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黒田記念館 特別室
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黒田清輝の絵画を所蔵する黒田記念館では、切手で有名な「湖畔」、連作「智・感・情」、「舞妓」、「読書」という黒田の代表作が新年と春と秋の年3回、それぞれ2週間ずつ“特別室”で一般公開される。たった年3回、ですよ。つまり、たいがい「あ!そういえば!」と気づいた時には終わっている。それを「縁がなかった」と諦めるのは簡単だが、自分が本当にその絵を見たかったのならば「あ!そういえば!」はありえない。縁とは努力の先っちょにある、自分でつなげるものだ。と、ようやく特別室に行くことができたので、ちょっと得意げに書いてみる。
桜はまだだけど上野は桜まつりが始まっていて、今日は天気もよくて大賑わい。屋台もたくさん出ているし、青空の下で大日本プロレスのチャリティ試合も大盛り上がり。そんなわけで、駅から上野公園を抜けるまではド混雑で、こんな日に出かけてきたことを後悔した。
が、黒田記念館は別世界。
というか、別宇宙。
静まりかえって仄暗い“特別室”の美しさたるや。
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広い部屋にぽつんと座って、ゆっくりと絵画と向き合う。まさに“ご開帳”といった厳かな雰囲気がありつつも、画家の優しいまなざしを感じるおだやかな空間。こういう“豊かさ”はとても日本的だけど、今の日本ではとても貴重なものに思える。
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定期的に展示が入れ替わるメインルーム“黒田記念室”では、大作「花野」や関連するスケッチなども。絶筆になってしまった、別宅の窓から見える庭を描いた「梅林」は、若き日の「湖畔」や「読書」との対比をせずにはいられなかった。心に残るものでした。
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画家としてだけではなく、指導者としても、晩年には貴族院議員としても、近代日本洋画の振興と発展に尽くした黒田清輝は、自身の遺産の一部を日本の美術奨励に役立てるようにと遺言に残し、それで没後に竣工されたのが黒田記念館なのだそう。しかも、しかも、この特別室も含めてすべて無料で見ることができるのですよ。黒田清輝(呼び捨て)どんだけ立派な方なんだ。ノブレス・オブリージュってこういうことか。なんとなく、書物などで見る肖像写真は70歳超えくらいのイメージだったけど、亡くなったのは58歳の時だそう。とてもたくさんのことを成し遂げたとはいえ、それでもあまりに若すぎる。あの貫禄で、まさかの年下だったとは。無駄に長生きしてる自分が申し訳ない!
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あまりに居心地がよくて、というか、時が止まったようで、ささっと見て帰るつもりがすっかり長居しちゃいました。ぼんやり思索にふけるにも、とてもよい場所です。見かけても声はかけないでね(笑)。
しつこいようだけど、特別室もすべて無料ですよ。しかも、写真もオッケー。現在、黒田記念館は東京国立博物館の分館として運営されているんですが、それでもこちらは無料なんですよ。春の特別室公開は4月7日までですよ。
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