自然。矢印の向く方向。大切なヒト。①#18禁

2学期がはじまって最初の、週末明けの月曜日。

ここは、とある中核都市に隣接する
山間の町の高校。


『クミおはよー』

『あっ!リリおはよーっ!!』

『ねぇクミ、
あとでちょっといい?
報告したいことあって・・・』

『えっ、そんなのここでいーよぅ。』

『ううん。ちゃんと伝えたくて。』

『え?ンライでもなく?
(ンライ=SNSの一種)』

『うん。
こーゆうのはちゃんと言葉で伝えた方がいーと思ったんだ。』

『へぇー・・・
よっぽどいー人と出会ったみたいだねぇ。笑』

『へ?なんっ・・・!』

『何年つきあってきたと思ってんの。
そんなの顔見りゃすぐわかるよー。』

クミはスルドい。
でも・・・


『・・・・・っ!!!
えぇーーーーーーっ!!!ケイくんとぉーーーーーー!?????』

『ちょクミ声おっきいてば・・・』

さすがに相手がケイくんとは気づいてなかったよーだ。
クミも同じ化学部。
化学部=帰宅部ね。
だから、クミにとってもケイくんは
よく知る、同じ部内の2個下の後輩なんだよね。

『えっ・・・どーやって・・・
そんなの野暮か。笑
へぇー・・・
ケイくんがいつもリリのこと見てんのは知ってたけど。
やったねぇケイくん。』

『そーなの?』

『気づいてないのリリだけだよぉ。
多分気づかれてないと思ってんのもケイくんだけ。笑』
(ホントはリリがケイくんのこと誘惑してたのも知ってるけど、
さすがに野暮いから黙っとこ。)

『そーだったんだ・・・
で?クミは?』

『へぇ?』

『へぇじゃないよ。笑
クミもなんかあったでしょ?
多分・・・始業式の日。』

『あちゃー・・・バレてたか。』

『どんだけつきあってきたと思ってんの。笑』

『・・・・・。
うん。今のリリになら話してもいーかな。』

『え?どゆこと?』

『だって今までだったら絶対リリ悔しがるじゃん。』

『・・・あぁまぁ・・・』
否定はできない。

『実はね・・・』


『ちょっと待ってそれすごい玉の輿じゃん!!
ズルいっ!!!』

『それはあとで知ったんだってばー!』

『え。じゃあどこ好きんなったの?』

『んとねぇ・・・わたし、
えっちのとき気持ちよすぎて失神しちゃったのね?
外で。素っ裸で。』

『へ?』

『そんときに
「そうやって一緒に繋がって気持ちくなった女のコをさ、捨てて逃げたら男としてダメでしょって話。」
ってゆって、待っててくれたの。』

『ごめん話がエロすぎて入ってこんわ。笑』

『・・・あ。ごめん何か話しすぎた。笑
なんかね、そーゆー優しさがねぇ、
心地よかったんだぁ。』

『そっかクミ・・・よがっだねぇ・・・』

『えっちょっ・・・リリ!???』


クミと初めて出会ったのは小3の頃。
お父さんがいなくなって
お母さんの実家のあるこっちに引っ越してきた。
ちょうどその頃あたしは、
自己表現ミスってみんなからハブられがちだった。
クミは見た目がパッとしてたから
周りのコからもいっぱい声かけられてたけど、
人との接し方がわからなくなってたその頃のあたしとの距離感がちょうどよかったのか
次第に一緒にいることが多くなってった。
あの頃からクミは優しかった。

初めてクミん家に遊びに行ったとき、
近所のおばちゃんにこっそり
「クミちゃんはいっつもお家でひとりぼっちだから、これからも仲良くしてやってねぇ」
って言われた。
仲良くしてもらってるのはこっちだよ、
って思った。

それから、クミは
そうゆう寂しさとかを隠すすべを覚えて、
ふわふわふんわりしたコになってった。
でもそれはつまり
そうゆう寂しさとかをどんどん内に秘めるようになってったわけで・・・


そんなクミが今、自分にしあわせをさらけ出してくれてる。
伝えなくていートコまで。笑
それが単純にうれしかった。

『ごめんごめんリリっ!!!』

『よがっだねぇ・・・うれじいよぉ・・・』

『・・・でもね?付き合ってるわけじゃないんだよ?』

『・・・へ?そなの?』

『うん。』

『えーそれは・・・』

『いーの。
わたしが幸せなんだもん。
だし、ヨースケさんはちゃんとわたしのこと大切にしてくれてる。
会えばわかると思うよぉ?』

『・・・そっか。まぁそーだね。』

ンライッ

『あ。ヨースケさんからだ。』

続く→

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