再会はトイレの中。(仮)①#18禁 カズイの場合

俺の名前はカズイ。
「RANDY」ってバンドのギターやってる高2。
やりたいジャンルは
父さんの影響もあって歌謡ロック的な感じ。
グラムロックみたいな。

で、片田舎の高校の軽音部入ってんだけど、
意外とセンスのいいドラムとベースに出会えたんだよな。
ずっと一緒でいい感じ。
・・・でも、ボーカルの声質が
悪くはないんだけど、パンクな感じで。
イメージと合わない。

まぁ合わないながらも声質に添った曲作って
試しに大会に出てみたら、
割といいとこまでいった。
そう。
割といいとこまではいくんだよ。
なんつうか、イメージ通り。
そりゃウチらの演奏レベルもあるだろうけど、
どうしてもボーカルの声質に合わせると
ありきたりな曲しか作れない。
もっといいもん作れるイメージは持ってるんだけど、
そうすると、どうしてもボーカルが弱い。

それは、地元のライブハウスで
ツアーで回ってくるインディーズの人たちの前座を務めるようになってから、
さらに強く感じるようになったし、
実際その人たちに指摘されてもいる。


春に、リンカってコが軽音部に入部してきた。
クッソかわいい。
誰もが二度見するかわいさ。
それを自覚しててそのように振る舞ってる。
俗にいう「あざとい」って感じ。
まぁでもいいじゃん。
イケメンがカッコつけてもカッコいいからしょうがないってのと一緒。
そのリンカがなぜか俺になついてきた。
恋人ってゆうのとはちょっと違って、
多分彼女は、
俺の顔の広さを狙って近づいてきた。
まぁいい。
やることはやって、
Win-Winの関係。


そのうち、ボーカルのタイチがリンカに告ったって聞いた。
リンカは俺と付き合ってるって言ったんだろうね。
タイチは、絶交だって。バンドも抜けるって。
女子かよ。
でも、一応ツレだからさ、
こんな感じで脱退してほしくなかったし、
絶交ってさ。
なんだか、リンカとの関係に違和感を感じはじめた。


とはいえ、図らずもタイチの脱退で
新しいボーカルを探さなきいけなくなった。
なら、ちゃんと理想通りのやつ探さなきゃ。
そう思ってたら
すぐ近くにそいつはいた。

何人かに声かけて聞いてたら、
一年の軽音のやつのクラスにいる
「ケイイチ」ってやつが結構歌えるって。
試しに歌わしてみたら、びっくりした。
まだまだ荒削りだけど、こいつは化ける。
艶のある伸びやかな声量。
一音一音に魂がのってるイメージ。
こういう歌声を、俺は待ってた。

そして、
リンカがケイイチに乗り換えようとしてた。
理由はわかんないけど。
でもまぁそれもいいかなって思った。
なんつうか・・・
中途半端なことはしたくなくなった。
それよりも
「RANDY」をこれからランクアップさせることの方が大事に思えた。

・・・とはいえ、
リンカがいなくなってみると一抹の寂しさは覚えないわけではなくて。
まぁその分「RANDY」に精力を注ぎこもう。
ケイイチの成長に。


・・・ってゆう、長々とした前置きだけど。笑

こっちの話を膨らめても面白いかもしんないけど、
それと同じくらいの一大事が
我が家で起こっている。
全然違う話だけど・・・


・・・父さんが再婚する。


いくらバンドが大きくなってるとはいえ、
バイトや曲作りで家にいないことが増えたとはいえ、
俺もまだ17。
やっぱり我が家は我が家だ。

母さんは、俺が小さいときに出てったらしい。
なんとなくいた覚えはあるけど、
あんまり優しくしてもらった記憶はない。
父さんに男手ひとつで育てられた。
その記憶だけだ。
まぁ父さんが仕事で遅くなるときもあったけど、
そんなときはずっとギターをいじってた。

だから、
今さら母さんとか、家族が増えるとか
あんま実感わかないけど、
まぁ父さんが幸せ見つけるなら
俺は別に構わない。
ライブとかバイトとか学校で曲作りとか、
家あけることも多いしね。
でもなんか、
向こうもバツイチで
俺と同い年の子供がいるとか?
あんま詳しくは聞いてないし、
父さんは割と大事なとこを伝え忘れるクセがある。笑

そして今は、コンビニバイトの帰り。
だいぶ寒くなってきた。
おーさみぃ。
季節は冬の入り口。
だいぶ寒くなってきたね。

キィッ

自転車停めて。
家に帰る。
・・・あれ?
なんか見覚えない車あんな・・・
おっと。
トイレトイレ。

ガチャ
『ただいまー。』

パタパタパタ・・・
トイレッ♪トイレトーイレッ・・・♪

カチャ


ショーーーーーーー・・・


・・・え!?
カギ閉めてない。え?
誰。

『えっ・・・!カズイくん!?』

『・・・え?
えっ!?サオリちゃん!?』

チョロロロロ・・・


初恋のサオリちゃん。
再会は・・・
我が家のトイレの中だった。


続く→

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