幼馴染と。一途のチカラ。届ける思い。① 前置き。

『・・・てわけ。』

とある山間の学校。土曜日。
バンド「RANDY」の、
一ヶ月後のライブの定期打ち合わせの日。
カズイは
昨日の出来事をメンバーに話した。

父親が再婚する。
それ自体は喜ばしいことだし、
あまり家にはいないカズイにとって、
新しい母親とは
もはや父の新しい恋人として
適度な距離感で接していくつもりだった。
しかし父からの報告もないまま
いきなり初顔合わせの昨日。
向こうにも連れ子がいることは聞いていたが
そのコがまさかの
カズイの初恋のコ、サオリちゃんだった。

まぁ、トイレ入ったらいきなり
サオリちゃんがおしっこしてた話とか、
その後流れでセックスになった話は
当然伏せているが。
色々あっていきなり恋人同士になった話は
報告した。

詳しくは前章「再会はトイレの中。」参照。

『ヤバくね?』
とマサキ。

「RANDY」は、

ギターにカズイ、ベースにマサキ、ドラムがケンタ。
元々はボーカルにタイチがいて
タイチの声質的にパンクバンドのような形だったが、
カズイの求める音楽は
昔の日本のロックのような、グラムロック。
カズイはパンクな楽曲も作れるが、
やりたいカタチではなかった。
そこに「リンカ」という女との絡みで、
望んだ形ではなかったが
ボーカルタイチが脱退することに。
そこにカズイが思い描く、理想通りの歌声を持つ
ケイイチという一年が現れ、
新生「RANDY」として歩みだすことになる。

ケイイチに関しては
全く違うカタチで最初の方に触れてるから
よかったら見てくれよな。

そして一ヶ月後には
定期的に回ってくる「Smith-law」というインディーズバンドの
前座ライブがある。
「RANDY」はいくつかの大会で名が知れはじめてきたものの、
前座ではあるものの、メジャーと遜色のないキャリアの彼らとのライブが
「RANDY」にとって一番大切なイベントとなっている。

という感じで長々と前置きを語ったけれど。
ともかく、彼らにとって失敗はしたくない
「Smith-law」のイベント。


新たなケイイチ用の楽曲は作ってきた。
ケイイチとはある程度詰めてある。
なにしろケイイチは歌以外は初心者だ。
ここから一ヶ月、
マサキとケンタと共に、一気に詰めていく。

『あぁびっくりしたよ。
しかも向こうも俺のこと好きだったんだって。
そんなキセキあるかよ。笑』

先程の続きを話す。

『・・・まぁぶっちゃけ
リンカちゃんとのことはどーかと思ってたからなぁ。笑
アレ、だって明らかにリンカちゃん、
おめぇのネームバリュー狙ってきてたろ。笑』

『あぁまぁ・・・いんじゃね?
こんな言い方アレだけど、
やることやったし。笑』

『まぁ、羨ましくはあった。笑』

マサキとは、そんな仲では、ある。

でもこれは、あくまで報告だ。
昨日ケイイチにも電話で途中までは話したし。
それとは別に、相談したいことがある。

『なんかさ・・・
俺、タイチに戻ってきてほしいと思ってる。
なんかすげぇ勝手だとは思うんだけ』
『賛成。』

『・・・早。笑』

『ウチらはカズイの思う音楽には
これからもついてくつもりだし、
きっとすごいもん作れると思うんだけど・・・』『あぁ。
もちろんケイイチももう仲間だし
一緒にやってくんだけどな。』

『うん。
前の曲もやるし、
ツインボーカルでやってきたいと思ってる。』

『いんじゃねぇか?
ちなみにケンタはタイチと連絡とってる。』

『そーなのか?』

『うん実は。
じゃあさっそくだけど連絡しよっか。』

trrrr・・・

【おうケンタか?】

『あ、俺。カズイ。』

【おっ・・・おぉ・・・】
【だれ?】

『・・・あれ?リンカ?』

【おぉ・・・まぁ、そーゆーわけだ。
わりぃな。】

『なるほどな・・・笑
なぁタイチ。
「RANDY」戻ってこないか?』

【あぁ・・・でもケイイチは?】

『ツインでやってこうと思ってる。』

【なるほどな・・・
おめぇもスパルタだなぁ。笑】

『え?』

【マサキとケンタは2倍覚えなきゃなんねんだぞ?】

『あぁまぁ・・・それはやってもらう。
それが「RANDY」が一段階上がるための条件でもあるんだ。』

【そっか・・・。
ホントに俺でいーのか?】

『え?』

【実はケイイチの声は聞いたんだ。
すげーなあいつ。
正直震えたぜ。】

『いや。俺にはお前の歌声も、
どっちも必要だ。
それに気づいたんだ。』

【・・・なにがあったんだよ。】

『え?』

【おめぇ、「RANDY」上げるために
あんな必死だったじゃねぇか。
Smith-lawのコージさんとも色々話してたんだろ?】

『あぁ・・・でも大切なのはそこだけじゃないって、わかったんだ。』

【・・・何があったんだよ。笑】


そしてライブ当日。

続く→

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