第5話「氷の瞳に映るのは」感想
1 ペイル社の立場と方針
「GUND-ARM」禁止という協約があるにも関わらず、
・自社で「GUND-ARM」を極秘開発。
・「GUNDフォーマット」を利用した「強化人士」という人体実験実施。
等と、グループ内御三家の一家であるペイル社が極秘に協約違反をして非人道兵器の開発をしている状況です。
さらに、強化人士であるエランのボディメンテナンス及びガンダム・ファラクト開発を行っているベルメリアは、プロスペラを「先輩」と呼んでいたことから、
・カルド・ナボ博士の思想と技術を継承した魔女
であるのは確定事項として扱って良いでしょう。
素直に考えるならば、
ペイル社=「GUND-ARM」推進派
ということになります。
しかし、
・プロスペラは10年以上前から活動していたにも関わらず、ペイル社のベルメリアを知らなかった。
→少なくとも、協力関係にはなかった模様。
・カルド・ナボ博士のガンダム・ルブリスとは別系統のガンダム・ファラクトと強化人士を開発していた。
等から考えると、
・同じ「GUND-ARM」推進派≒魔女ではあるが、プロスペラに協力するとは限らない。
ということになりそうです。
2 エランの立場と強化人士
今回の描写を見る限り、
・データストーム耐性を付与された「強化人士4号」。
→神経系をパーメットで強化した特殊な「GUNDフォーマット」を処置済と予想。
・特殊な設備による定期的メンテナンスが必要。
→寿命が普通より短く、メンテナンスなしだと直ぐに死亡する可能性が高い。
・現在の容貌や身分はペイル社によって偽造されたもの。
→姓が小惑星ケレスであること、4号という呼称等から、過酷な人体実験と選抜を生き残ったテスト・パイロット兼ペイル社の広告塔。経歴も容貌も会社の都合で「造られたもの」。
・自分の誕生日を答えない。
→デザイナー・べビー又は誰かのクローンの可能性がある。
等はほぼ確定でしょう。
また、スレッタに対して、
・自分と同じ魔女=強化人士と即断し、過剰な期待を寄せていた。
・エアリアルやスレッタが自分の期待した存在でないと判明した途端に嫉妬や憎悪に駆られて冷たい態度を取り出した。
・グエルとの決闘で、スレッタの初回決闘を再現するような不必要な攻撃を行った。
等から、
・過酷な経歴と歪な人間関係から、情緒的には幼いまま。
・無自覚なままスレッタへの執着を募らせている。
と予想されます。
これらをメタ的に勘案すると、
・エラン≒「テンペスト」における魔女シコラクスの息子、獣人キャリバン
に相当する登場人物ではないかと予想します。
ちなみに、獣人キャリバンは、
・「テンペスト」の舞台となる島の持ち主、魔女シコラクスの息子。
・母を幼くして亡くしたため、言葉も話せない野生児だった。
・母の呪文は知ってはいたが使えない。
・プロスペローに騙され、母の呪文を盗まれ、島も奪われた。
・プロスペローの魔術に逆らえず、彼に使役されていた。
・プロスぺローを憎み、彼に復讐しようとするが失敗する。
というかなり悲惨な役どころです。
勿論、「テンペスト」とは色々と異なる設定ですが、
・魔女の息子≒魔女の人体実験の被験者=強化人士。
・母の呪文は知ってはいたが使えない≒「GUND-ARM」のテスト・パイロットだが、「GUND」技術に精通している訳ではない。
・プロスペローの魔術に逆らえず、彼に使役されていた≒ペイル社に命を握られて逆らえず、過酷な人体実験と広告塔を強いられていた。
等と上手く翻案されているように見受けられます。
3 データストーム対策
ペイル社のベルメリアによると、データストーム対策には2つのアプローチがあるそうです。
彼女の発言を私なりに解釈すると、
・「人体強化」により、データストーム耐性を上げる。
・「機体調整」により、データストームの原因であるパイロットへのパーメット流入値を軽減する。
ということになります。
ペイル社の「強化人士」は「人体強化」のアプローチなのは確実ですが、
・現状、スレッタが「人体強化」を受けているかは不明。
・エアリアルと「パーメットスコア2」でリンクしたエランがパーメット流入による不快感を覚えなかった。
ということから、
・エアリアルはファラクトよりも、「機体調整」によるデータストーム対策が向上している。
ことは確実です。
ただ、この事実だけを以て、
・スレッタには「人体強化」は何も施されていない。
・エアリアルはどんなパイロットに対してもデータストームを起こさない。
とまでは主張できないと思います。
とは言え、エランが今回のエアリアルとのパーメットリンクを経て、上記のように誤解したように見受けられるのは事実なので、視聴者をそのようにミスディレクションしようとする意図があった可能性は否定できないでしょう。
なお、現時点の私の解釈では、
・スレッタ=母胎内でパーメットと共生が可能になった天然型高パーメット適性個体=「天然魔女」。
→幼少期からパーメットリンクを継続したことで、更にパーメット適性(≒耐性)が向上。
・エアリアル=パーメット素子製人造脳に自律知性を宿した試作機体=「真のGUND-ARM」。
→脳幹(生命維持)や小脳(運動機能)に相当する機能を機体側だけでほぼ完結する。=パイロットへのフィードバックを最小限にすることでデータストームを防止。
であり、
・人体と機体の両方からアプローチした「GUND」技術=「人機融合」の到達点
という推測をしています。
その意味で、第3話におけるプロスペラの
「エアリアルはガンダムではない」
という発言は、
「エアリアルは旧式のガンダムと違って、機体の自律性が高く、データストームを興すような欠陥機ではない」
という自負によるものであるということなのかもしれません。
勿論、
「スレッタは魔女ではない」
は、
「スレッタは天然魔女なので、人体強化による人造魔女ではない」
だと解釈できるでしょう。
4 スレッタの兄弟=エアリアル登載自律知性
今回、地球寮において、アリヤがスレッタのためにリソマンシー(石占い)を行い、
・父親の不在
・母親の大きな存在。
・兄弟の影響
等を示唆したことで、
「スレッタ≠エリクト」説
に言及する人が増えている印象です。
特に、第3話のエアリアルのOSについての画面表示である
「Version E.S.」
の解釈とそれに基づく様々な仮説が立てられていますので、現時点での私の見解を述べたいと思います。
まず、第5話まで視聴した印象に基づく直観でしかありませんが、現状では、
・「スレッタ=エリクト」
・「プロスペラ=エルノラ」
を否定する強い根拠はないと判断します。
従って、
「Version E.S.」
というエアリアルのOSの画面表示は、そのまま素直に、
「エリクト・サマヤ専用」=スレッタに最適化された専用OS
を意味すると解釈して良いでしょう。
何故なら、作品解釈をする際には、
オッカムの剃刀=「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」とする指針
に従うべきだと考えるからです。
私が管見した限りでは、
・「エリクト脳使用」仮説:死亡したエリクトの脳を生体部品としてエアリアルに組み込むことでデータストームを防止している。
・「エリクト人格電子化」仮説:死亡したエリクトの脳を参照し、エアリアルにエリクトの人格を移植することでデータストームを防止している。
等が仮説として有力視されている模様です。
しかしながら、仮に上記のような仮説が正しいとするなら、
・「生体部品」という特殊仕様が存在する。
→専用施設と専用スタッフが必要。又は、長期間メンテナンス不要のブラックボックスがある。
※上記の何れにせよ、今回、地球寮でのエアリアル修理の際に何らかの描写や言及がないと不自然。
・「人格移植技術」という特殊技術が存在する。
→人体拡張技術である「GUND」技術とは別系統の技術。
※プロローグでそれらしき技術が登場していないので、本編にいきなり登場するのは不自然。
となります。
これらのような「不要な仮定」を追加するよりは、
・エアリアル登載パーメット製人造脳に自律知性=エアリアルの人格が宿っている。
→スレッタが家族と呼ぶエアリアルの人格=占いで示唆されたスレッタの兄弟
と素直に解釈する方が良いと判断します。