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METライブビューイング2023-24第一作 ジェイク・ヘギー《デッドマン・ウォーキング》

※この記事を無断流用するとちんこがもげます。

METライブビューイング2023-24
第一作 ジェイク・ヘギー《デッドマン・ウォーキング》

2000年にサンフランシスコ・オペラ制作で世界初演された、現代アメリカン・オペラのマスターピース。待望のMET初演。

主役のシスター・ヘレンをジョイス・ディドナート、初演時にヘレン役だったスーザン・グラハムが死刑囚の母親を歌う…という米国オペラ界を代表する2大スターのキャスティングも含めて、これからのMETの行くべき道をはっきり示す作品をライブ・ビューイングのシーズン・オープニングにも持ってきた。今シーズンは最初からいきなり《デッドマン・ウォーキング》、デイヴィス《マルコムX》、シーズンのキービジュアルにもなっているカターン《アマゾンのフロレンシア》の現代3連発。いよいよメトが大きく変わろうとしている事実が、世界に向けて配信されるライブビューイングにも反映されている。

そして、今回《デッドマン・ウォーキング》でのMCは、俺たちのリアノン・ギデンズ。ルネ・フレミングを筆頭に、METのスター歌手たちが務めてきた大役に大抜擢されたのですよー。METにとって非常に重要な、大きなチャレンジになりそうな新シーズン。そのライブ配信で、いちばん最初に画面に映るのがリアノン・ギデンズということだ。これがどれくらいすごいことなのかは説明すると長くなるので省略するけれど、とにかく歴史的快挙。

なので、さっそく東劇で鑑賞してきました。

そして、記念にさくっと描きました。

本編については、あまりに素晴らしかったのでまたあらためて何か書く予定。心の日記とかに。が、その前に、まずはリアノンだ。
2018年からMETのポッドキャスト《ARIA CODE》のナビゲーターも務めているし、すでにオペラ作曲家でもあるし。まぁ、いつかオードラ・マクドナルドみたいな感じで登場しても全然不思議ではないとは思っていた。が、なんというか、こんなこと言ってなんだけど、実際に観て思ったのは、なんかね、想像していた以上に待遇がちょっと違うのよ。まず最初に、リアノンがバルコニー席に登場するんですけど。冒頭の挨拶に続いてMETのピーター・ゲルブ総裁も出てくるのです。

で、通常、スタンス的にはリアノンは総裁に話を聞く役なんだけど、まず最初に総裁が「ようやくあなたをお迎えできて光栄です」って言うのよ。いわく、これまでポッドキャストでもずっとお世話になってきたし、オペラを広める役割をしてくれて…とか、とにかくリアノンがどれだけオペラのために貢献してきたかを絶賛して紹介するわけです。それから今回の《デッドマン…》を上演する意義や、これが初演というのは遅いことだけど遅くても上演することがとても重要なんだ…といったことをリアノンと共に話す。そして最後には、あなたの「Omar」についても話すべきだね…みたいなことと、「ピューリッツァー賞おめでとう」を言うのです。いやーん。もう。ブラビッシモ。

そして1幕の後は、主役のジョイス・ディドナートとライアン・マキニーにもインタビューするのだが。リアノンとジョイスの2ショットって、これ、なんていう俺得アメクラ案件なんですかとしか言いようがない。しかも、最後にジョイスがリアノンに「これでMET HD(ライブビューイングの正式名)の仲間入りね❤️」って言うんですよ。
そして、その後にスーザン・グレアムへのインタビューでもリアノンがめっちゃ褒められて照れる場面が。ふたりともポッドキャストにも登場しているので気心知れてる感じはするけど、今回、これでついにリアノンも正式にMETファミリーとして始動…みたいな雰囲気ありあり。ポッドキャストの紹介もしているしね。

そして最後に、俺たちのネゼっちとの2ショットも。幕間の短い時間だったけれど、いかに現代作品をとりあげることが大切かについての興味深い対話だった。ネゼはメト就任当初から《デッドマン》の上演も希望してきたし、ようやく現代作品に対して積極的な体制ができてきたとのこと。現代が抱える問題を描いた作品、現代社会に生きる人たちが共感できる作品を上演していくんだという決意表明ともとれる発言もあった。
2016年にリアノンが初来日した時、彼女はまだ「かつてオペラを学んでいた」ということがプロフィールとして知られているに過ぎなかったし、オペラについての発言もほとんどなかった。でも、ノンサッチからのデビュー・ソロ・アルバムでのアプローチにはどこかオペラのアリア集的なものを感じて、彼女にインタビューした時、そんな話題からオペラについての話になった。で、ルーツ音楽的なものとハイアートなオペラというのは別モノのように思われているけど、最近、フォークとオペラは急接近してきているのよ…と、ちょっとわくわくした感じで話してくれたのだった。
そのことは『アメクラ』でも書いたけれど、今日、ネゼとリアノンが、現代のオペラは現代社会を描き、現代を生きる人たちが共感できる作品を作ってゆかねばならない…みたいなことを(ウロ)話しているのを見ながら、なんか、あの時に話してくれた、そんな時代が本当に来たんだなぁと思ったら、オペラ本編とはまた別の意味での涙が出てしまった。
あの時にリアノンが言っていた世界が、本当にやってきたんだよ。と泣けてしまった。

ピーター・ゲルブとヤニック・ネゼ-セガンとジョイス・ディドナートとリアノン・ギデンズ。

この4人を並べて語った自分を褒めよう。拙著案件にもほどがある。
あの時、わざわざ松竹さんにゲルブ総裁の写真までお借りしてもらったのだった。まさか本当に、こんな日が来るなんて。その後、リアノンがオペラを書くことが発表された時にはびっくりしたけれど、完成した「OMAR」は全米のオペラハウスで上演され、ピューリッツァー賞まで受賞した。本当に素晴らしい作品で、今日の総裁やネゼの様子を見ていると、いずれMETでも上演されるに違いないと思えてきた。
自分の声がどこにも届かないこと、言葉をどれだけ重ねても伝わらないことがときどき悲しくなるけれど。リアノンの言っていたとおりになったし、そのことを世界の片隅に書き留めておけたのだからそれでいい。幸せですよ。

追伸。
あと、ポール・サイモンも並べてた。5人並びか。

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