ひとりからふたり。紡ぐ。繋がる。中編

スッ・・・
スススッ・・・スンッ・・・
『うん。だいじょぶだよ。』

『えっ、どっかにンライ送ったみたいだけど・・・
予定あるならそっち優先してよ。』

『ううん。
カズくんと一緒にいた方が楽しそうだし。
どこ行く?』

『えっ・・・あ。
どこ行く?笑』

勢いで誘ったものの、どこ行くとか考えてなかった。

『カズくんラーメン好きってゆってたじゃん。
わたしお腹すいたぁ。
食べ行こ?』

『え。そんなとこでいーの?』

『別にどこでもいーよぅ。
行こ?』


ここは都会ではない。
今の時間だとチェーン店しか空いてない。
でも広田さんはめっちゃおいしそうにラーメンをほおばっていた。
めっちゃ食うやん。笑

『ふふ。カズくん・・・笑』

『え?なに?』

『おいしそうに食べる人だね。笑』

『え?俺!?』

『うん。なんかずっと
「うんっ・・・うんっ・・・」てゆってる。笑』

『え。うそ。笑
でも広田さんも同じだよ?』

『えっ!?!?』

『「うんうん」は言ってないけどさ、
めっちゃおいしそうに食ってる。笑』

『えっ・・・それはおいしいからだもんっ!』

『違うねー。』

『え!?』

『めっちゃお腹すいてたからでしょ。笑』

『うっ・・・
そんな人をわんぱくみたいに言わないでっ!』

『わんぱく・・・笑
ねぇ、広田さんて何歳?』

『・・・え?』

『あっゴメっ・・・
年聞くとか失礼』
『32だよ。』

『・・・・・は?』

『いやだから、32。』

『は?いやいや・・・え!?』

『ごめんね32のわんぱくで。』

『いやそーじゃなくて。は?』

『なに。笑』

『えっ・・・絶対年下だと思ってた!』

『あぁ。でもそれよく言われる。
明らか20代のコにタメ口とか。
全然気にしないんだけどさぁ。
年言うとみんなびっくりする。
だからナメられんのかなぁ・・・』

『んー・・・
年とかは関係ないと思うけど・・・
広田さんは隙が多そうに見えるのかなぁ。』

『そっかぁ・・・なんかヤだなぁ。』

『まぁでも仕事とか誰よりもちゃんとやってるし。
見る人は見ててくれてると思うよ?』

『・・・・・。』

『・・・え?どした?』

『カズくん・・・いーやつだね。』

『まぁ、負け組だからね。』

『カズくんみたいな人が評価される時代になればいーのになぁ。』

『なにそれ。笑
俺は、広田さんのそーゆう部分もみんなちゃんと見てくれればいーのになって思うよ。
広田さん、見た目で損してるよね。笑』

『なにそれなんかヤだー!笑』

『笑』

『このあとどーする?
まだ帰りたくない・・・
あっそーだ。
カズくん歌うの得意ってゆってたじゃん。
聞かせてほしいなぁ。』

『任せて。笑』

・・・ん?まだ帰りたくない・・・?


そっからカラオケに行った。
一発目から大絶賛されて、
そっから2時間歌わされっぱなしで、
ひたすら彼女のリクエストに応えまくった。

確かに一般人よりウマい自負はあったけど、
ここまで絶賛されたのははじめてだった。

そして今は、
とあるサービスエリアの駐車場の片隅に車を停めている。


『わたしカズくんの歌声好きー!』

『うんもうわかったって。笑』

カラオケを出てからもずっと
話が途切れるたびずっと言われる。
だいぶ興奮してるようだ。笑

『わたしねぇ、目が悪いから、
声フェチなの。』

『へぇ。』

声フェチってよく聞くけど、
こんな明らかに声フェチな人に出会うのははじめてだ。
だって、俺は見た目はそんなよくない。

『カズくん有名んなってもわたしのこと忘れないでね?』

『は?なにで?』

『歌で。』

『いやそりゃ無理だよ!』

とんでもないこと言う。
自分よりウマい人は、この世どころか近くにもごまんといる。

『えー頑張ればいーのにぃー!』

『いや無理だよ。笑
・・・そういえばさ、
出てくる前、誰かにンライ送ってたでしょ?
・・・だいじょぶだった?』

『あぁ・・・うん。
実はわたし、付き合ってる人いるんだけど・・・』

『あぁ、うん。』
まぁそりゃそうだろう。

『タッちゃんてゆう、
車の整備屋やってるヘビー級の格闘家みたいな体型の人。』

『えっ。ヤバいじゃん。』

『で、その人からDVみたいの受けててね・・・』

『え。
ヘビー級のDVなんてヤバいじゃん。』

『あ、だいじょぶだよその人は妻子もいて
強くは出てこれないから。
痛いの慣れてるし。
・・・もっとヒドい人もいたし。
でも、その人とはもう潮時かなって。
ここのバイトにも口出してきたし。』

『それは・・・でも、うん。
そうだね。』
もっとヒドい人・・・。

『・・・話してもいい?』

『・・・ん?
うん。いーよ。』

『・・・わたしん家ね、
弟が病気で、ずっと病院を入退院してたの。
そのおかげで、
小さい頃からずっとお家でひとりぼっちだった。
お父さんは入院費稼ぐために出張がちだし、
お母さんは弟につきっきりで。
で、わたし、
16で家を出たの。』

『え?16って・・・』

『うん。
でも家にいてもひとりぼっちだったし。
ご飯とか掃除とか全部ひとりでやってたから。
お母さんもわたしのこと邪魔みたいだったし、
だったら外出た方がいいかなって。』

『そっか・・・』

『でね、
家ではお金は出してくれてたんだけど、
やっぱり弟のこともあるからさ。
なるべく頼らないようにしようって、
できることはなんでもやったの。
でもやっぱうまくいかなくてさ、
変なお金持ちのおじさんに飼われたり、
それから逃げるために
ヤクザみたいな、ヤクザに追われてる男に捕まったり、
それから逃げるために結婚したり、
でもその家に理解してもらえなくて放り出されたり、
そのあとが今のタッちゃん・・・』

『あぁそっか・・・ツラかったね・・・』

『うん・・・あゴメっ・・・
わだっ、わだぢっ・・・ずっどひどりぼっぢだっだ・・・ふえぇ・・・』

たまらず広田さんを優しく抱きしめた。

『・・・泣いていーよ。
俺は広田さんみたいな苦しい人生歩んでないけど、
広田さんが頑張って生きてるのは、知ってる。』

『うん・・・ゔえぇ・・・』

『見てればわかるよ。
そんな壮絶だったのはわかんなかったけど・・・
広田さんはなんにも間違ってないよ?』

『うん・・・うん・・・
ごべんね急にごんな・・・』

・・・涙でぐちゃぐちゃの顔を見たら
なんだかたまらなく愛おしくなって
俺まで泣けてきた。

『なんでガズぐんが泣いでんのよぉ・・・笑』

わかんない。
たまんなくなって、広田さんにキスをした。

・・・ん・・・んちゅ・・・

『・・・わだぢ・・・
カズくんの声好き・・・』

・・・かわいい・・・
キスしながら、胸に手を伸ばす・・・
モミッ・・・サワッ・・・

『ん・・・んっ!・・・んっ、んんんーーーーーーーーーーっっ!!!!!』
ビクンッビクンッビクンッ!

・・・かわいいっ・・・!
そのままその手を
広田さんの下にのばす・・・

『あっダメっ!!!』

『・・・え?』

『それ以上はつきあってくれなきゃヤだ・・・』

・・・本来なら
そんなのズルいって思うとこだけど・・・
心はとうに決まっていた。

『・・・好きだよ。広田さん・・・』

続く→

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