能拡張」を巡るイデオロギー問題がある。
・GUND技術による軍事的・経済的バランス変更が問題である。
等の候補が考えられるため、現時点では判断を保留します。